【衝撃事件の核心】ホストクラブの女性客に売春強要…少女たちが陥った“地獄のスパイラル”
まさに、“鬼畜の所業”といえる犯行だった。ホストクラブの女性客に売春をさせていたとして、売春防止法違反容疑で東京都豊島区池袋、ホストクラブ経営、福島学容疑者(30)ら計9人が2月、警視庁保安課に逮捕された。飲食代を支払えない女性客を半ば監禁状態にし、売春させて売り上げを搾取しながら、さらに店での飲食も強要して借金を重ねさせていた。女性客の身ぐるみをはがす“地獄のスパイラル”の実態とは-。(荒船清太)
■「娘が監禁されている」…末期がんの母親、決死の通報で発覚
「娘がホストクラブでの借金のために売春をさせられています。監禁されているんです」
平成25年11月7日、東京都板橋区の女性からか細い声で、警視庁高島平署に通報があった。
娘のA子さんは20歳。17歳からJR池袋駅(豊島区)近くのホストクラブ「池袋ガールズコレクション」に通い詰め、未払いの飲食代を店に返済するために売春を強要され、メールで助けを求めてきたという。末期がんにおかされた女性の決死の通報だった。
事態を重視した高島平署などは翌8日、A子さんが住民基本台帳カードを発行するように指示され、板橋区役所に現れたところを見つけ、保護。直前に、偽造した給与明細を使って消費者金融で現金5万円を借り、全額を取り上げられていたと打ち明けた。
だが、それはA子さんが経験した“地獄”のほんの一端に過ぎなかった。同年9月からの約2カ月間、ほぼ監禁状態で約90人と売春させられ、売り上げの大半を借金のカタとして搾取されていたというのだ。
保安課は今年2月、売春防止法違反容疑で、ホストクラブ経営の福島容疑者のほか、同容疑者の母親の槌野幸枝容疑者(51)、知人で売春クラブ経営の丹生祥一郎容疑者(46)ら計9人の逮捕にこぎつけた。
偶然の出会いが“地獄”の始まり…「売春してカネを返せ」
A子さんの“地獄”の始まりは25年9月、都内の路上で偶然、丹生容疑者と出会ったことだった。この頃、A子さんは福島容疑者のホストクラブでの借金が125万円に膨らんでしまい、店から遠ざかっていたのだが、丹生容疑者に店に連れて行かれたのだ。
A子さんの姿を目にした福島容疑者はA子さんを殴りながら、こう言って怒りをあらわにしたという。
「カネが払えないなら、指を詰めろ。それが嫌なら売春して返せ」
威圧的な雰囲気の中で、A子さんに反論することはできなかった。店近くの寮に寝泊まりを強要され、丹生容疑者の経営する売春クラブ「シースルー」で毎日のように男性客に売春させられる日々が続いた。
10月末までにA子さんが相手をしたのは計68人で、136万円を売り上げた。その大半を福島、丹生両容疑者に取り上げられ、借金の返済に充てられたのはわずか22万円と計算された。だが、借金が減ったと考えることさえ、ぬか喜びだった。
■ボトル1本で最高120万円…支払い能力以上に飲食、16歳少女も餌食に?
福島容疑者は池袋駅近くで、ホストクラブ「池袋ガールズコレクション」と「アメンバー」の2店を実質的に経営していた。アメンバーではボトル1本で安くても8000円、最高で120万円の値が付けられ、毎月350万円を売り上げる人気店だった。
その半面、女性客20人に未払いの飲食代計530万円を借金として背負わせるなど、支払い能力以上に飲食をさせることでも悪名高かった。借金が膨れあがれば、返済を迫られるのが当然の流れだった。
A子さんが売春させられていた丹生容疑者の売春クラブ「シースルー」では、アメンバーに一時通い詰めていた16歳のB子さんが働いていたことも発覚した。B子さんは借金を完済していたが、捜査幹部は「最初は借金返済のために働かされていた可能性がある」と指摘するA子さんは売春させられている間も、ホストクラブでの飲食を強いられた。
福島容疑者の誕生日会が開かれた10月24日。無理やり店に連れてこられたA子さんの前には、福島容疑者に言われるままに次々と高級ブランデーが運ばれてきた。結局、A子さんの借金は、150万円に膨れあがっていた。
■母親宅で売春を継続、出会い系サイトで募集…「精神を完全に支配」
「丹生のところで働いても借金が減らないじゃないか! 今度は福島か山梨の風俗店で出稼ぎしてもらうからな」
誕生日会の3日後の同月27日、福島容疑者はA子さんに冷たく言い放ち、こう続けた。
「その間、俺の母親の家で寝泊まりして売春しろ」
丹生容疑者に売り上げの一部を取られるのが気に入らなかった福島容疑者は、実母である槌野容疑者のさいたま市の自宅を拠点に売春するように迫ったのだ。A子さんは槌野容疑者に渡された携帯電話を使い、出会い系サイトで売春相手を募集させられた。
11月8日に保護されるまでの約10日間に、1回2万円程度で約20人と性交渉し、売り上げの全てを福島、槌野両容疑者に渡していた。槌野容疑者らはA子さんに住基カードの交付を受けるように指示しており、消費者金融などでさらに借金をさせて搾取しようとしていたとみられる。
福島容疑者はかたくなに容疑を否認し続けているというが、保安課は、福島容疑者がA子さんの他にも法外な飲食代で借金を負わせた女性を売春させていたとみている。風俗関連の捜査に長年携わる警視庁幹部さえ、こう言って憤りを隠さない。
「A子さんは精神的に完全に支配されてしまっていたのだろう。人間の仕業とは思えない」