体重600kg、体長4m超の巨大ワニが女性殺害 違法飼育の容疑で日本人を捜索

1/17(木) 17:34配信
ニューズウィーク日本版
危険な野生動物が生息するインドネシアで、飼育係の女性がワニに襲われて死亡する事故が発生。どう猛なペットを飼っていたのは日本人だった
インドネシア・スラウェシ島北部北スラウェシ州ミナハサ県にある日本人が経営する真珠養殖所でインドネシア人女性が巨大なワニに襲われて死亡する事件が起きていたことが明らかになった。

[動画] 殺人ワニ捕獲の様子

真珠養殖所で働くインドネシア人女性のディアジー・トゥオさん(44)は養殖所で飼育されているいろいろな動物の飼育も任されており、養殖所の池でワニに餌をやる仕事もしていた。

養殖所の池には体重600キロ、体長4.4メートルの巨大なワニが「飼育」されており、ワニは「メリー」と名付けられていた。

1月10日にディアジーさんはエサやりなどの通常業務に出かけたところを同僚に目撃されたのを最後に行方がわからなくなった。翌日11日に同僚がディアジーさんを探していたところ、池の中にメリーがいて、付近の水面にディアジーさんの遺体が浮いていたという。

直ちに通報を受けた地元トモホン警察の警察官が駆けつけて遺体を収容し。検視したところ、両腕や腹部の一部が欠損しており、メリーに食べられて殺害されたものと判断された。

地元警察はディアジーさんが水際からエサをメリーにあげようとしたところ、何らかの拍子で池に転落し、メリーに襲われた可能性が高いとみてさらに捜査を進めている。

遺体の両腕や腹部の一部だけが食べられたのは「たぶんメリーが満腹状態だったので(ディアジーさんの)腕と腹部だけ食べて満足し、全身は食べ残されたのだろう」とみている。

ワニを飼っていた日本人経営者、刑事訴追も

地元トモホン警察では事故のあった真珠養殖所を経営しているという日本人の行方を捜索している。ワニはこの日本人が個人的に真珠養殖所敷地内の池で飼育していたとされ、ワニなどの危険な野生動物を私有地で飼育する場合には特別な許可が必要であることから、適正な許可を受けていたかどうかを捜査する。

そのうえで「もし適正な許可を日本人が受けていなかった場合には、刑事訴追の可能性もある」として人命が失われた事故だけに厳しく対処する考えを示している。

ディアジーさん殺害の「実行犯」であるワニのメリーは事件後、野生動物専門家や警察官、国軍兵士、地元自治体関係者など約25人からなるチームによって捕獲作業が行われた。専門家によって麻酔注射を打たれながらのたうち回るメリーを動けないようにがんじがらめに縛り上げて確保された。今後、一般市民の居住地区から離れた自然保護地域で解放する予定という。



インドネシアで相次ぐワニの被害
国土の大半が熱帯雨林地域であるインドネシアは、全域でワニやヘビ、象などの野生動物が生息または飼育されており、農作物への被害や住民への被害があとをたたず、死亡したり重傷を負ったりする事故も相次いでいる。

2018年2月にはスマトラ島ジャンビ州の村で66歳の女性が付近の川に生息する巨大なワニのそばで一部が食べられたとみられる遺体で発見される事故があったほか、同年3月にはカリマンタン島東カリマンタン州クタイ県の川で四肢のない男性の遺体が発見され、近くにいた巨大ワニを警察官が射殺して解体、腹部を切り開いたところ遺体の一部が見つかるという事故も報告されている。

また、2016年には観光地として知られる西パプア州ラジャウンパットの海岸付近の水辺でロシア人観光客がワニに襲われて死亡しているのが発見されたほか、巨大ワニに人間が丸呑みされて死亡する事故も報告されている。ワニ以外にも野生の象などによる農作物の被害や人的な被害も起きている。

インドネシア観光当局は特に地方の川沿いや海岸、密林内では注意する必要があると地元住民だけでなく海外からの観光客にも呼びかけている。
大塚智彦