ヒヒにさらわれ、

 

子どもにされた子ライオンの悲劇

 

ロージー・マコール

 

 

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/02/post-92321_1.php

 

 

<そのヒヒはオスだったが、メスが子どもをかわいがるようにライオンの子どもの世話をしていた>

 

 

 

オスのヒヒが幼いライオンの子をさらい、まるで子どものように毛づくろいをし、面倒を見る姿が撮影された。2月1日、南アフリカのクルーガー国立公園でのことだ。

このヒヒを見つけたのは、サファリ会社のカート・シュルツ。

2月1日の朝、この場所にやってきたとき、落ち着きのないヒヒの群れに出くわしたという。

「非常に興奮したヒヒの群れだ」と、シュルツは言う。

群れの中に、ライオンの子どもをさらったヒヒがいた。そのヒヒはオスで、道を渡って木に登るところだった。

群れが落ち着きを取り戻すと、ヒヒは子ライオンの「毛づくろいをし、世話をした」という。「子どもだと信じているように見えた」

ヒヒがライオンやヒョウの子どもを殺すのは珍しくないが、さらって世話をするのは珍しいという。

「サファリガイドを20年やってきて、ヒヒがヒョウの子どもを容赦なく殺す場面は何度となく見た。ヒヒがライオンの子どもを殺す話も聞いたことがある。だが、ライオンの子どもの世話をするのは初めてだ」

 

子ライオンは疲れ切っていた

子ライオンは目に見えるケガはしていなかったが、疲れ切っていたという。緊張しきっていたのかもしれない。生き延びるのは難しいとシュルツは言う。

「ヒヒの群れは大きな群れだったので、たとえ母親が子どもを取り戻しにきても、1頭では無理だろう。自然は残酷なもので、幼い肉食動物の子が生き残るのは容易ではない」

この一件は、ディズニーの映画『ライオン・キング』を思い起こさせる。年老いたヒヒのラフィキが、幼いころのシンバ(主人公のライオン)を抱き上げる場面は感動的だ。

 

ただし現実は、シュルツが言うように厳しいようだ。クルーガー国立公園からの最新の情報によると、子ライオンは生き延びられなかったという。

(翻訳:ガリレオ)