電撃的「カルロス・ゴーン」逮捕劇 “カリスマ”を裏切ったインド人執行役員の正体
まさに、電撃的に「ゴーン事件」の幕は開いた。
11月19日、東京地検特捜部は、金融商品取引法違反容疑で、日産自動車のカルロス・ゴーン会長(64)を逮捕。
11月19日、東京地検特捜部は、金融商品取引法違反容疑で、日産自動車のカルロス・ゴーン会長(64)を逮捕。
2010年度から14年度の5年間に役員報酬が約100億円だったにもかかわらず、その半分の約50億円しかなかったと、有価証券報告書に虚偽の記載をしたのである。
しかし、実は、それ以外にも、現在に至るまでの直近3年間で同じゴマカシをしていたのだ。
つまり、トータルで80億円である。
司法担当記者によれば、
「2010年に、年1億円以上の報酬を受け取る役員は、名前、金額などを有価証券報告書で開示することになりました。すると、ゴーンは高額報酬への批判をかわすため、年20億円の報酬を半々にし、日産から退任後にコンサルタントの契約料や退職の慰労金などの名目で年10億円を受け取ろうとした。しかし、金融商品取引法では、将来の報酬であっても、受け取り額が確定した段階で開示しなければならない。そのため、ゴーンは罪に問われることになったのです」
ならば、退任後の80億円はどうなるのか。
日産の関係者に聞くと、
「現状、その扱いは宙に浮いた格好です。いずれ、役員会で支払うかどうかを諮ることになる。しかし、退任後の80億円を記載しなかったことが逮捕容疑になっているわけですし、そのうえ、解任された会長への支払いに誰も賛成するはずがありません」
これまでの収入をあわせれば、軽く100億円を超える金満な老後が水泡に帰したというわけか。
しかし、実は、それ以外にも、現在に至るまでの直近3年間で同じゴマカシをしていたのだ。
つまり、トータルで80億円である。
司法担当記者によれば、
「2010年に、年1億円以上の報酬を受け取る役員は、名前、金額などを有価証券報告書で開示することになりました。すると、ゴーンは高額報酬への批判をかわすため、年20億円の報酬を半々にし、日産から退任後にコンサルタントの契約料や退職の慰労金などの名目で年10億円を受け取ろうとした。しかし、金融商品取引法では、将来の報酬であっても、受け取り額が確定した段階で開示しなければならない。そのため、ゴーンは罪に問われることになったのです」
ならば、退任後の80億円はどうなるのか。
日産の関係者に聞くと、
「現状、その扱いは宙に浮いた格好です。いずれ、役員会で支払うかどうかを諮ることになる。しかし、退任後の80億円を記載しなかったことが逮捕容疑になっているわけですし、そのうえ、解任された会長への支払いに誰も賛成するはずがありません」
これまでの収入をあわせれば、軽く100億円を超える金満な老後が水泡に帰したというわけか。
ターゲットはベイルートかリオか?
日本とフランスの国際問題に発展するリスクを顧みず、大捕物となった今回の逮捕劇。泣く子も黙ると言われた東京地検特捜部は早くも第2幕を用意している。
司法担当記者が言う。
「今回の逮捕容疑は金融商品取引法違反ですが、勾留期限となる12月10日を迎える前に再逮捕すると睨んでいます」
それこそ、特捜部が狙う本丸だという。
「ゴーン容疑者が私的に資金を流用したことで会社に損害を与えた特別背任罪での逮捕です。これが捜査の主眼になっており、立件を視野に検討されています」
元東京地検特捜部副部長の若狭勝氏が解説する。
「今回の事件では日産の幹部が司法取引に応じたとされています。すると、ゴーン追放のために日産が事件を仕立て、特捜部はそれに手を貸したと世間から見られかねない。そこで、会社を私物化した特別背任による逮捕ができれば、虚偽記載もそれが原因で起きたということになる。つまり、事件として、“据わり”が良くなるのです」
私的流用の一つと取沙汰されるのが、世界6カ所にある高級住宅だ。中でも、幼少時から高校までを過ごしたレバノンのベイルートと出生地であるブラジルのリオデジャネイロの住宅は日産の子会社に計21億円かけて購入させ、ゴーン容疑者とその家族が私的に使用していたとされる。だが、
「それらの住宅で商談をしていた、と主張されると、業務のために使用していたことになってしまいます。むしろ、リオのヨットクラブ会員権600万円相当の購入や、数千万円もの家族旅行、娘の大学への寄付に日産の資金が使われていたことの方が、業務に関係のない支出だとして、立件しやすい」(先の記者)
さらに、約17億円もの巨額な投資の損失を日産に転嫁したとも報じられたゴーン。いずれにせよ、フィナーレまでにひと波乱起きるのは必至である
司法担当記者が言う。
「今回の逮捕容疑は金融商品取引法違反ですが、勾留期限となる12月10日を迎える前に再逮捕すると睨んでいます」
それこそ、特捜部が狙う本丸だという。
「ゴーン容疑者が私的に資金を流用したことで会社に損害を与えた特別背任罪での逮捕です。これが捜査の主眼になっており、立件を視野に検討されています」
元東京地検特捜部副部長の若狭勝氏が解説する。
「今回の事件では日産の幹部が司法取引に応じたとされています。すると、ゴーン追放のために日産が事件を仕立て、特捜部はそれに手を貸したと世間から見られかねない。そこで、会社を私物化した特別背任による逮捕ができれば、虚偽記載もそれが原因で起きたということになる。つまり、事件として、“据わり”が良くなるのです」
私的流用の一つと取沙汰されるのが、世界6カ所にある高級住宅だ。中でも、幼少時から高校までを過ごしたレバノンのベイルートと出生地であるブラジルのリオデジャネイロの住宅は日産の子会社に計21億円かけて購入させ、ゴーン容疑者とその家族が私的に使用していたとされる。だが、
「それらの住宅で商談をしていた、と主張されると、業務のために使用していたことになってしまいます。むしろ、リオのヨットクラブ会員権600万円相当の購入や、数千万円もの家族旅行、娘の大学への寄付に日産の資金が使われていたことの方が、業務に関係のない支出だとして、立件しやすい」(先の記者)
さらに、約17億円もの巨額な投資の損失を日産に転嫁したとも報じられたゴーン。いずれにせよ、フィナーレまでにひと波乱起きるのは必至である
「カリスマ」を裏切ったインド人執行役員
実は、この逮捕劇の裏には、「カリスマ経営者」を裏切った側近がいた。
司法担当記者が解説する。
「そもそもの発端は、今春、日産の監査役に対し、内部告発が行われたことでした。それを受け、社内に極秘のチームが設けられ、数カ月にわたる内部調査が行われてきました。その過程で、最も事情を承知しているゴーンの側近2人から協力を取り付けることができた。そのうえで、日産がゴーン案件を特捜部に持ち込んで、捜査が開始されることになったのです」
ゴーンの側近2人には、この6月に施行されたばかりで国内2例目となる「司法取引」が適用された。その結果、捜査に協力する見返りに、罪が減免されることになったのだ。
まず、その一人目は、インド系イギリス人のハリ・ナダ専務執行役員である。
1990年、日産に入社し、その後、英国日産や本社の法務部門に長年勤務。昨年4月に専務執行役員に昇進すると、ゴーンが陣取る会長室や、法務室などの担当になった。
「ゴーンの金融商品取引法違反については、彼がまさに実行部隊でした。ゴーンとともに特捜部に逮捕された代表取締役のグレッグ・ケリーの指示を直接受け、報酬の過少記載に手を染めていたのです。また、オランダにある日産の子会社『ジーア』が、レバノンやリオなどの豪邸をゴーンに無償提供していたわけですが、その管理も任されていた。豪邸を取得するときなどは、ハリ・ナダ専務執行役員が契約の手続きを行っていたのです」(同)
もう一人は、2年前に日産と連合を組む三菱自動車に移った、大沼敏明理事だ。
日産時代はゴーンの側近として秘書室長を長らく務め、ゴーン用の豪邸を「ジーア」が購入すると、ハリ・ナダ専務執行役員と同様にケリーの指示に従い、本社からその代金を送金する役割を担っていたという。
この2人の捜査協力によって、ゴーンの数々の不正行為が丸裸になった。
「ゴーンの私的流用には呆れるほかありません。豪邸を無償提供させただけでなく、そこに設置する高級家具も日産に購入させていました。さらに、家族旅行の費用のつけを回していたり、リオにあるヨットクラブの会員権も支払わせていた。また、ゴーンの姉は無償提供されたリオの豪邸に住みながら、勤務実態もないのに日産との間でアドバイザリー契約を結んで、年間約10万ドルを手にしていたのです」(同)
ようやく、いまになって、銭ゲバのつけが回ってきたのだ。
司法担当記者が解説する。
「そもそもの発端は、今春、日産の監査役に対し、内部告発が行われたことでした。それを受け、社内に極秘のチームが設けられ、数カ月にわたる内部調査が行われてきました。その過程で、最も事情を承知しているゴーンの側近2人から協力を取り付けることができた。そのうえで、日産がゴーン案件を特捜部に持ち込んで、捜査が開始されることになったのです」
ゴーンの側近2人には、この6月に施行されたばかりで国内2例目となる「司法取引」が適用された。その結果、捜査に協力する見返りに、罪が減免されることになったのだ。
まず、その一人目は、インド系イギリス人のハリ・ナダ専務執行役員である。
1990年、日産に入社し、その後、英国日産や本社の法務部門に長年勤務。昨年4月に専務執行役員に昇進すると、ゴーンが陣取る会長室や、法務室などの担当になった。
「ゴーンの金融商品取引法違反については、彼がまさに実行部隊でした。ゴーンとともに特捜部に逮捕された代表取締役のグレッグ・ケリーの指示を直接受け、報酬の過少記載に手を染めていたのです。また、オランダにある日産の子会社『ジーア』が、レバノンやリオなどの豪邸をゴーンに無償提供していたわけですが、その管理も任されていた。豪邸を取得するときなどは、ハリ・ナダ専務執行役員が契約の手続きを行っていたのです」(同)
もう一人は、2年前に日産と連合を組む三菱自動車に移った、大沼敏明理事だ。
日産時代はゴーンの側近として秘書室長を長らく務め、ゴーン用の豪邸を「ジーア」が購入すると、ハリ・ナダ専務執行役員と同様にケリーの指示に従い、本社からその代金を送金する役割を担っていたという。
この2人の捜査協力によって、ゴーンの数々の不正行為が丸裸になった。
「ゴーンの私的流用には呆れるほかありません。豪邸を無償提供させただけでなく、そこに設置する高級家具も日産に購入させていました。さらに、家族旅行の費用のつけを回していたり、リオにあるヨットクラブの会員権も支払わせていた。また、ゴーンの姉は無償提供されたリオの豪邸に住みながら、勤務実態もないのに日産との間でアドバイザリー契約を結んで、年間約10万ドルを手にしていたのです」(同)
ようやく、いまになって、銭ゲバのつけが回ってきたのだ。
「週刊新潮」2018年12月6日号 掲載
新潮社