観光地ハワイにも新型コロナの影。なぜ3月に入って感染者が確認されたのか
3/12(木) 6:30配信
アメリカの中でも、旅行者の往来が盛んで日本人にとっても親しみのある場所、ハワイ。3月に入り、2人の新型コロナウイルス感染者が確認された。
1月は1日平均4000人以上の日本人がハワイを訪れており、2月上旬までハワイ旅行をしていた日本人男性が帰国後、新型コロナウイルスへの感染が確認された。だが、現地ではなぜここまで感染者が出なかったのか。また今後は、新型コロナウイルスによってどのような影響を受けるのだろうか。ハワイ在住の筆者が、現地からお伝えする。
ハワイ州知事が非常事態宣言を発表
アメリカでは2月半ばまでは国内での感染者数が数十人程度にとどまっていたが、2月下旬から各地で感染者の数が増大。3月10日時点で、確認された感染者は647人、死者は25人にまで増加した。アメリカの中でも特に感染者の多い地域が、西海岸のカリフォルニア州やワシントン州だ。この影響から、2月29日にワシントン州、3月4日にはカリフォルニア州が相次いで非常事態宣言を発表する事態となった。
そしてアジア各国からの往来が盛んなハワイ州でも、まだ感染者は報告されていなかったものの、3月5日には、デイビッド・イゲ知事が非常事態を宣言。新型コロナウイルス発生に備える州資金の支出や、迅速かつ効率的な対応を許可した。
そして奇しくもハワイ州で非常事態宣言が出された翌日、3月6日、ハワイで初となる新型コロナウイルスの感染者が確認されたのだ。この感染者はハワイ在住者で、乗客の中に感染者が確認されたクルーズ船「グランド・プリンセス号」に2月11~21日まで乗船しており、その後メキシコからハワイまで飛行機で戻ったことがわかっている。
2日後の3月8日には、2人目の感染者も判明。この感染者はワシントン州に滞在していたところ体調不良となり、3月4日にホノルルに戻ってから入院し検査を受けた模様だ。この感染者は高齢で重症となっており、現在もオアフ島の病院に入院しているという。
当初ハワイに届いたキットは破損していた
3月に入ってから感染者が確認されたハワイだが、実は現地の人の間では「感染者はきっとハワイにもういるだろう」という見方が広がっていた。
2020年1月にハワイを訪れた人は86万2000人。このうちアメリカ本土から来た人がもっとも多く、およそ64%。次いで日本が15%、カナダが7%となっている。日本の割合よりは低いものの、韓国や中国からの旅行客も多く、特に春節を迎える時期はハワイの主要なショッピングセンターでもプロモーションが実施され、中国人観光客の姿もよく見かけた。それだけハワイではアジア各国からの旅行者が多く、中国や韓国、日本で拡大する新型コロナウイルスの影響は避けられないと見る考えがあったのだ。
ハワイで感染者がゼロだったある事情
ではなぜ、2月までハワイで感染者が一人も出なかったのか。その答えは、アメリカの新型コロナウイルスの検査体制に大いに関わる。まだ、ウイルス感染の有無を調べることができる検査キットが十分に準備されていない現状がある。
アメリカ疾病対策センター(CDC)は2月上旬、ハワイを含むアメリカ各地へ新型コロナウイルスの検査キットを送付したと報じられた。だがCDCは誤ってハワイではない別の州に検査キットを送っており、ようやくハワイに届いたときにはキットが破損して使い物にならなかった。
2月下旬の時点では、もしハワイで検査を行っても検体をジョージア州アトランタにあるCDC本部まで送り、結果が出るまでは1週間ほどかかるという状況。ハワイ州では、日本から検査キットを取り寄せることも検討していると報じられていたのだ。
世界各地で感染が拡大するうち、ようやくハワイでも新型コロナウィルス感染の検査ができるように準備が整ったのは、3月に入ってからだ。ハワイ州保健局は3月の会見で、手術着と手袋、マスクを身に着けた職員が検査のプロセスを説明した。
アメリカでは2月初旬から中国滞在歴のある訪問者の入国を禁止するなど、水際対策はいち早く実施してきたが、これだけ世界で感染者が膨れ上がっている現状を鑑みると、検査体制の整備の遅れは否めない。ちなみに、ようやくウイルス感染の検査ができるようになると、感染の疑いがあった6人の検査を実施されたが、全員陰性だと確認された。
コロナパニックが起きたきっかけ
ハワイでもトイレットペーパーが品薄
現在ハワイの検査体制では、1週間に最大で250件の検査が確認できるという。ようやく検査が可能となったことで、これからハワイでも感染者の数が増えていく可能性が高い。では、ハワイにはどんな影響が出てくるのだろうか。
ハワイの一般市民にとって、もっとも身近で実感できる変化が、ここ数週間の間に起きている。それがトイレットペーパーや飲料水などの不足だ。日本はもとより世界中で発生しているという“コロナパニック” がハワイでも起きたきっかけは、2月下旬にハワイ保健局が「感染拡大に備えて、14日分の食料や医薬品などを用意するように」と発表したことだった。
缶詰やパスタといった長期保存できる食品も品薄状態の店が多く、店内の一定の棚ががらんと空になった店が日に日に増えていっているようだ。ハワイでは多くの物資を島外から仕入れているため、一次的な混乱ではなく、この状態が長期化すると住民の生活にさらに大きな影響を及ぼしかねない。
またハワイ経済への影響も大きな懸念事項のひとつだ。ハワイは観光業で成り立っている地域であり、入国者の制限を行ったり、「ハワイ=新型コロナウィルスの感染がひどい場所」などというイメージが広がれば、ハワイ全体の経済にとてつもないダメージをもたらすことは必至だ。
現にハワイでも少しずつ大規模イベントへの自粛や中止の動きが広がっている。日本や世界各国から参加者が集まり、毎年3月に実施される「ホノルルフェスティバル」は観客動員数10万人を超えるハワイのビッグイベントのひとつだが、開催数日前に中止が発表された。また3月10日に予定されていた歌手マライア・キャリーのハワイコンサートも延期が発表されている。このようなイベント開催中止による観光業や飲食業の収入減は、ハワイのビジネス界へ大きな影を落としているだろう。
ちなみに、2002年~2003年に発生したSARSによるハワイ経済への影響は、現在の価値で3.5~4億ドルと言われるが、もし新型コロナウイルスの感染が今以上に拡大すれば、SARS以上の打撃を与えかねないと試算するエコノミストもいる。
3月1週目までのハワイ訪問者数は前年比32%減となり、このまま感染が拡大すれば2020年第3四半期にはハワイで6000人も仕事を失う人が出るとも現地では報じられている。
インフルエンザウイルスは気温と湿度が高いと生存しにくいと言われているが、現在拡大している新型コロナウイルスはシンガポールやマレーシアなどの高温多湿な地域でも感染が広がっている。
つまり1年を通して温暖なハワイでも、新型コロナウイルスが広がる可能性が低いとは決して言えないのだ。とはいえ、まだハワイの感染者はまだ2人だ。これまでは検査体制の遅れなどアメリカのずさんな対策が見受けられた面もあるが、ハワイ州政府が講じる今後の対策に期待したい。
Forbes JAPAN 編集部
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200312-00032917-forbes-int&p=3
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