好きな音楽を好きな場所で、良い音で。HEOS対応ネットワークスピーカー「DENON HOMEシリーズ」を聴く

海上 忍

 

 

 

https://www.phileweb.com/review/article/202002/29/3771.html

 

 

 

自由度の高いネットワーク機能とデノンサウンドを両立した“DENON HOMEシリーズ”

音楽の聴きかたは人それぞれだが、実際のところシチュエーション次第の部分が大きい。普段は自慢のコンポで聴くとして、ときにはベッドルームで就寝前に、ときにはキッチンで料理を作りながら聴きたいときもあるはず。ディスクにファイル、ラジオにストリーミングと、再生する音源もさまざまだ。好きな音楽を好きな場所で聴けること、それも近年のオーディオに求められる重要な機能だろう。

デノンから発売された「DENON HOME 250」と「DENON HOME 150」は、そんな使いかたにしっかり応えるネットワークスピーカー。250はステレオ、150はモノラルとスピーカーとしてのスペックは異なるが、共通して「HEOSテクノロジー」というコア技術を採用、柔軟な使いかたを可能にしている。


HEOS搭載のネットワークスピーカー“DENON HOMEシリーズ”。手前が「DENON HOME 150」、奥が「DENON HOME 250」


HEOSテクノロジーは、ディーアンドエムグループが擁する「オーディオに特化したプロセッサとOSの体系」であり、AVレシーバーやプリメインアンプ、ネットワークプレーヤーといったコンポーネント製品からワイヤレススピーカーまで多種多様な製品に採用されている。よく「ネットワークモジュール」という言葉で説明されるこの機能のポテンシャルを、この機に改めて解説しておこう。


DENON HOMEシリーズのコアとなる要素が「HEOSテクノロジー」だ


HEOSにはLinuxをベースとしたオーディオ特化のOSが組み込まれており、開発自由度の高さという強みを持つ。同社製品がAirPlay 2や、ハイレゾストリーミングのAmazon Music HDにいち早く対応したことは記憶に新しいが、それもHEOSあってこそ。自社開発だから新しいサービス/ソフトウェアにすばやく対応できた、というわけだ。多くのデジタル製品で実績豊富なLinuxがベースだから動作が安定している、というメリットもある。

もうひとつ、HEOSには「マルチルーム再生」と「音源の共有」という強力なアドバンテージがある。HEOS搭載機が同じネットワーク(LAN)に接続していれば、スマートフォンアプリを利用して音の出所を指定したり、音源を自由に選択したりできるのだ。具体的な使用事例は後述する

 

 

スピーカー単体としても作り込まれた仕上がり。ハイレゾ音源再生もサポート

単体のスピーカーとしても仕上がりは上々だ。ステレオモデルの「DENON HOME 250」は25mmドームトゥイーターと102mmコーンウーファーの2ウェイ構成を左右に配置し、背面に133mmパッシブラジエーターを置くという構成。「DENON HOME 150」は25mmドームトゥイーターと89mmコーンウーファーの2ウェイ構成。コンパクトなモノラルモデルだが、ネットワーク経由で2台組み合わせればステレオシステムとしても利用できる。


「DENON HOME 250」(予想実売価格48,000円前後)


「DENON HOME 150」(予想実売価格32,000円前後)


天面にはタッチコントロールを搭載し、再生/停止と音量調整、登録したお気に入りソースの呼び出しが可能。LEDは手を近づけたときにしか点灯しないので、暗い中でも眩しさが目につくこともない。


天板のタッチセンサーは手を近づけたときのみ発光する


入出力端子やネットワーク機能については、DENON HOME 250とDENON HOME 150で大きな差はなく、どちらもBluetoothとWi-Fi(2.4GHz/5GHz)および有線LANに対応、入力用にAUXとUSB-Aを各1基備える。HEOSとの組み合わせにより、Amazon Music HDやSpotifyなどの音楽ストリーミングサービス、AirPlay 2、Amazon Alexaによる音声コントロールもサポートするなど、ソフトウェア的な機能も充実している。

 
Wi-Fi、Bluetooth、LAN、AUXなど入出力やネットワーク機能は同等だ


ハイレゾ再生もサポート。USBメモリーやNASに保存された各種ファイルを再生でき、PCMは最大192kHz/24bit、DSDは5.6MHzまで対応する。DSDとWAV、FLAC、Apple Losslessについてはギャップレス再生をサポート、ライブ音源やクラシックの組曲を聴くときにも曲間のつなぎ目を意識せずに済む。

「DENON HOMEシリーズ」とHEOSでどれだけ音楽再生は快適になるかテスト!

DENON HOME 250/150の試聴は、デノンのAVレシーバー「AVR-X1600H」とプリメインアンプ「PMA-150H」を組み合わせつつ実施した。いずれもHEOSを搭載しており、HEOSならではの使いかたを試してみたいという腹づもりからのチョイスだ。

 
HEOS搭載のAVアンプ「AVR-X1600H」や、プリアンプ「PMA-150H」とも接続し、HEOSの操作性も含めてチェック


DENON HOMEの電源を投入し、専用アプリ「HEOS」(以下、HEOSアプリ)を起動すると、同じネットワークにつながっているHEOSデバイスの検索がはじまる。見つかった後は、画面に従ってWi-Fiパスワードやデバイス名を設定すれば、準備完了だ。

「ホーム」画面には接続済みデバイスの名前と再生中の曲情報が表示される。例えば下に掲載したアプリのスクリーンショットでは「DENON HOME 250」と「DENON HOME 150(2台でステレオ構成中)」、「AVR-X1600H」の名前が表示されている。明るく表示されているDENON HOME 250が現在操作中のデバイスだ。


スマートフォン版HEOSアプリの「ルーム」画面


「ミュージック」画面には、選択したHEOSデバイスで再生できるソースが並ぶ


操作したいデバイスをタッチで選んだ後、「ミュージック」タブからそのデバイスで再生したい音源を選択できる。音楽ストリーミングサービスは、Amazon Music HDにAWA、Spotify、SOUND CLOUDにインターネットラジオのTUNE-INと豊富に対応。曲検索や再生もHEOSアプリからすべて操作できるところがいい。Amazon Music HDを例にすると、Amazonのアカウント情報を登録しておけば、いちいちAmazon Musicアプリに切り替える必要がない

 

 

 

 

 

 

 

他機器連携やマルチルーム再生が便利。「聴きたい曲リクエスト合戦」までできる

DLNAをサポートしているから、同じネットワーク内のNASや音楽プレーヤー内の音源も再生できるし、また他のHEOSデバイスに接続された音源も再生可能だ。


こちらはタブレット版HEOSアプリのルーム画面。ルーム画面では、どのHEOS機器同士をリンクさせるか簡単に設定できる


AVアンプとリンクさせればテレビの音声もDENON HOMEから聴ける。キッチンカウンターのような場所に置いても活躍できそうだ


例えば、AVR-X1600Hに挿入しているUSBメモリの音源をDENON HOME 250から聴ける。いちいちAVR-X1600Hのところまで歩いてUSBメモリを抜き、DENON HOME 250に挿し替える必要はないのだ。AUXの音も共有が可能で、リビングのDENON HOME 250にAUX接続したプレーヤーの音楽を、個室にあるDENON HOME 150で再生する、というような離れ業までやってのける。

HEOSアプリをインストールしたデバイスは複数同時に接続できるので「聴きたい曲リクエスト合戦」もできる。カラオケで歌いたい曲を各人がリモコンで入れていくように、再生したい曲を各人のデバイスからキュー(再生待ちリスト)に登録していけば、その順に再生してくれるのだ(なお、Amazon Musicの曲は他の音源と同じキューに入れることはできない)。これは、家族や気心知れた仲間で集まるとき重宝するに違いない。


複数人でHEOSアプリを使い、各々が再生リストに曲を追加していける


HEOSでは、同じ音源を複数のデバイスで再生するマルチルーム再生もサポートしており、その組み合わせは「ルーム」画面からドラッグ&ドロップでかんたんに指示できる。DENON HOME 150同士をリンクさせれば自動的にステレオ構成になるし、テレビと繋いだAVアンプとリンクさせればテレビの音声も共有できる。そのほか、AirPlay 2でマルチルーム再生も利用できるので、HEOS対応製品以外との組み合わせも考えられるだろう。


利便性だけじゃない。見通しよく音像がはっきりしたサウンドも好印象

肝心の音質は、DENON HOME 250/150ともに見通しよく音像がはっきりしたところが印象的だ。Amazon Music HD、USBメモリやAUX接続したDAPからさまざまなジャンルの楽曲を聴いていったが、DENON HOME 250は余裕ある低音で快活指向、DENON HOME 150は重心低めで明瞭指向、というテイストの違いはあるものの、歪みが少なくすっきりしたサウンドは聴き疲れしない。


DENON HOMEシリーズ単体の音質を確認する海上氏


剛性が高いボディだからこその確とした音で、こういったところにデノンのこだわりが生きている。2台組み合わせてステレオ構成で聴いたDENON HOME 150の音も、艶があり伸びやかなデノンの音だ。
 



しばらく聴いてみて/触れてみて特に気に入ったのは、HEOS対応機ならではの「自由な拡張性」。例えばDENON HOME 150は1台ではモノラルだが、もう1台追加してステレオで高音質なAmazon Music HDを楽しむもよし、寝室やリビングなど離して置きそれぞれで楽しむもよし。AVレシーバーと組み合わせれば、映像コンテンツの音声も、迫力のサウンドはそのままに離れた場所から楽しめる。まず1台購入して気に入ったらもう1台追加、と必要に応じて投資していけるところもいい。まったく、よく考えられたスピーカーだ。

(海上 忍)