日本でも、99%、「完コピ」できる、
シンプルで
カッコよくて、
リーズナブルで、
自慢できて、
人を呼びたくなる
隠れ家
鉄骨補強で、木造住宅
眺めの良い家です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
自然と対峙する建築。地球の果てにある4つの家
ゴツゴツした岩崖、波立つ入江、緑豊かな湖畔をまたいで建つ家をめぐる、長い旅。
HOUZZ
設計要件と未開発の敷地を与えられた建築家は、その敷地の隅々からインスピレーションや重大な建築的解決策を見いだすことがよくあります。敷地の境界とは、それが現実のものであれ想像のものであれ、建物を建てる上でとても面白い部分です。建物の形状や素材だけでなく、構造の根拠になることもよくあります。
以下に紹介するプロジェクトは、思考を刺激し、物議を醸すような方法で、こういった境界のあり方を探求しています。これらのプロジェクトは安全性に欠け、不必要なリスクをとっていると言う人もいるかもしれません。しかし、建築とはそもそも、世界の見方を変えるものでもあります。設計のプロセスにおいて、建築家は、安全に関する法令、専門的な工法、建築についての各地域の規制、環境についての規制などさまざまな考え方や制約に対応する必要があります。建築家はまた、施主のニーズ、要望、予算を満たすだけでなく、当然ながら、その作品の外観も良いものにしなければなりません。ここで紹介する住宅のデザインが優れている点は、居住者の安全性を重視する一方で、ありのままの自然に潜むドラマや危険性をその特徴としていることです。
では、住宅がどのように自然に立ち向かい、建築的な慣習と圧倒的な自然の美しさの境界線上に存在するかを見てみましょう。
1. 岩崖
カナダのノバスコシア州の沿岸に建てられたこのコテージへのアプローチでは、ほとんど何も見えないように設計されています。シルバーグレイの杉の外壁が、花崗岩の地形、灰色の海、どんよりとした空に溶けこんでいきます。装飾や目立つフォルムを排したそのシンプルな立方体と眺望デッキは、辺りの風景と敷地に畏敬の念を示しています。この地方の厳しい風雪にさらされた杉の漁師小屋にうまく馴染んでいるようです。
この家に入ってみると、その海側の部分が地上からどれだけ高い位置にあるかを感じ取ることができます。この住宅の半分は急な崖のうえにあることから、The Cliff House(崖の家)と呼ばれています。入口階のインテリアとメインの居住空間からは、水平線、傾斜する地形、海が一望できます。
この住居は、この場所の体験を和らげるとともに、それ自体が境界になります。敷地へ敬意を払いながらも、場所を理解し、眺望を切り取り、水平線に呼応し、重力に挑むためのレンズのようなものです。この敷地への深い尊敬の念は、特製のコンクリートの基礎に支持され、上部のリビングスペースを内包する杉材の箱を支えている超軽量の鉄骨構造にも表れています。
壁の開口部は、境界における特定の内部体験を演出するようにも作られています。リビングルームの窓は180度全開のパノラマを捉え、上階の寝室用ロフトからは、崖の向こうに海岸線と並行に広がる景色がさらに見渡せます。
構造上の要件は、家全体の構成と同様に、直接的に表現されています。鉄骨の骨組には必要性が感じられますが、三脚や消防塔といった仮設物のような印象もうけます。その美しさは、実用性の美しさです。この家は、いつでも折り畳まれ、格納され、移設されてしまいそうな感覚を見る者に与えますが、この地形においてこの建物をつくるには、この敷地しかなかったのです。
内部の構造も、飾り気がなく、実用的です。基本的な鉄骨の骨組は、水平荷重と垂直荷重の両方に耐えるようにトラス形状で設計されています。断熱材の入っていない外壁は斜めに配置された凹凸のある木板で覆われ、間柱を歪みとせん断から守っています。
ロフトからリビングルームを眺めれば海が見えるような気がしますが、実際には、ずっと下の方に地面が見えるだけです。89㎡のコンパクトな空間で、変化に富んだインテリアを体験できるのです。
根拠が無いと言われるかもしれませんが、安全性、構造的表現、体験を結びつけるデザインは素晴らしいものです。境界の特性に敬意を払いつつ、対照的な特徴を際立たせることでそれを生かし、全体の調和を構成しています。崖の端に家を配置することで、周辺環境への理解が深まり、さまざまな体験が生まれました。このプロジェクトが無数にある法的制約を乗り越えて成し遂げられたこともまた、感嘆に値します。
2. 入江
このウィークエンドハウスは、米ワシントン州のピュージェット湾を広範囲に臨む牧草地と森林が交差する場所に位置します。この建築は、まさに自然との境界にあり、家のなかで周辺環境との相互関係を感じさせてくれます。
プロジェクト全体が何か「発見」したような感覚にさせてくれます。エントランスはくだけた雰囲気です。小さな空間で経験するさまざまな体験はとても刺激的です。写真にある、小さく暗いエントランスは森を想起させます。
なかに進むと、眺めが広がり、森と水の境界が完全に消え去ります。リビングスペースは、キャンチレバー構造で、景色の方に向かうような動きでさらにドラマチックになっています。
メインのリビングルームからは、周辺の環境全体を感じることができます。浮屋根からは、自然と目が森のほうへと向きます。
設計者は、存在感のある壁とガラスの壁のバランスを工夫することで、ちょっとしたシェルターのような感覚を創りだしました。そこで、保護されている感覚と同時に、空間に向かい合っているという感覚を覚えます。
そのような空間と向い合うということでいえば、この住宅ではたとえ最も奥まった場所においても、周囲のドラマチックな眺望から遠ざかることは決してありません。
安全性と美しさの結びつきは、意図されたものであり、そのように設計されているのです。手すりは目立たないよう、最小限のデザインにとどめられています。
この住居は、景色が違って見えるような広い屋根といった建築的な要素をもっており、自然との境界を強く感じられます。屋根を抜けて眺望デッキに上がると水平線の位置が変わり、家のうえにいることを完全に忘れてしまいます。そこでは樹木の枝が風にそよぎ、調和のとれた景色があるだけです。こういった単純なことが、小さな家では大きな意味を持つのです。
3. 湖畔
建築そのものだけではなく、そこでの体験も同じくらいに重要なプロジェクトです。この建物への約1.6キロに及ぶアプローチは、多くの境界線を横断していく、一つの旅です。
その道のりは、ケーブル式吊り橋で森林渓谷を越え、丘に沿って進み、湖の端にある小さな集合スペースとボートハウスへと続きます。
湖の端に着くと、水の上に浮かぶ低層のボートハウスがあります。その金物と細かく細工されたディテールは、船の構造を思い起こさせます。このボートハウスにアプローチすると、建築ではなく、湖に目がいきます。前述のプロジェクトとどうように、開かれた空間と閉じられた空間のコントラストが印象的です。南面の小窓を見てください。
この窓の室内側には、特注の金属製の台に置かれた小さなランタンがあります。このようなディテールには、工芸への思い、特別な場所を創ることへの想いが表れています。 この窓の光が夕暮れに湖の灯台のように、内と外の人工的な境界を結び、ひとびとを家のなかへと呼び入れるところがイメージできます。
構造は軽量で(設計者は「水上スケーター」と呼んでいます)、湖面にそっと腰掛けているようです。設計者は、構造的な剛性と繊細な存在感の演出のために、簡素な桟橋の構造を思わせる鉄骨フレームを採用しました。上階の居住空間の北面と東面に組み込まれたスクリーンパネルが跳ね上がると、床が即興の飛び込み台になります。パネルが上げられると、もともと軽やかな印象のこの建物は、さらに周りの樹木に溶け込んでいくようです。
のんびりとしたり、泳いだりして、湖を体験できる場所です。フォーマルとカジュアル、工芸と実用性の境界を行き来するのです。
4.日没
ノバスコシア州の岩場の海岸沿いにある、険しくてむき出しの地形に建っている住宅です。この住宅が構想される以前に、住まい手たちが日没を見るために訪れた花崗岩が見えます。
ここでは、まるで氷河が海岸線を削ったように、境界の特性によって家が形づくられました。片流れ屋根は、せり上がって景色を確保すると同時に、その勾配で雨水を流します。 箱のようで飾りのない建物の形は、庇や軒をつけても氷が蓄積していつも溶けたり凍ったりを繰り返してしまうこの土地での解決策でした。海岸線に対して垂直に伸びる基礎を成すコンクリートは、近くの大西洋から押し寄せる波への対策です。
弾力性が、この海洋環境における重要なコンセプトです。波に抵抗するような壁を設計するよりも、構造の下に波を誘導する方が簡単です。視覚的には、このコンクリートによって、船着場やドライドックに入った船体の船屋を連想させます。
この家では、建物と周囲の境界を額にいれたかのような、西側の海の景色を眺めることができます。家とその先の海は、かなりスケールが違うのです。
この敷地特有の風雪にさらされたブルーグレイ色に触発された、素材の色使いも印象的です。耐久性のために採用された金属性の波板は、船体に使われる板張りを連想させます。地元でよく使われる杉材は、腐食に強い天然の建材です。太陽と塩分濃度の高い空気にさらされると、杉はすぐにシルバー色に変化します。建物を安定させている基礎のコンクリートは、近隣の花崗岩を模倣しています。
直線形のリビングスペースでは、北と西のファサードは大西洋に向かって完全に開放されていますが、東側は落ち着いてしっかりと守られている感じがします。この東側の堅牢な壁は、収納庫、キャビネット、バスルームなどのスペースと、リビングスペースなどのスペースの内部での境界線でもあります。室内計画の原則に忠実であることで、最小限の面積の空間でも、機能的で効率が高められています。
内装材の色も、陸と海の境界が着想の元になっています。磨きのかけられたコンクリート床は、周りに馴染み、水面のようにも感じます。白壁は、周囲の環境の色を映しだします。たとえば、移り変わる夕日の色や迫りくる嵐のダークグレイなどです。
家の北西の隅は、すべてがごっそりと切り落とされ、夕日のための屋外ポーチになっています。室内でもなく、完全に室外でもない空間は、豊かな体験を生みだします。うえに部屋があるため、この屋外ポーチの天井は低くなっており、内側のリビングルームの高い天井と対照的です。低い天井で視線は自然と外側に向くこととなり、ドラマチックな屋外ポーチはより一層自然に近づくのです。
ランタンのように優しく照らされたインテリアは、内部空間の配列をシンプルに表します。リビングスペースはガラス張りですが、寝室は景観に配慮して計画されています。外観もインテリアと同様に巧みにコントロールされており、開口部は構造の枠組みに沿ってリズミカルに区切られています。すべてが適切な場所にあるのです。
賢明なことに、嵐に備えてガラス張りの壁を覆う大きな引戸も装備しています。この柔軟性の高いデザインは、建物がさまざまな気象条件に適応できるのです。
自然との境界にあるという特徴から、家の側面では強風による荷重に抵抗できるように設計された構造になっています。ブレースはシンプルで直接的に用いられています。
傾斜したブレースは鉄骨が風荷重で変形しないようにし、その入隅はマチで補強され、荷重を支柱に伝達し、最終的には花崗岩の地盤に固定された基礎に伝わります。
ここでは、陸は安全なもので海からの逃げ場所になっています。この家は、そのような敷地の持つ自然との際における特性、開放性、避難の縮図です。自然の力が理解されたうえで、この周辺環境は設計に落とし込まれています。