ESOTERICの二大ネットワークプレーヤー「N‐01/N‐05」。2人の評論家が徹底検証、その魅力を語る

 
 
 
角田郁雄/岩井 喬
 
 
 
 
 
 
国内の大手オーディオメーカーの中でも、積極的にハイエンドの分野でネットワークプレーヤーを開発し続けるエソテリック。ネットワークプレーヤーとしては「N-01」と「N-05」が同社の二大モデルとして存在感を強く放っている。そんな両機が新たにRoonReadyにも対応を果たした。今回はさらなる機能性を手に入れた両機を角田郁雄氏、岩井喬氏の二人がそれぞれの目線で検証。同じシステムながら部屋やネットワーク系統が異なる環境で、改めて実力とその魅力をレポートする。


「N-01」(写真右)と「N-05」(写真左)



●角田郁雄が聴く、エソテリック「N-01/N-05」の魅力

異なる音のテイストを持った「N-01」と「N-05」を比較検証

エソテリックは、弩級のSACDプレーヤーを開発する一方、ハイレゾ再生ではUSB-DACより、むしろネットワークプレーヤーに熱心に思える。おそらくグローバルの視点で見ると、ストリーミング再生に将来性を感じているからに違いない。現在では、上位モデルのN-01とその弟分となるN-05を発売している。

興味深いのは、N-05と、その上位モデルとして登場したN-01とでは、音のテイストが大きく異なることだ。これは単純な価格の差ではなく、異なる趣向を持った音の違いと表現するのが正しい。

予算的なことを考えないとした場合、聴く人によっては、むしろN-05の音の方が好きだという方もおられるだろう。また両機共に最新のファームウェアではMQAやRoon Readyなど、幅広い再生に対応を果たしている。そう言った点でも、両者の音の比較は注目すべきことだ。

今回は、オーディオNASによるUSB再生、ネットワーク再生、Roon Readyを用いたネットワーク再生の3パターンでそのサウンドを比較した。

共通の独自技術を駆使した、趣の異なる回路構成

まず、上位モデルのN-01の技術の概要を説明しよう。大きな特徴は、旭化成のDACチップ「AK4497」を左右に各4個使用し、FPGAと組み合わせて特許取得の35bit D/Aプロセッシングを構成していることだ。まさに弩級の構成である。


ネットワークプレーヤー「N-01」¥1,400,000(税抜)


その電圧出力をMUSES 03オペアンプが増幅し、さらに独自のスルーレート、2,000Vの電流強化型バッファー(ESOTERIC-HCLD)でアナログ出力する仕組みである。このバッファーにはバッテリーの特性とも言えるスーパーキャパシターが使われており、また電源部には左右独立の強力なアナログ電源が搭載され、ネットワーク回路にもスーパーキャパシターを使用している。

次にN-05である。回路はN-01よりもシンプルながら、旭化成のDACチップAK4490を左右に各2個使用し、FPGAと共に34bit D/Aプロセッシングを構成。このDACチップには、前述のスーパーキャパシターと独自のVCXOを採用したクロック回路を使用する。

アナログ出力では、電流強化型バッファー「ESOTERIC-HCLD TYPE 2」を搭載。電源部ではトランスは一式だが、十分な容量のコンデンサーを搭載している。


ネットワークプレーヤー「N-05」¥570,000(税抜

 
 
 
 
 
再生方式で現れた違い。それぞれの良さを実感

まず試聴は、オーディオNASを使ったUSB再生から始めた。N-01は濃厚な音であるが、実にワイドレンジかつフラットレスポンスな音が特徴で、空間表現力を備え、超高解像度である。


N-01のDAC部。フラッグシップ「K1」用に開発したモジュールを搭載し、AK4497にMUSES03を組み合わせるなど、贅を尽くした仕様となっている


対してN-05は、中低域が実に濃厚で、音にゆったりとした雄大さが感じられ、両機の音の違いを実感させる。ちなみにこの濃厚さは、DACの安定化電源にスーパーキャパシターを使っているからだと推察される。ただし決してヤワな音というわけではなく、音には透明度があり、音像の骨格がしっかりとしている。

次に、オーディオNASを使用したネットワーク再生を行った。この再生では、N-01とN-05両機ともにほぼ同じ変化を感じた。一気に音の抜け、解像度が向上し、奏者と歌い手の実在感が鮮明となったのだ。

両機ともUSB入力で対応するDSD 11.2MHzの音も魅力ではあるが、このネットワーク再生ではそれ以上のベールを一枚剥いだような鮮度の高さが感じられた。

最後にRoon Readyを用いたネットワーク再生だ。N-01ではとにかく音像が大きくなり、明らかに音の厚み、スケール感が増した印象を受ける。解像度にも満足でき、音像の輪郭も明瞭になって、まるで「スーパーアナログ」とでもいうような色濃い音になる。

N-05もより一層、中低域の厚みが増し、管楽器や弦楽器、ヴォーカルでは粘りのあるクリーミーな音質へ変化した。ボリューム感たっぷりの音であるが、立ち上がりの良さは維持される。


RoonReady再生時のN-01の画面。再生スペックは機種毎のスペックに依存することになるが、そのサウンドは両者ともに興味深いものとなった


ネットワークプレーヤーの再生方式でこのような音の違いがあるとは実に興味深いし、再生の楽しみも増す。アナログ再生も好きな身としては、スーパーアナログを感じさせたRoon Readyでの再生には、個人的にもチャレンジしてみたいと思うところである。

(角田郁雄)
 
 
 
 
 
岩井 喬が聴く、エソテリック「N-01/N-05」の魅力

多様化する再生スタイルに対応するハイエンドプレーヤー

国内の大手オーディオブランドの中でも高価格帯ネットワークプレーヤー開発を続けているエソテリックでは、フラッグシップ機のN-01に加え、今年5月のファームウェアアップデートにより、発売開始から3年が経過したN-05も待望のRoon Ready対応を果たした。

このほかTIDAL、Qobuzなどのストリーミングサービスや、MQAといった新たなオーディオフォーマットへの対応も果たし、ネットワーク環境を介して現在主流であるさまざまな音楽データを一元化できることも同社製ネットワークプレーヤーの持つメリットのひとつだ。

また、他の同社製コンポーネントと同じく、質実剛健なキャビネット構造に加え、デュアルモノラル構成のDAC段や、電流伝送強化型出力バッファー「ESOTERIC-HCLD」によるハイスピードでセパレーションに優れたサウンド再現と、大容量のトロイダルコアトランスや平滑コンデンサー、EDLCスーパーキャパシターアレイを備える電源部を設け、理想的な電源供給能力を持たせたことで低域からの安定感溢れる表現を実現している。

今回はDACを内蔵したN-01及びN-05について、一般的なUPnPでのネットワーク再生に加え、オーディオ用NASとのUSB-DAC接続機能を使った再生、最新ファームウェアによるRoon Ready環境での再生を比較してみた。

 
N-01(写真左)とN-05(写真右)では入出力端子に若干違いがある。N-05ではクロック出力に加えて、デジタル出力を装備。使い勝手の幅の広さそのものはN-05のほうが広く、フラッグシップであるN-01は徹底して単体機としてのスペックを高めている



「N-01」試聴。解像感やS/NはUSB入力、ツヤ感ではRoonReadyが優勢

N-01はDAC部にAKM製AK4497を8基用いており、USB接続時は768kHz/32bitのPCMと22.4MHzのDSDまで対応。ネットワーク再生時は192kHz/24bitのPCMと5.6MHzのDSDでのネイティブ再生が可能だ。

UPnPでは分離良く音像のフォーカスの高い伸びやかなサウンドが展開。オーケストラの響きは押し出しよくリッチな傾向で、旋律の粒立ちは非常に細かく、余韻の階調性も良い。品格の良さ、緻密さも感じられが、ヴォーカルやウッドベースなど、艶やかな輪郭とボディの厚みは多少の甘い部分が感じられた
 
 
 
 
 
 
 
一方でUSB-DAC接続ではそうした甘さにつながる部分は排除され、制動性の良いキレ鮮やかなサウンドに変化。リズム隊やピアノのアタックは素早く、オーケストラの旋律も澄み切っている。音離れの良いリアルなヴォーカルの息遣いや、引き締まったリズム隊のシャープな描写も美しい。

そしてRoon Ready環境に切り換えると、この2つのパターンの中間といえるようなバランスの良い滑らかで密度とキレ感を両立したサウンドとなる。弦楽器やヴォーカルは潤い感が増し、オーケストラの低域は落ち着き良く伸びやかだ。解像感やS/NではUSB-DAC接続が理想だが、艶感やディテール再現のバランスではRoon Readyでの聴かせ方にも魅力を感じた。

「N-05」では、全体的に躍動感のある大人びたサウンドが魅力

続いてN-05であるが、AKM製AK4490を4基搭載したDAC部を持ち、USB接続時は384kHz/32bitのPCMと11.2MHzのDSDに対応。ネットワーク再生時の対応フォーマットはN-01と変わらない。


N-05のDAC基板。このDAC部への電源供給にもスーパーキャパシターを採用している


UPnPは流石にN-01との物量の差が出るものの、ハリ良くスムーズなオーケストラや、滑らかで肉づきよく生々しいヴォーカルなど、リアル志向でありながら耳当たり良いマイルドタッチなサウンドを聴かせてくれる。

USB-DAC接続はN-01と同じく、フォーカスや制動性の良いサウンド傾向だ。S/Nの良さからくる優れた空間表現力と潤い良く自然な質感描写によって、爽快かつスムーズな表現を楽しめる。N-01と比べても、肩の力が程よく抜けた開放的な音色といえよう。

Roon Readyでも同様の傾向を感じており、ある側面ではN-01より音楽表現が豊かな印象を得た。シンバルやピアノの響きやオーケストラのローエンドの伸びも落ち着きがあり、ヴォーカルのウェットな口元もしなやかで瑞々しい。リズム隊のタイトさも弾力良くまとめ、全体的に躍動感に富んだ大人びたサウンドである。

N-01は絶対的フラッグシップとしての堂々とした佇まい、凛とした品性の高さも伴った音質傾向であり、回路構成の規模が異なるN-05とは基本的に次元が異なる。しかし、これは好みの部分もあるだろうが、N-05は硬さのない朗らかなサウンドが持ち味であり、特にRoon Ready環境ではそれが利点として働いているように思う。

N-01も含め、よりハイスペックな音源を突き詰めて楽しむには個人的にはUSB-DACとの接続がお薦めだが、ネットワーク再生では快適な操作性とRAATプロトコルによる音質的優位性において、UPnPよりRoon Ready環境は数段進化を感じる結果であった。

本格的にRoon Ready環境が整ったことで、USB-DAC接続との音質差も縮まり、いよいよネットワークプレーヤーとしての本領が発揮される時代になったと感じた次第だ。


N-01、N-05ともにリアパネルにUSBメモリやUSBハードディスクを接続可能。単体でのミュージックサーバー的な使い方も可能としている


(岩井 喬