3つ星シェフ荒木水都弘さん、香港に拠点移す 現地を理解し寄り添う哲学ですしを握る

1/1(水) 23:11配信

みんなの経済新聞ネットワーク

 

 東京とロンドンでミシュラン3つ星を獲得した唯一のすし職人、荒木水都弘さんがロンドから香港に拠点を移し、昨年12月19日、House 1881 に「The Araki」(G/F, Stable Block, House 1881, 2A Canton Road, Tsim Sha Tsui, Hong Kong TEL3988 0000)を開業した。すでに香港人の客がほとんどで、1カ月先の予約も取れない店となっている。(香港経済新聞)





香港に拠点移した荒木水都弘さん

 香港を拠点にする話はすでに1年前には決まっていたといい、この1年はパリ、コートダジュール、ニューヨークなどジャンルを問わず世界一流といわれる店で食事をしたという。「お客さまは365日レストランで外食する人もいるかもしれないが、シェフは店の中にいるものだから、自分の目と舌で勉強しなければいけない」と笑顔を見せる荒木さん。外から見る経験を通じ改めて感じた「自分はおいしいすしに集中すれば良い」という答えを胸に、また板場に立つ。

 繁華街にありながらも、隔絶された静けさのあるヘリテージにある店内は、徹底的にシンプルに仕上げた。壁は暗い配色で森田子龍の書があるのみ。音楽も全くない。12席のカウンターは200年前のヒノキを使い、舞台のように見立て、食べ物に全ての注意を引き付けるようにしている。「お客さまに全部見えているから何も置かない。ラップも使わないし、ステンレスのものも見せたら美しくない」と緊張感をもちながら美しさにこだわる。

 荒木さんのおまかせは、赤身、中トロ、大トロ、ヅケ、炙(あぶ)りと7貫はマグロに集中する。「マグロが一番喜ばせ、価値あるものだから」と常にマグロのパフォーマンスに一番の力を注ぐのが荒木さんのスタイルだ。

 200年以上前、文政の時代に誕生したと言われる江戸前すし。「日本人で生まれたことはありがたいこと。四季があり、わだつみがあり、貝塚があったり、マグロの骨が出てきたり、蓄積された情報処理能力がDNAが埋め込まれている。水害、冷害がある中で、農業のために治水の技術があり、半年先の収獲のために計画をして苗を育てる。繊細さとタフさを兼ね備えた恵まれた場所だ」と世界をみて日本を改めて感じたようだ。しかし「香港の海は汚いといわれるが日本はどうだろう?」と話す荒木さん。ロンドンで必然的に日本の魚が使えなかった状況もあり、「地元のものをどう使えば喜んでもらえるか」と考え続け、地のものを積極的に使った。「違う国に行くのであれば、まず相手のことを理解し寄り添うことが一番大事。地元のものが江戸前の技術で変化したときにお客さまは、もっともっと喜んでくれるものだよね」とその意義を語る。「白身のハタ、エビ、アワビ、シャコ、イカ、カスゴ、キス、ハマグリ…香港の海鮮市場にはどれも江戸前すしとして使える食材ばかり」と香港の恵まれた環境を評価し、同時にこの環境下で勝負することのレベルの高さを感じているようだ。

 荒木さんは2000年、世田谷に「あら輝」をオープンした。その際、銀座で弟子入りを断られた「きよ田」の新津武昭さんが最終的に毎週月曜に荒木を指導してくれた基礎がある。その10年後、銀座に移転し、ミシュランの3つ星を獲得した。2014年、荒木さんは新たな挑戦を開始することを決定し、ロンドンに戻って最初からやり直すことになる。

 「48歳でロンドンに挑戦するなんてちょっと遅いよね。それで50代でまた香港で挑戦」と笑いながらもステージを移すことで世界を巻き込む存在を目指し、自分の位置を確認してきたという荒木さん。「巡り合わせという運命はあると思う。でも自分で決めなきゃいけない時もある」と話す。「すし」のきっかけは最初の職場、箱根小涌園で第4希望であった「和食」に配属されたこと。そこで故郷の先輩に引っ張ってもらい、「すし」を担当できたこと、その後は自分で決めて「すし」の、さらなる上の門をたたいたこと。生い立ちを振り返りながらも、常に先のビジョンを考え「まだまだやらなきゃいけないことはあるね」とも。「世界を見れば、すしに従事するのは日本人よりも外国人の方が多くなっている」と話し、その現状を前に、「これからやりたいことは、すし職人には可能性があり、自分たちもこうなりたいという姿を見せなきゃいけない」と走り続ける覚悟を語る。

 「とにかく今が幸せ。日々感謝」と語る荒木さん。「すしを選んだから、大きな規模でなくても、大人数のスタッフでなくても、やりたいことに集中して毎日が送れる。毎日、とにかく目の前の人が満足するすしを握るだけ。こんな幸せなことはない」と謙虚さをのぞかせる。

 おまかせは4,000香港ドル~。

 

営業時間は19時~最終入店で、1日1セッションのみ。

 

現在は日曜休み。

 

2月以降は月曜休み。

 

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200101-00000016-minkei-cn

みんなの経済新聞ネットワーク

 

 

 

 

 

 

 

 

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ロンドンの三つ星すし店、星全て失う 店側「残念」

 

 

 

https://www.cnn.co.jp/travel/35143897.html

 

 

(CNN) このほど発表されたミシュランガイドの格付けで、英ロンドンのメイフェア地区に店を構えるすし店「The Araki」が三つ星をすべて失った。店側はCNNの取材に、「残念だ」と話している。

The Arakiは荒木水都弘さんが2014年に開店した。ロンドン最小規模のレストランで、座席はカウンター10席と常連客向けの個室にある最大6席のみ。おまかせコースの値段は1人310ポンド(約4万2500円)となっている。

荒木さんは以前、東京に三つ星店を所有しており、ロンドン進出後は1年以内に初の星を獲得した。19年3月には新たな店を開くため香港に拠点を移した。

The Arakiを引き継いだのは弟子のマーティ・ラウさん。15年から荒木さんと仕事を共にし、GQ誌の今年の記事では「恐ろしく有能」との評価も得ている。

ラウさんはCNNの取材に、2020年版ガイドに掲載されなかったのは「残念だ」と述べた上で、「公正な判断と受け止めており、師匠の荒木水都弘さんが店を離れた後の新たなスタートになる」と語った。

さらに「2020年版ガイドの調査期間の半分は荒木さんがここにいたので、ミシュランはどう格付けすれば良いか難しい判断を迫られたと思う」とも語った。

ミシュランに説明は求めることはしていないとラウさん。「これは彼らのガイドだ。彼らの方針を全面的に尊重する。今回の評価をしっかり受け止め、自分の力の証明していく前向きな姿勢でいる」という。

そのうえで、常連客の多くは今も来店していると説明。「ミシュランは重要だが、私たちはいつも、The Arakiを訪れるお客様を何よりも大切にする。最終的には、我々を評価し我々の運命を決めるのはそうしたお客様たちだ」と話している。

「皆さんに理解してほしいのは、師匠の荒木さんが開店以降彼についてきたチームにこのすし屋を任せてくれたこと。彼はこの状況を、我々が彼の影の中ではなく、自分たちの光で称賛を勝ち取るすばらしい機会だと毅然とした姿勢を示した」(ラウさん)

ラウさんは開店後まもなく店に入った。「全ては彼が教えてくれたやり方でやっている」「彼がロンドンに来たとき、新たな食材に慣れる必要があった。彼には常に進化があり、我々はその工程を共にした。その精神は全て我々が引き継いでいる。常連のお客様からの温かい言葉に感謝し、最善を尽くしていく」との決意を語った。

2020年のガイドから消えるのはThe Arakiだけではない。ヒルトン・パーク・レーンにあるGalvin at Windowsやメイフェア地区のインド料理店Benaresも星を失った。同ガイドに掲載される英国の三つ星レストランは5店となる。