独HIGH ENDで聴いた「特別な音」


山之内 正


OCTAVEが聴かせた、立ち去りがたくなるほどの「特別な音」

今年のHIGH ENDで聴いた特別な音の一例がOCTAVE(オクターブ)のシステムである。プリアンプ「HP-700」とモノラルパワーアンプの「Jubilee 300B」を組み合わせてフォーカルのスピーカーシステム「SCALA UTOPIA EVO」を鳴らしていたのだが、特に声のなめらかさと余韻の柔らかい質感はこれまで聴いたことのないもので、あまりの心地よさにその場から立ち去りがたくなるほどだった。

OCTAVEのブース

同社のAndreas Hoffmann氏によると、Jubilee 300Bは構想から10年を経て実現した渾身の作とのこと。プッシュプル回路を突き詰めてきたオクターブとしては、300Bシングルでトリプルアンプという回路構成自体が異例だし、ヒーター用に専用電源を設計する手法(7Hzの正弦波を発生)も斬新だ。同社が得意とするトランスはもちろん本機のためのカスタム設計で、20Hz以下の帯域まで特性を改善した純度の高い低音再生など、妥協することなく広帯域設計を貫いている。

OCTAVEのAndreas Hoffmann氏


同社のAndreas Hoffmann氏。300B真空管はElectro Harmonix(EH)とJJから選択できる

300BのメーカーはElectro Harmonix(EH)とJJから選択できる。Hoffmannはそれぞれに良さがあると説明してくれたが、筆者が声のなめらかさに感心したモデルはEHの300Bを使っていた。Jubilee 300Bはペア600万円前後のフラグシップ機であり、ターンテーブルはクリアオーディオの「Master Innovation」を組み合わせていたので、総額は1000万円を軽く超える。贅沢なシステムではあるが、そこまで投資してもこれほどスムーズな音には到達しないのが普通なので、やはり特別感は半端ではない