日本は"こんなに休みが多い

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これらの祝祭日と有給休暇を合わせた休暇日数合計を見ると、やはりフランスやスペインが39日など、ヨーロッパが上位を占める。日本は27日とランキングの中位に入る一方、米国は24日、アジア勢では、シンガポールは25日、韓国は17日と日本を下回る(図3)。
有休を取りにくい日本と米国、たっぷり休むヨーロッパ勢。この違いについて、山口氏は「仕事に対する使命感」にあるとみる。
「ヨーロッパでは不定期に4週間程度バカンスを取ることがよくあります。日本人のように休暇中も仕事のメールを気にする人はほとんどいません。『休むために働く』といったイメージです」
実際、山口氏は欧州系の企業で勤務していたとき、ヨーロッパ人との感覚の違いをまざまざと感じたという。ヨーロッパ人の責任者がバカンス中で不在のため、彼の承認が取れず、従業員の給料が遅延するかもしれない危機に見舞われた。なんとか遅延は免れたが、責任者の滞在先へ連絡をつけてもすぐにつかまらず、肝を冷やしたという。
それに比べて米国人は対照的だ。
「現場での肌感覚ですが、米国人ビジネスマンには『自分でなければ埒のあかない仕事がある』というプロフェッショナルな意識を持っている人が多い。実際、体調不良でも出社する人を多く目にしました」と山口氏は言う。
その背景には、米国の制度が影響している面もあるかもしれない。米国は先進国で唯一、有給休暇の保障がない国なのだ。米国の公正労働基準法では、有給休暇については規定がなく、雇用者と被雇用者間で取り決めることになっている。たとえ有給休暇の権利を持っていても、パフォーマンスが低迷すれば職を失うのではないかと不安を抱いたりすることも原因のひとつだろう。
「米国人エグゼクティブは、朝6時に出社して午後2時まで集中して働き、日の高いうちに帰ってプライベートを楽しむ人や、土日も仕事をこなしますが、翌週からはまるまる休んでメキシコで過ごすなど、自らハンドリングして部下やほかのチームが困らないように調整している姿をよく目にしました」
一方、日本人の有給休暇消化数が低い原因は米国とは異なるようだ。
有給休暇の取得に罪悪感を持つ人は米国では3割超、フランスでは2割超と少数派だが、日本では6割近くと過半数を超えている(図4)。日本では自分の仕事が終わっていても、同僚が終わっていなければ自分だけ休むのは反感を買ってしまわないかと、気にしてしまうのも一因だろう。
千葉商科大学の常見陽平氏は、日本人が上司や同僚の目を気にしてしまう背景について、「人に仕事をつける」のが日本型、「仕事に人をつける」のが欧米型だと説明する。
「『仕事に人をつける』モデルでは業務内容や責任を明確にできますが、『人に仕事をつける』モデルでは、ある人に複数の業務が紐づけられ、仕事の終わりが見えなくなります」
欧米では、契約によって自分の仕事が明示されるため、自分の担当の仕事以外はやらない傾向にある。なかでもヨーロッパでは残業規制や有休取得が法律で保障されているうえに、仕事に対する使命感が比較的薄いため、気兼ねなく有休を取る。米国については、自分の仕事に集中して取り組むが、それが終わればパフォーマンスに影響が出ない範囲で有休を取得するというメリハリがついたスタイルだといえるだろう。もちろん、日本の「人に仕事をつける」モデルにも、人員の増減や環境の変化にも柔軟に対応できるという長所がある。日本とヨーロッパ、米国とのあいだのどこかに日本が目指すべき休み方があるのかもしれない