ガードナー賞:「びっくり。大変光栄」遠藤特別栄誉教授





 医学分野で重要な発見をした科学者をたたえるカナダのガードナー賞に選ばれた遠藤章・東京農工大特別栄誉教授(83)が30日、東京都小金井市の同大で記者会見し、「びっくりした。大変光栄」と喜びを語った。一方で「好きな研究を自分のペースでできない時代。若い研究者はかわいそう」と、日本の研究環境を憂えた。
 遠藤さんによると、米国と英国、カナダの研究者計5人がガードナー財団に遠藤さんの受賞を推薦し、1月18日に同財団から自宅に電話で受賞決定の連絡があったという。
 遠藤さんは製薬会社「三共」(現・第一三共)の研究員時代、6000種類のカビやキノコの培養液から、体内でのコレステロール合成を阻害する物質を探し続け、1973年、青カビから「コンパクチン」を発見。世界で毎日3000万人以上が服用するとされる高脂血症薬スタチンの開発につなげた。
http://img-s-msn-com.akamaized.net/tenant/amp/entityid/BBz2CHG.img?h=669&w=728&m=6&q=60&o=f&l=f&x=432&y=241© 毎日新聞 ガードナー賞受賞の喜びを笑顔で語る遠藤章・東京農工大特別栄誉教授=東京都小金井市で2017年3月…
 遠藤さんは会見で、当時は会社の上司から「お前たちが新薬を作れるとは思わない」と言われるほど成果を期待されていなかったことを明かし、「だから自由に、かえって熱心に夢中で研究できた」と振り返った。「泥臭い仕事をこだわってやっただけ。子供のころに野口英世に憧れて『人の役に立つ仕事がしたい』と思っていたが、これほどのインパクトは想像していなかった」と喜んだ。
 一方で、「私の研究はあの時代だからできた」とも。短期的な成果や産業応用が重視される近年の研究環境について、「今は地道な好きな研究が許されない。ノルマがあって余裕がない」と指摘。「イノベーション(技術革新)という言葉を使いすぎだ。あまり言わない方がイノベーションが生まれるんじゃないか」と語った。

【阿部周一】