「偏見助長につながる」 引きこもり当事者ら報道に懸念 支援団体の声明も相次ぐ 川崎殺傷

5/31(金) 18:57配信
毎日新聞
 川崎市多摩区で小学生ら19人が死傷した事件で、岩崎隆一容疑者(51)が「引きこもり傾向にあった」ことが事件の背景として報道されていることについて、引きこもりの当事者や支援団体が「偏見助長につながる」と懸念する声明を相次いで発表した。当事者や家族を追い詰めかねないとして、冷静な対応を訴えている。【中川聡子、塩田彩/統合デジタル取材センター】

【騒然とした現場の写真】

 引きこもりの当事者がウェブと冊子で情報発信するメディア「ひきポス」の石崎森人編集長は30日、「報道で世間がひきこもっている方たちへ無差別殺人犯予備軍のようなイメージを持つことが起きれば、まさに偏見の誕生だ」と訴える文章をウェブサイトに掲載した。石森さんは自身の経験を紹介しながら、「当事者を追い詰めるのではなく、しっかりと事件を検証し、社会の不安が和らぐ報道や言論であってほしい。行為を責めることと、その人の置かれている状況を責めることはまったく違う」と呼びかけた。

 引きこもり経験者のグループ、一般社団法人「ひきこもりUX会議」も31日、「川崎殺傷事件の報道について」と題する声明文を発表した。事件について「いかなる理由があろうと決して許されるものではない」とした上で、引きこもりと殺傷事件を関連付ける報道について「強い危惧を感じている」と表明。「無関係のひきこもり当事者を深く傷つけ、誤解と偏見を助長する」「(過去の事件報道でも)『犯罪者予備軍』のような負のイメージが繰り返し生産されてきた」「当事者や家族は追いつめられ、社会とつながることへの不安や絶望を深めてしまいかねない」として、「特定の状況に置かれている人々を排除したり、異質のものとして見るのではなく、事実にのっとり冷静に適切な対応をとっていただくようお願い申し上げます」と結んでいる。

 岩崎容疑者は事件当時、80代の伯父夫妻と3人暮らし。市は事件を受けて記者会見し、岩崎容疑者が引きこもり傾向にあったと説明していた。