ワイヤレススピーカー。Bang & Olufsenの名作「Beoplay A9」最新世代レビュー

 
 
高橋 敦
 
 
 
 
 
オーディオを超えたデザインとオーディオならではのクオリティを兼ね備えるアイテムを世に送り出してきた稀有なブランド、「Bang & Olufsen」。彼らがより幅広い層に向けて展開するライフスタイル製品から、その先進性を特に強く体現するニューアイテムが登場する。進化した最新世代のワイヤレススピーカー「Beoplay A9」だ。

「Beoplay A9」は、このブランドの在り方をそのまま形にしたかのような名作と言える。彼らは「家具の顔をしたオーディオ製品」と表現しているが、ファブリックと木材という組み合わせゆえか、不思議な円盤スタイルでありながらインテリアに自然に溶け込む、絶妙の存在感だ。


不思議な円盤スタイルだが、インテリアとの馴染みも良い


三本足のスタンドにも良質な木材を贅沢に使っており、本体カラーに合わせて材質を使い分けているのもポイント。また本体を覆うファブリックカバーは、別売で高級テキスタイルメーカーKvadrat社とのコラボレーションによるものも用意される。

大きさは「折りたたみ傘よりひと回り小さな直径」とでも言えば伝わりやすいだろうか。ワイヤレススピーカーとしては大柄。しかし優れたデザイン、落ち着いた色合いのおかげか、実際に部屋に置くとさほどの圧迫感は感じられない。前述のようにインテリアに溶け込んでくれるのだ。


良質な木材を用いたスタンド部、品質高く家具のような風合い


本体トップ部にさりげなくロゴを刻印


Beoplay A9は、これまでに幾度かのアップデートが施されている。ブランドを代表するアイテムとして、象徴的なデザインはキープしたまま、その中身は常に最新の性能を備えるものとされてきたのだ。例えば初代モデルと今回の新世代モデルと比べて、特に大きなアップデート項目は2つ。それぞれ紹介していこう。

まず1つに、背面側に2基のフルレンジドライバーが追加された。壁に向けて放射した音の反射によって、より広いサウンドステージを生み出すためとのことだ。また、室内環境に合わせての自動音響調整機能にも活用されていると思われる。


最新世代機では、背面にフルレンジドライバー2基を追加


背面上部にはセンサー式の操作系統を装備、音量上下などが行える


もう1つはネットワーク対応の強化。今回のアップデートではその中核にGoogle Homeのシステムを採用している。加えて、Chromecast built-inやAirPlay 2、もちろんBluetoothにも対応。しかし基本的なセットアップをGoogle Home経由で行う仕組みのため、いずれにせよまずは本機をGoogle Homeのシステムに登録することからのスタートとなる。なかなか思い切った仕様だ。


まずはスマートフォンにGoogle Homeアプリをインストール


あとはGoogleアカウントでログインし、画面の指示に従っていけばOK


あらかじめ自宅のネットワークに接続しておけばA9も自動で認識される

 


この「場所」の設定は単に設置場所をわかりやすくするための表示名の設定なのでご自由に


続けてGoogleのボイスアシスタントの設定を済ませば……


Google HomeとA9の基本設定は完了!


とはいえ、登録設定はさして難しくはない。Gmailなどを利用していてGoogleのアカウントをすでに取得していれば、あとはGoogle Homeのアプリをインストールして画面の指示に従っていくだけ。順調に進めば5分ほどで完了する。もしかしたら、これまでGoogle Homeを使っていなかった方にとっては、このスピーカーの導入がGoogle Home全般に興味を持つきっかけになるかもしれない。そのスマートな世界にオーディオファンをいざなうこともB&Oの狙いと思えてくる。


そのまま「Bang & Olufsen」アプリが案内されるのでこちらもインストール


ずらっと表示されるB&O製品から今回はもちろん「A9」を選択


画面の指示に従って部屋に合わせた音響調整を実行すれば簡単に補正が完了。最後にカラー選択して、A9を使う準備は全て完了だ!

 

 

 

 

 

 

そのようなわけで、導入時の「設定」は思いのほか簡単だ。悩ましいのはむしろ、部屋のどこに置くかという「設置」の方かもしれない。

ただそれは、「部屋のどこかに置くかによって音が変わるのでそれを考慮した設置が必要」といったような、オーディオ的な悩ましさではない。先ほどの初期設定の中にも組み込まれているように、このスピーカーには、その部屋その場所の響きをテストトーンで測定して設定する「自動音響調整機能」が搭載されている。部屋のどこに置いても問題なく、そのポジションから部屋中に素晴らしい音を提供してくれるのだ。
 


どこに置いても最適な音質を実現。あとは部屋の様相とどのように合わせるかがポイント

なので、ここで言う「どこに置くかに悩む」というのは、ただ純粋にインテリア的な観点からの話。部屋に溶け込むデザインではあるが、だからこそ「部屋に完璧に溶け込ませるように置く」のか、「あえてちょっと目立たせるように置く」のか、インテリア的なセンスの見せどころになりそうだ。

ネットワークやオーディオのセッティングよりも、インテリアとしての見せ方の検討に時間を要する、時間をかけたくなる。それもこのスピーカーならではの魅力と言えるだろう。

もちろんB&Oの系譜にあるアイテムであるから当然、純粋にオーディオとしての魅力も素晴らしいものを備えている。アンテナのようなフォルムの正面には、8インチウーファー×1、3インチミッドレンジ×2、3/4インチツイーター×2、そして背面に1.5インチフルレンジ×2と、計7基のスピーカーユニットを搭載。
 


A9最新世代機は、ブライトな高域とクリアな中低域が魅力


電源ケーブルの被膜部分もファブリック素材を採用

それらを活用し、低音から高音までのワイドレンジさ、正面全体からの放射と背面からの反射による部屋全体への音の広がり、精密な自動音響調整などを実現。設置した場所から部屋全体に向けて、見事に整えられた音をバランスよく届けてくれるのだ。

サウンドの傾向として印象的なのは、高域の適度なシャープさやブライトさ。その成分がシンバルの鋭さやギターのエッジ感を際立たせてくれる。部屋全体に音をふわっと広く届けてくれるタイプのスピーカーにはソフトタッチなサウンドの製品が多いのだが、こちらのスピーカーは音を豊かに広げつつも、カチッとした硬質さや精密感の表現も得意だ。
 


音質設定等もこの「Bang & Olufsen」アプリから


大まかなイメージで音調を調整できる「ToneTouch」設定


高音と低音を個別に調整できる「Equalizer」設定

だが耳に痛い鋭さや硬さではないので、ストリーミングサービスをBGM的に流し続けておくといった使い方においても、音が主張しすぎて邪魔になることはない。またその高域も含めて、音調はアプリに用意されているイコライザー機能でも調整可能。柔らかな音が好みの方はそちらを使って好みに合わせるもの良いだろう。

中低域もクリアで、ブライトな高域とのマッチングが見事。大口径のウーファーとミッドレンジを高出力アンプで完璧に制御することで、余計な膨らみやだぶつきを抑え込んでいるのだろう。ポップスやロックのエレクトリックベースのフレーズラインの明確さはもちろん、ジャズのウッドベースの描写までも見事。タッチの瞬間の感触、弦の張りの強さまでも感じられるような、弾みのある音色を届けてくれる。
 



Beoplay A9は一般的なBluetoothスピーカーと比べると大柄で、価格帯もかなり上となるアイテムなのは事実。そもそもそれらと比較して選ぶような製品ではないだろう。大型ワイヤレススピーカーといってもパーティユースの派手な大迫力モデルとは別物だし、本格的なピュアオーディオシステムともやはり色が違う。

他にないコンセプトによるオンリーワンなワイヤレススピーカー、それが「Beoplay A9」なのだ。この魅力にピンときてしまったなら、もうこれを選ぶしかないだろう。

(高橋 敦)