エヌビディア暗転、時価総額の半分が消えた訳

Wall Street Journal



――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」
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 米半導体大手エヌビディアは4カ月足らずの間に、何をしてもうまくいく企業からすべてがうまくいかなそうな企業に変貌してしまった。
 どちらの見方も少し大げさだが、同社の株価急落が示すのはハイテク業界における運がいかに急激に反転し得るかだ。迫りつつある中国との貿易戦争、好みがうるさいビデオゲーマー、ハイテク大手の予想不可能な設備投資、さらには仮想通貨の採掘(マイニング)の一時的な流行などの要因が絡めばなおさらである。
 エヌビディアはそのすべての影響を受けるが、それらが揃って悪化した格好だ。その損失は驚くほど大きい。エヌビディア株が高値を付けた10月1日以来、時価総額の52%(約900億ドル超=約9.8兆円)が吹き飛んだのだ。


28日には11-1月期(第4四半期)の売上高が従来予想(27億ドル)を約19%下回るとの見通しを示し、株価が急落した。同社は以前にも、仮想通貨採掘バブルの崩壊がもたらした余剰在庫を理由に、画像処理半導体(GPU)の第4四半期の販売が失望を誘うものになると注意を促していた。そして今度は中国の景気低迷、最新型半導体やデータセンター向け事業の不振などを下方修正の理由に追加した。
 ビデオゲーム向けGPUはエヌビディアの総売上高の半分以上を占めるため、この分野のの問題だけでも十分に大きな打撃だ。しかし、同社が最も時価総額が高い半導体企業の一角になれた主な理由はデータセンター向け事業にある。同社のGPUはアマゾンやマイクロソフト、グーグルの親会社アルファベットといったクラウドサービス大手がネットワークに組み込んでいる人工知能(AI)システムの要である。そのため、エヌビディアはそうした企業の設備投資ブームの恩恵を受けてきた。
 ただ、そうした設備投資は確実性や予測可能性が高いという訳ではない。半導体大手インテルも先週、クラウドサービス各社が最近の投資拡大で増強した「能力を吸収しているところだ」とし、データセンター向け事業の売上高が予想を下回っているとした。
 エヌビディアは28日、第4四半期末までに見込まれていた数件のデータセンターの取引がまとまらなかったと説明。顧客企業が「景気の先行き不透明感からますます慎重になっている」と付け加えた。アナリストは同社のデータセンター向け事業の第4四半期売上高が前年同期比38%増の8億3800万ドルになると予想してきた。
 1年前には52倍だった予想PER(株価収益率)が半分に下がっていることを考えれば、エヌビディア株は比較的割安に見えるかもしれない。しかし、主要事業のいくつかは今、リセットモードにある。投資家は当面、このゲームへの参加を見送るだろう。
(The Wall Street Journal/Dan Gallagher)