<空港>JALはなぜ車いすを木製にしたのか

8/27(日) 11:00配信
毎日新聞
 日本航空(JAL)は7月から、木製の車いす80台を全国の空港に導入した。車いすというと金属製が普通だが、なぜ木製にしたのか。配備された車いすを取材してみた。【米田堅持】

【木製車いすと並んだ金属製車いす】

 まず一般的に車いすは機内持ち込みができないため、乗客はカウンターで手荷物として預けることになる。通常の車いすは自分でこぐための大きな車輪や肘掛けがついており、幅の狭い機内の通路を通ることができないためでもある。このため、カウンターから搭乗口までは航空会社が車いすを用意している。

 これまでJALが用意していた車いすはほとんどが金属製だ。そのため、保安検査で金属探知機をそのまま通過できず、乗客はボディーチェックを受ける必要があり、車いすの乗客からは負担になるという声が寄せられていた。木製にすれば、金属探知機をそのまま通ることができ、乗客の負担を減らすことができる。

 ◇強度とコストの両立求め

 金属探知機がそのまま通れる車いすとしては、JALは既に空港への導入事例としては世界初となる非金属性の竹製車いすを2011年に一部空港に配備しており、全日本空輸(ANA)も樹脂製車いすを16年4月に採用している。今回、竹でも樹脂でもなく木製にした理由について、開発を担当したキョウワコーポレーション(広島市)は、特注品で限られた数しか導入できなかった竹製はもちろん、金型が必要な樹脂製よりも初期投資が少ないうえ、木製であれば合板を整形してから削るため、顧客の細かなニーズにも柔軟に対応できるからだという。

 ◇従来とは異なる発想を

 さらに木製の車いすは、寄せられた声をもとに大胆にアレンジされている。従来の車いすは狭い機内に入れるように外側の大きな車輪が脱着可能な機構となっていたが、脱着作業には力が必要で女性が多い地上スタッフから改善を求める声もあがっていた。介添者や地上スタッフが車いすを押すことが多いことから、自走用の大きな車輪をやめ、肘掛けのみを脱着することで機内へ入れるようにした。

 今後は、機内には入れないが自走用の車輪を持つ木製の車いすの導入も予定している。

 ◇北欧家具のようなデザイン

 また、木製の車いすは、背もたれの赤が映える親しみのあるデザインが特徴で、キョウワコーポレーションは「主な部材にフィンランド産のシラカバを使用したこともあって、北欧家具のようでかわいいという声も寄せられている」と語る。

 デザインだけでなく機能性にもこだわりがある。座面下には手荷物置き場があり、足置きにはヒールが入る穴もある。背もたれは樹脂製で汚れにくく、座面のクッションは取りはずしが可能で手入れが楽になった。

 JALでは、羽田の約90台を含め、全国で約500台の車いすを使用しているが、18年度までに木製の車いすを250台配備することにしている。ただし、羽田空港の国際線ターミナルでは各社共通の車いすを使用するため、導入の予定はないという。【米田堅持】

最終更新:8/27(日) 13:54
毎日新聞