高級Bluetoothイヤホン対決 便利で高音質なのはどれ?
1万~3万円クラスの高級製品のトレンドから紹介していこう。
注目モデルは、2016年3月に日本で発表された、スウェーデンのEARIN社による、その名も「EARIN」。イヤホン部以外のすべてをワイヤレス化したデザインは、まさにBluetoothイヤホンの理想型だ。
続いて1万円以上クラスでの一大派閥となるスポーツタイプのイヤホン。一般的な有線イヤホンとの違いは、耳の穴の形状にフィットするサポーター(名称は各社さまざま)が設けられており、ランニングやエクササイズのときに装着してもズレずに、快適に使うことができる。
スポーツタイプのイヤホンは首もとにリモコンが来るため電車内での操作には向かないが、手元のスマートフォンや携帯音楽プレイヤーで操作する人なら、電車内でも気にせず使えるはずだ。
1万円以上のヘッドホン製品は、ソニー、フィリップス、AKG、Beatsなど、既存のヘッドホンと近い音質をワイヤレスで体験できるだけでなく、ノイズキャンセルに対応するなど機能面でも強化が図られている。
今回紹介する8機種のイヤホン・ヘッドホンは、いずれも1万~3万円クラスの売れ筋・注目モデル。その実力を筆者(編集部注:AV評論家の折原一也氏)が評価した。各製品の音質に加えて、装着感、操作性なども含めたレビューをお届けしようランニング向きのソニー製品
コントロールボックスをなくしてイヤホンの左右をケーブルでつないだ、スタンダードなBluetoothイヤホン。
耳穴にフィットするアークサポーター構造、ネックバンド部のケーブルをまとめる調整バンドと、装着感を高める工夫がなされている。近距離無線通信技術のNFCによるペアリング対応、高音質コーデックであるAAC/aptX対応と隙がない。
【音質の傾向】
高域までシャープで、低音にもエネルギーのあるサウンド。J-POPなどのボーカル曲を聴くと歌声が際立ちメロディーラインは聞き取りやすいが、エレキギターのような演奏の情報はやや落ち気味。
イヤホン本体は大柄に見えるが、装着するとズレにくく心地良いフィット感で、ランニングなどスポーツ用でも安心して使えそうだ。
【5つ星評価】
■情報量 ★★★
■音の広がり ★★★★
■低音 ★★★★
■装着感 ★★★★★
■操作性 ★★★
JBL最高級ブランドのイヤホン
JBLの誇る最高級スピーカーブランド「EVEREST」の名前を冠した、同社初のBluetoothイヤホン。
世界最小クラスの高性能5.8mm径ドライバー搭載による小型のユニット。リモコン部は首もとに下がるような構造となっている。人間工学に基づいた「スタビライザー」(サポーター)付きの構造も特徴的だ。
【音質の傾向】
小型ドライバー搭載らしいハイスピードかつ、中高域にまで厚みを持たせたサウンド。中高域は声の帯域に比べて楽器寄りのため、J-POPなどのボーカル曲より、ジャズなどのインストゥルメンタル(器楽曲)系の音源の方がマッチした。
装着感については、イヤホン部が分厚くリモコンも耳もとに垂れ下がるため、好みが分かれるところだろう。
【5つ星評価】
■情報量 ★★★★
■音の広がり ★★★★
■低音 ★★★★
■装着感 ★★★
■操作性 ★★★
エクササイズ向けの高級モデル
スポーツ向けイヤホンの定番ブランド「JayBird X2」によるプレミアムワイヤレスイヤホン。
「SECURE-FIT」と呼ばれる耳のくぼみにフィットする構造、そして防汗仕様と、ランニング・エクササイズ向けの機能を網羅。スマホ用の専用アプリで、音質のイコライズもできる。
高級感あるパッケージと、耳穴に密着する低反発ポリウレタン製の「コンプライ」をふくむイヤーピースが全6種類と、オプションも豊富だ。
【音質の傾向】
耳穴にしっかりとフィットして密度のあるサウンド。高域までダイレクトに届くためシンバルなど金属音がよく響く。
低音もパワーがあり、十分なボリュームを確保している。空間再現性もよいが、J-POPなどボーカル曲の歌声はあまり前には出ずジャズなどのほうが向く。
装着した状態で体を動かしてみても、耳へのフィット感はさすが。ただ、首もとに垂れるタイプのリモコンの操作性はいまひとつだった。
【5つ星評価】
■情報量 ★★★★
■音の広がり ★★★★★
■低音 ★★★★★
■装着感 ★★★★
■操作性 ★★★
ワイヤレスイヤホンの左右のユニットにBluetoothの通信部やアンテナを内蔵。3.5gの超小型・超軽量を実現した、ケーブルが一切ない完全ワイヤレスタイプのイヤホン。
本体のみのバッテリー駆動時間は3時間だが、付属の収納用カプセルがモバイルバッテリーを兼ねるユニークな作りだ。ドライバーユニットはBA(バランスド・アーマチュア)型でコンプライイヤホンが付属、AAC/aptXにも対応している。
【音質の傾向】
ケースから取り出すと自動でBluetoothのペアモードになるなど、とにかくモノとしての作り込みに感心した一台。実機を手にすると、完全ワイヤレスの取り回しの良さに感心させられる。
音質は中高域の音情報も丁寧に癖なく鳴らすが、耳穴に深くフィットさせないと重低音はやや弱め。大きな弱点があるサウンドではないが、3万円超のイヤホンの音質としては、コスパはさほど良いわけではない。
【5つ星評価】
■情報量 ★★★★
■音の広がり ★★★★
■低音 ★★★★
■装着感 ★★★★★
■操作性 ★★★★
外音を効果的にカットするソニーヘッドホン
ソニーの展開する「h.ear」シリーズで5色展開の、ワイヤレス・ノイズキャンセル対応モデル。
ハイレゾ対応の音域40kHzまでをカバーした、大口径40mmユニットとぜいたくな設計。ソニーの開発した高音質コーデックの「LDAC」や、AAC/aptX対応と、高音質技術のサポートも幅広い。NFCによるペアリングにも対応する。
【音質の傾向】
J-POPやジャズなどを聴いても中高域の音情報が豊富で、オーケストラの空間表現の生々しさや、高域までのクリアな伸びに至るまで、今回聴いたBluetoothのイヤホン・ヘッドホンのなかで飛び抜けて良い音質で、素直に感心したモデル。重低音も締まりが良くダンス系の音源も余裕でこなす。
ノイズキャンセルの効果も、外音をカットし静寂にするほどに効果的。耳を包み込む柔らかなイヤーパットも絶品だ。
【5つ星評価】
■情報量 ★★★★★
■音の広がり ★★★★★
■低音 ★★★★★
■装着感 ★★★★★
■操作性 ★★★★
3万円超の機種では、ソニーの「h.ear on MDR-100ABN」の音質が素晴らしく良かった。今回はハイレゾ対応の「LDAC」の機能を使わずに試聴しているが、ヘッドホンとしての音質の良さからかワイヤレス再生の弱点を感じさせないほどで、サウンドのみで選ぶなら圧倒的トップだ。
一方、ライバルのBeats「Studioワイヤレス」は流行りの重低音サウンドなので、求めるサウンドの方向性に応じて選べるだろう。
最後に、今回レビューした8製品のなかでも驚きの超小型を実現したEARINは、文字通りイヤホン部以外のすべてがワイヤレスという、唯一無二の存在。収納カプセルがモバイルバッテリー機能を持つアイデアも素晴らしい。
Bluetoothイヤホンを選ぶ以上、やはり完全ケーブルレスの「EARIN」は外せない。携帯性まで考えられたコンセプトと、完成度が素晴らしい。音質は有線のイヤホンで追求して、ワイヤレスは利便性追求という人に特におすすめだ。
次点は高音質とBluetooth、より本格的なノイズキャンセルなど、バランスに優れたコスパ高機種としてフィリップス「SHB9850NC」、高音質派にはソニーの「h.ear on MDR-100ABN」を挙げたい。