日本人の祖先による3万年前の航海を再現する国立科学博物館などのプロジェクトで、2そうの草舟が17日午前6時50分すぎ、沖縄県・与那国島南部のカタブル浜を出発した。
【映像ニュース】草舟、与那国島出発
帆はなく、7人ずつ乗り込んで1人がかじを取り、6人が木製のかいをこいだ。航海が順調なら、約75キロ離れた西表島西部のシラス浜に18日午後に到着する見込み。
安全確保のため、チャーター船が伴走した。無事成功すれば、来年7月には台湾から黒潮を越えて与那国島に渡る航海に挑戦する方針。
草舟は南米ペルー、ボリビア国境にあるティティカカ湖のアシ舟をモデルとして、与那国島に自生する丈夫な草「ヒメガマ」で作られた。長さ6.4メートル、幅1.3メートル程度。与那国島を意味する「どぅなん」号は同島で居酒屋を経営する入慶田本竜清さん(33)、「シラス」号は西表島のシーカヤック(レジャー用小舟)ガイド赤塚義之さん(37)がキャプテンを務める。
出発は12日朝の予定だったが、強風や高波のため延期を重ねた。出発前のミーティングで、赤塚さんが「理想通りのなぎの海ではないが、十分こげると思う。行きましょうか」と呼び掛けると、全員が「はい」と力強く答え、浜辺のテントから笑顔で草舟を運び出した。試しこぎをしてから気勢を上げ、沖合へこぎ出した。
プロジェクト代表で国立科学博物館人類史研究グループ長の海部陽介さん(47)は「ようやくスタートだ。3万年前の人々が何をしたのか知りたい」と話した。
こぎ手は平均35歳で、救命胴衣を腰に巻き、現代の服装と食料、水を用意。キャプテンは無線機で海部さんらと連絡を取り合うが、針路は太陽や星の位置などを手掛かりに決める。3万年前の集団移住を想定し、各舟のこぎ手のうち1人は女性が選ばれた。