日本女性は、「自ら、専業主婦を世界一、望んでいるのです」
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「専業主婦バッシング」が、日本社会のブラック化につながってしまう理由
先週、一部の専業主婦の方たちが大激怒するような出来事があった。
きっかけは、12月13日の『スッキリ』(日本テレビ系)で紹介されたあるアンケートだ。人材サービス「しゅふJOBパート」の調査機関「しゅふJOB総研」が、専業主婦・主夫経験者を対象に「専業主婦・主夫であることに、後ろめたさや罪悪感のようなものを覚えたことはありますか?」という質問をしたところ、「ある」と答えたのは25.4%、「少しはある」は31.2%ということで、「罪悪感」を感じている人が半数以上も占めていたというのだ。
【画像】理不尽なバッシングが専業主婦に向けられている
これを受け、スタジオではMCの加藤浩次さんなどが、「罪悪感なんて持たなくていい」とフォローをしたが、一部の専業主婦の皆さんの逆鱗(げきりん)に触れてしまったようで、「テレビ局になんでそんなことを言われる筋合いが」「人権侵害、名誉毀損レベル」という怒りの声が溢れてしまったのである。
もちろん、これは番組が調査したわけではなく、「主婦(夫)の働くを応援!」とうたう求人サイトを運営する企業が行なったもの。さらにもっと言ってしまうと、そこまで深刻に受け止めるような話でもない。ご存じの方も多いだろうが、マスコミの世論調査も質問の投げ方、たたみかけていく順番によって、回答が各社の論調と乖離(かいり)しないよう形で「誘導」できる。この「働く主婦アンケート」も然りで、「調査」の名を借りたPRなどと言うつもりは毛頭ないが、質問者側の「意図」でバイアスがかかった結果が出る可能性も否めないのだ。
だが、一部の専業主婦の方たちにそんな言い訳は通用しない。バイアスのかかった調査だと冷めた目で見ているような方でも、それを全国ネットでわざわざ取り上げたことに激怒している。
このようなすさまじい怒り、憤り、そして嘆きを見て強く感じるのは、専業主婦の中に、「私たちは常日頃から不当なバッシングを受けている」と感じられている方がかなり多い、ということだ。
「専業主婦」「批判」「働かない」などのキーワードでググっていただければ一目瞭然だが、実はネット上では近年、「専業主婦バッシング」が溢れているのだ
きっかけは、12月13日の『スッキリ』(日本テレビ系)で紹介されたあるアンケートだ。人材サービス「しゅふJOBパート」の調査機関「しゅふJOB総研」が、専業主婦・主夫経験者を対象に「専業主婦・主夫であることに、後ろめたさや罪悪感のようなものを覚えたことはありますか?」という質問をしたところ、「ある」と答えたのは25.4%、「少しはある」は31.2%ということで、「罪悪感」を感じている人が半数以上も占めていたというのだ。
【画像】理不尽なバッシングが専業主婦に向けられている
これを受け、スタジオではMCの加藤浩次さんなどが、「罪悪感なんて持たなくていい」とフォローをしたが、一部の専業主婦の皆さんの逆鱗(げきりん)に触れてしまったようで、「テレビ局になんでそんなことを言われる筋合いが」「人権侵害、名誉毀損レベル」という怒りの声が溢れてしまったのである。
もちろん、これは番組が調査したわけではなく、「主婦(夫)の働くを応援!」とうたう求人サイトを運営する企業が行なったもの。さらにもっと言ってしまうと、そこまで深刻に受け止めるような話でもない。ご存じの方も多いだろうが、マスコミの世論調査も質問の投げ方、たたみかけていく順番によって、回答が各社の論調と乖離(かいり)しないよう形で「誘導」できる。この「働く主婦アンケート」も然りで、「調査」の名を借りたPRなどと言うつもりは毛頭ないが、質問者側の「意図」でバイアスがかかった結果が出る可能性も否めないのだ。
だが、一部の専業主婦の方たちにそんな言い訳は通用しない。バイアスのかかった調査だと冷めた目で見ているような方でも、それを全国ネットでわざわざ取り上げたことに激怒している。
このようなすさまじい怒り、憤り、そして嘆きを見て強く感じるのは、専業主婦の中に、「私たちは常日頃から不当なバッシングを受けている」と感じられている方がかなり多い、ということだ。
「専業主婦」「批判」「働かない」などのキーワードでググっていただければ一目瞭然だが、実はネット上では近年、「専業主婦バッシング」が溢れているのだ
「社会のブラック化」が進行してしまう
「家計が苦しいとか言うなら、夫だけじゃなく自分自身でも働けばいいのに」「家事と育児だけで忙しいなんて甘えている」――。もちろん、世の中にはいろいろな考え方があっていいのだが、中には専業主婦という生き方を全否定するような声もある。
このような風潮はかなりマズい。
専業主婦をボロカスに叩いても、ワーキングママが増えることはない。むしろ、働く女性たちの賃金や待遇は今まで以上に悪化する。要は、女性たちにとって、「社会のブラック化」が進行してしまうのだ。
一体どいうことかを分かっていただくには、まずは現在の「専業主婦バッシング」の正体を見極めないといけない。
歴史を振り返れば、専業主婦が叩かれるムードの盛り上がりは、これまでもたびたび起きている。20年ほど前にも、『くたばれ専業主婦』なんて本が話題になったこともあるように、「専業主婦は家畜以下」なんてディスる女性はたびたび登場し、世の注目を集めてきた。が、この数年のムードはそれらと全く趣が異なってきている。
働くママは仕事と子育ての両立で毎日大変だ、というパブリックイメージが定着し、その問題にフォーカスが当たれば当たるほど、「外で働いていないママ」は「なんで外に働きに出ないの?」「共働き家庭で普通にやっているのをなんでひとりでやるの?」という社会からの「無言の圧力」が強くなっているのだ。
そんなのはお前の気のせいだと思うかもしれないが、現在の日本は「ワーキングママ」や「ワンオペ育児」というキーワードが社会問題として大変な注目を集め、「保育園落ちた、日本死ね」なんて働くママの怒りで、政治やマスコミが動く、ことに異論はないだろう。このような「働くママを支えろ!」の大合唱の中で、一部の専業主婦の方が肩身が狭いと感じても特に驚くような話ではないのだ。
このような遠回しの「専業主婦ネガ風潮」ができ上がったのが、一体いつなのかとたどっていくと、やはり第二次安倍政権が果たした役割が大きい。第一次安倍内閣時には、女性を「子どもを産む機械」なんて発言をした閣僚がいたように、とにかく戦前のような産めよ増やせよ、と音頭を取っていた。しかし、民主党に政権を奪われた後はガラリと方針転換。人が変わったように、成長戦略の柱に「女性の社会進出」を掲げ始めたのである
このような風潮はかなりマズい。
専業主婦をボロカスに叩いても、ワーキングママが増えることはない。むしろ、働く女性たちの賃金や待遇は今まで以上に悪化する。要は、女性たちにとって、「社会のブラック化」が進行してしまうのだ。
一体どいうことかを分かっていただくには、まずは現在の「専業主婦バッシング」の正体を見極めないといけない。
歴史を振り返れば、専業主婦が叩かれるムードの盛り上がりは、これまでもたびたび起きている。20年ほど前にも、『くたばれ専業主婦』なんて本が話題になったこともあるように、「専業主婦は家畜以下」なんてディスる女性はたびたび登場し、世の注目を集めてきた。が、この数年のムードはそれらと全く趣が異なってきている。
働くママは仕事と子育ての両立で毎日大変だ、というパブリックイメージが定着し、その問題にフォーカスが当たれば当たるほど、「外で働いていないママ」は「なんで外に働きに出ないの?」「共働き家庭で普通にやっているのをなんでひとりでやるの?」という社会からの「無言の圧力」が強くなっているのだ。
そんなのはお前の気のせいだと思うかもしれないが、現在の日本は「ワーキングママ」や「ワンオペ育児」というキーワードが社会問題として大変な注目を集め、「保育園落ちた、日本死ね」なんて働くママの怒りで、政治やマスコミが動く、ことに異論はないだろう。このような「働くママを支えろ!」の大合唱の中で、一部の専業主婦の方が肩身が狭いと感じても特に驚くような話ではないのだ。
このような遠回しの「専業主婦ネガ風潮」ができ上がったのが、一体いつなのかとたどっていくと、やはり第二次安倍政権が果たした役割が大きい。第一次安倍内閣時には、女性を「子どもを産む機械」なんて発言をした閣僚がいたように、とにかく戦前のような産めよ増やせよ、と音頭を取っていた。しかし、民主党に政権を奪われた後はガラリと方針転換。人が変わったように、成長戦略の柱に「女性の社会進出」を掲げ始めたのである
専業主婦の皆さんは「最も生かしきれていない人材」に
13年4月19日の「成長戦略スピーチ」が分かりやすい。
『優秀な人材には、どんどん活躍してもらう社会をつくる。そのことが、社会全体の生産性を押し上げます。現在、最も生かしきれていない人材とは何か。それは、「女性」です。女性の活躍は、しばしば、社会政策の文脈で語られがちです。しかし、私は、違います。「成長戦略」の中核をなすものであると考えています。女性の中に眠る高い能力を、十二分に開花させていただくことが、閉塞感の漂う日本を、再び成長軌道に乗せる原動力だ、と確信しています』(首相官邸の公式Webサイト)
この発言からうかがえるのは安倍政権が、専業主婦の皆さんを「最も生かしきれていない人材」だと捉えており、それどころか暗に「閉塞感」や「生産性の低さ」の原因のように見ているということだ。
さて、このような「人材活用」としての「女性」という構図を見ると、「ん? こんなの最近、どっかで見たな」とデジャブ(既視感)に襲われる方も多いかもしれない。
そう、マスコミが「外国人活用法案」と呼んだ出入国管理法改正案によって、これから日本の労働現場に大量に入ってくる「外国人」と丸かぶりなのだ。
本連載の『だから「移民」を受け入れてはいけない、これだけの理由』などでも再三指摘をしてきたが、この法案の最大の欠陥は、ブラック企業問題や、低賃金・低待遇を改善しなくとも、産業界の求めるままに、労働力を増やせさえすればバラ色の未来が待っているという、すさまじい「勘違い」にある。
低賃金や低待遇で働いてくれる外国人労働者が増えれば、現在のブラック企業問題は解決されないどころかさらに深刻化していく。また、外国人側も当然、我々と同じく、より高い賃金、より良い待遇を求めて離職するので、現在のような「雇用ミスマッチ」がさらに複雑化していくだけだ。
また、奇妙な死に方をする技能実習生がいたり、中国やベトナムから働きに来た方がセクハラやパワハラを訴えている。なぜこんな悲惨な状況になるのかというと、海外の悪質なブローカーが、貧しい自国民に借金を背負わせて、日本のブラック企業へと送り込む流れもできているからだ。
つまり、今も日本を悩ませる、慰安婦や徴用工の問題と同じことが繰り返されており、我々の子どもや孫の世代に、非常に深刻な人権問題を引き起こす恐れが極めて高いのだ
『優秀な人材には、どんどん活躍してもらう社会をつくる。そのことが、社会全体の生産性を押し上げます。現在、最も生かしきれていない人材とは何か。それは、「女性」です。女性の活躍は、しばしば、社会政策の文脈で語られがちです。しかし、私は、違います。「成長戦略」の中核をなすものであると考えています。女性の中に眠る高い能力を、十二分に開花させていただくことが、閉塞感の漂う日本を、再び成長軌道に乗せる原動力だ、と確信しています』(首相官邸の公式Webサイト)
この発言からうかがえるのは安倍政権が、専業主婦の皆さんを「最も生かしきれていない人材」だと捉えており、それどころか暗に「閉塞感」や「生産性の低さ」の原因のように見ているということだ。
さて、このような「人材活用」としての「女性」という構図を見ると、「ん? こんなの最近、どっかで見たな」とデジャブ(既視感)に襲われる方も多いかもしれない。
そう、マスコミが「外国人活用法案」と呼んだ出入国管理法改正案によって、これから日本の労働現場に大量に入ってくる「外国人」と丸かぶりなのだ。
本連載の『だから「移民」を受け入れてはいけない、これだけの理由』などでも再三指摘をしてきたが、この法案の最大の欠陥は、ブラック企業問題や、低賃金・低待遇を改善しなくとも、産業界の求めるままに、労働力を増やせさえすればバラ色の未来が待っているという、すさまじい「勘違い」にある。
低賃金や低待遇で働いてくれる外国人労働者が増えれば、現在のブラック企業問題は解決されないどころかさらに深刻化していく。また、外国人側も当然、我々と同じく、より高い賃金、より良い待遇を求めて離職するので、現在のような「雇用ミスマッチ」がさらに複雑化していくだけだ。
また、奇妙な死に方をする技能実習生がいたり、中国やベトナムから働きに来た方がセクハラやパワハラを訴えている。なぜこんな悲惨な状況になるのかというと、海外の悪質なブローカーが、貧しい自国民に借金を背負わせて、日本のブラック企業へと送り込む流れもできているからだ。
つまり、今も日本を悩ませる、慰安婦や徴用工の問題と同じことが繰り返されており、我々の子どもや孫の世代に、非常に深刻な人権問題を引き起こす恐れが極めて高いのだ
専業主婦が直面している生きづらさの正体
このような「勘違い」は、実は「女性の活躍」も全く同じである。
14年、日本経済研究センター予測・研修グループの北松円香氏が、「フランスにおける子育て支援」という講演で以下のように述べている。
『フランスの世論調査を見ましても、意識変化が 30 年かけて起きており、母親が希望したならば働くべきかという点については、1979年では肯定意見は少なく30%程度ですが、2012 年には回答の半数を超えています』
では、フランスの世論はなぜ変わったのか。今の日本のように、専業主婦の皆さんが激しいバッシングにあって、その罪悪感を払拭(ふっしょく)するために社会に飛び出したのかというと、間違ってもそんな話ではない。
女性が家事や育児をしながら働くことができる「環境」の整備が進んだのである。その証が出生率の向上だ。北松円香氏もこう述べている。
『合計特殊出生率と女性の就業率の間には、1980年時点では女性が働いていると出生率が低い という関係が見られていました。ところが2010年ではこのような傾向が無くなっており、むしろ女性が働いているとやや出生率が上がっていくような関係になってきています。中でも、イギリスやスウェーデンなどある程度の経済規模をもつ先進国にこのような傾向が見られておりますが、特にフランスは合計特殊出生率が2に達しております』(同上)
なぜ先進国の女性たちは就業率が上がっていく中でも、子どもを産もうという気になったのか。1980年から2010年にかけて、「母親」に対するさまざまな社会全体のサポートが充実していった、としか考えられない。
では、翻って日本を見ればどうか。待機児童問題や、「ワンオペ育児」なんて言葉があるように、女性が家事や育児をしながら働くことができる「環境」は整っていない。
にもかかわらず、「女性の活躍」という美辞麗句で、母親たちを半ば強制的に社会へと送り出している。「環境」が整っていないのだから当然、心身を病む母親もあらわれる。先ほどの外国人労働者と同様で、「使い捨ての労働力」が増えるだけなので、経営者側は賃金や待遇を改善する理由が見当たらない。つまり、ブラック企業が肥えるだけなのだ。
環境整備をしないくせに、「働かないのはおかしい」「怠けてる」と罪悪感を植えつけて、明らかに子育てや家事の足を引っ張るブラック労働に就かせようとする。この“無言の圧力”こそが、世の専業主婦の皆さんが感じている「生きづらさ」の正体なのだ
14年、日本経済研究センター予測・研修グループの北松円香氏が、「フランスにおける子育て支援」という講演で以下のように述べている。
『フランスの世論調査を見ましても、意識変化が 30 年かけて起きており、母親が希望したならば働くべきかという点については、1979年では肯定意見は少なく30%程度ですが、2012 年には回答の半数を超えています』
では、フランスの世論はなぜ変わったのか。今の日本のように、専業主婦の皆さんが激しいバッシングにあって、その罪悪感を払拭(ふっしょく)するために社会に飛び出したのかというと、間違ってもそんな話ではない。
女性が家事や育児をしながら働くことができる「環境」の整備が進んだのである。その証が出生率の向上だ。北松円香氏もこう述べている。
『合計特殊出生率と女性の就業率の間には、1980年時点では女性が働いていると出生率が低い という関係が見られていました。ところが2010年ではこのような傾向が無くなっており、むしろ女性が働いているとやや出生率が上がっていくような関係になってきています。中でも、イギリスやスウェーデンなどある程度の経済規模をもつ先進国にこのような傾向が見られておりますが、特にフランスは合計特殊出生率が2に達しております』(同上)
なぜ先進国の女性たちは就業率が上がっていく中でも、子どもを産もうという気になったのか。1980年から2010年にかけて、「母親」に対するさまざまな社会全体のサポートが充実していった、としか考えられない。
では、翻って日本を見ればどうか。待機児童問題や、「ワンオペ育児」なんて言葉があるように、女性が家事や育児をしながら働くことができる「環境」は整っていない。
にもかかわらず、「女性の活躍」という美辞麗句で、母親たちを半ば強制的に社会へと送り出している。「環境」が整っていないのだから当然、心身を病む母親もあらわれる。先ほどの外国人労働者と同様で、「使い捨ての労働力」が増えるだけなので、経営者側は賃金や待遇を改善する理由が見当たらない。つまり、ブラック企業が肥えるだけなのだ。
環境整備をしないくせに、「働かないのはおかしい」「怠けてる」と罪悪感を植えつけて、明らかに子育てや家事の足を引っ張るブラック労働に就かせようとする。この“無言の圧力”こそが、世の専業主婦の皆さんが感じている「生きづらさ」の正体なのだ
「上から目線」にイラッ
よく言われることだが、実は歴史を振り返ると、「女性の社会進出」は往々にして、男性社会の都合でうまく利用されてきた。例えば、明治期からの伝統的な軍国の家族国家観では「女性は家庭を守り、戦地の夫、息子を支える」というものだったが、満州事変あたりから女性は国威発揚のため社会に出るべきというムードがつくられる。
「国防婦人会」が結成され、家から飛び出した愛国婦人は、白い割烹着にタスキをかけ、街頭での「ぜいたく狩り」や、献金集め、病院での奉仕活動などさまざまな仕事にあたった。さらに、戦局が悪化して、本土の労働力が減少した中で、「行くぞ! 1億火の玉だ!」というスローガンのもとで、軍需工場などに駆り出された。
しかし、敗戦後、男たちが戦地から戻ると再び家庭にいるものだとしつけられ、労働現場から追いやられた。つまり、言葉は悪いが、「女性」は苦しい時には労働力として駆り出され、男性労働者が増えたら容赦なく切られる、派遣労働者のような「雇用の調整弁」だったのである。
これまでの日本の労働現場で、女性は文字通り「都合のいい女」だったのだ。
「外国人労働者に頼らざるを得ない」「女性の社会進出が必要不可欠だ」――。こういうインテリたちの言説を耳にするたびに、なぜかイラっとしていたのだが、最近になってようやくその理由が分かってきた。
「いったい何様?」というくらいの「上から目線」なのだ。
「国防婦人会」が結成され、家から飛び出した愛国婦人は、白い割烹着にタスキをかけ、街頭での「ぜいたく狩り」や、献金集め、病院での奉仕活動などさまざまな仕事にあたった。さらに、戦局が悪化して、本土の労働力が減少した中で、「行くぞ! 1億火の玉だ!」というスローガンのもとで、軍需工場などに駆り出された。
しかし、敗戦後、男たちが戦地から戻ると再び家庭にいるものだとしつけられ、労働現場から追いやられた。つまり、言葉は悪いが、「女性」は苦しい時には労働力として駆り出され、男性労働者が増えたら容赦なく切られる、派遣労働者のような「雇用の調整弁」だったのである。
これまでの日本の労働現場で、女性は文字通り「都合のいい女」だったのだ。
「外国人労働者に頼らざるを得ない」「女性の社会進出が必要不可欠だ」――。こういうインテリたちの言説を耳にするたびに、なぜかイラっとしていたのだが、最近になってようやくその理由が分かってきた。
「いったい何様?」というくらいの「上から目線」なのだ。
おじさんたちの活用を考えるのが筋
外国人にしろ、女性にしろ、環境整備されて「働きやすい社会」になれば、黙っていても勝手に働いてくれるに決まっている。それなのに口を開けば「活用だ」「生かしきれていない」など、ゲームの駒や便利アイテム扱いではないか。
というよりも、そんなに「人材の活用」を騒ぐのなら、まずは現状の社会システムの中で、生かしきれていないおじさんたちの活用を考えるのが筋ではないか。
意味なく長い会議、ハンコ文化、IT全盛のこの時代に領収書をペタパタ貼る経費精算、社内の人間関係を考慮したどうでもいい根回し、定期異動、年功序列、終身雇用……など人材活用を阻む「ムダ」が山のようにある。
こういうものを生産性向上のために徹底的に見直して、「何の仕事をしているのか、よく分らないおじさん」の能力を活用できた後に、それでも人手が足りないのなら、「じゃあ次は外国人ね」「女性にももっと活躍してもらいますか」となるなら分かる。
が、今の政策は現行の社会システムをほぼ変えないまま、むしろその社会システムを維持するために、外国人や女性につらいブラック労働をお願います、と言っているのと同じだ。虫が良すぎるにもほどがある。
専業主婦の皆さんに、「もっと社会で活躍すべきだ」なんて偉そうにお説教をする前に、まずは社会に出ているにもかかわらず、活躍していないおじさんたちの我が身を振り返るべきではないのか。
(窪田順生)
というよりも、そんなに「人材の活用」を騒ぐのなら、まずは現状の社会システムの中で、生かしきれていないおじさんたちの活用を考えるのが筋ではないか。
意味なく長い会議、ハンコ文化、IT全盛のこの時代に領収書をペタパタ貼る経費精算、社内の人間関係を考慮したどうでもいい根回し、定期異動、年功序列、終身雇用……など人材活用を阻む「ムダ」が山のようにある。
こういうものを生産性向上のために徹底的に見直して、「何の仕事をしているのか、よく分らないおじさん」の能力を活用できた後に、それでも人手が足りないのなら、「じゃあ次は外国人ね」「女性にももっと活躍してもらいますか」となるなら分かる。
が、今の政策は現行の社会システムをほぼ変えないまま、むしろその社会システムを維持するために、外国人や女性につらいブラック労働をお願います、と言っているのと同じだ。虫が良すぎるにもほどがある。
専業主婦の皆さんに、「もっと社会で活躍すべきだ」なんて偉そうにお説教をする前に、まずは社会に出ているにもかかわらず、活躍していないおじさんたちの我が身を振り返るべきではないのか。
(窪田順生)
ITmedia ビジネスオンライン