起源は130年前 受け継がれる「皇后のティアラ」

6/1(土) 20:00配信
産経新聞
 ご即位からまもなく1カ月。天皇、皇后両陛下は6月9日には、26回目の結婚記念日も迎えられる。即位をきっかけに皇后さまの華麗な装いにも、改めて注目が集まっている。5月1日の即位の儀式で着けられたティアラ、儀式ごとに変わったドレス、古式ゆかしい十二単(じゅうにひとえ)…。世代を超えて大切に受け継ぐという尊い営みと、装いに秘められた皇室のトリビアを紹介する。

【写真】平成2年11月の即位祝賀パレードに出発される上皇ご夫妻

 華麗に、それでいて上品に。象徴的に皇后さまの威厳と品格をたたえるティアラ(宝冠)。日本の皇室では、皇位継承とともに、その后(きさき)である皇后や皇太子妃に、それぞれ伝統的なデザインが受け継がれてきている。

 ◆起源は130年前に

 5月1日、宮中儀式に臨まれた皇后さまの頭上でひと際輝いていたのは、歴代皇后に受け継がれる複数のティアラの中で、「皇后の第一ティアラ」などと呼ばれる最も由緒あるティアラとされる。

 皇室の歴史とファッションに詳しい大東文化大の青木淳子特任准教授によると、このティアラの起源は約130年前に遡(さかのぼ)る。

 明治19年、西洋化を進めることで近代化を目指す欧化政策の中で、宮中における女子の正式な服装が洋装と定められた。そのころ撮影された明治天皇の后、昭憲(しょうけん)皇太后のお写真のティアラと、皇后さまが1日に身につけられていたティアラは「デザインが酷似している」(青木氏)という。

 明治20年2月11日付の「東京日日新聞」は、このティアラについて、
ドイツ、ベルリンの御用金工師レヲンハード
およびフイーゲルの二氏」に命じ、
「ブリリヤント形の金剛石(ダイヤモンド)
六十個

を用いたことを報じた。ティアラの頂点のダイヤモンドは取り外しができるとの記載もあった。

 ◆皇太子妃から皇嗣妃

 同じ形状のティアラを、大正天皇の后である貞明(ていめい)皇后、昭和天皇の后である香淳(こうじゅん)皇后、そして現在の上皇后さまが皇后時代に着用されている写真があり、青木氏は「完全に同じものかどうかは分からないが、伝統のデザインが受け継がれていることは確か。『皇后』という立場を象徴するティアラを上皇后さまから受け継がれた皇后さまのご心中には、並々ならぬ決意があったのでは」と話す。

 「皇后のティアラ」に対し、今回、秋篠宮妃紀子さまに受け継がれたとされるのが、「皇太子妃のティアラ」。流麗な唐草のデザインは、上皇后さま、そして皇后さまがご成婚の際に身につけられていたものだ。秋篠宮さまが皇位継承順1位の「皇嗣(こうし)」となられたことで、その妃である紀子さまに伝わったとみられる。

 ■女性皇族 成年式で新調 入札、コンペ方式も

 歴代皇后に受け継がれるティアラは、天皇の三種の神器などと同様に宮内庁が認定する「皇位とともに伝わるべき由緒ある物」(由緒物)と位置づけられている。一方、ほかの女性皇族方が成年式などで身につけられるティアラは、同庁がほかの宝飾品とともに新調するケースが多い。

 かつては特定業者の随意契約だったが、平成15年に三笠宮家の瑶子(ようこ)さまが成年になられるとき、指名競争入札方式が導入された。

 23年の秋篠宮ご夫妻の長女、眞子さまの成年式では「和光」と「ミキモト」が応札し、和光が落札。デザインはメーカー側の提案をベースに、眞子さまのご希望も取り入れられたという。妹の佳子さまのときは制作業者を広く公募し、コンペ方式で学識経験者らが審査。ミキモトが受注した。受注額はいずれも3千万円程度だった。

 ティアラは私物ではなく国有財産として供用され、女性皇族方が結婚で皇室を離れるまでお使いになる