「ポケモンGO」大ヒット、任天堂どれほど利益得るか
任天堂の運勢が突然好転したわけで、同社がポケモンGOから利益を得るとの投資家の期待感を反映している。ポケモンGOはスマホ向けアプリ。プレーヤーは現実世界を映したスマホの画面上に重ねて表示されるアニメキャラクターを探す。このアプリは無料でダウンロードできるが、プレーヤーがアプリ内でポケモンをおびき寄せる「おこう」などのアイテムを購入することによって売り上げが発生する。
このゲームの開発と販売を担うのは、非公開企業のナイアンティック(米カリフォルニア州)だ。同社は昨年、アルファベット傘下のグーグルからスピンアウトして誕生した。同社は昨年10月、株式会社ポケモン(東京)、グーグル、そして任天堂から2000万ドル調達したことを明らかにした。一定の節目を達成した場合は、追加で1000万ドルの出資を受けられる条件が付いている。新興企業ではよくあることだが、ナイアンティックも投資家による正確な出資比率を公表していない。
任天堂はナイアンティックを部分的に所有していることから利益を得る可能性がある。同社はまたポケモンの株式も32%保有している。ポケモンは長年、ポケモンのキャラクタービジネスを管理しており、自らが「ポケモンGO」のプロデューサーだとも述べている。さらに、任天堂自身も「Pokémon Go Plus」という35ドルの携帯デバイスを販売する計画だ。これはゲーム内でより簡単にポケモンを捕まえられるようにするものだ。
最後に、任天堂への間接的な利益もある。同社は今後、保有する「どうぶつの森」や「ファイアーエムブレム」といったシリーズのスマホ向けゲームの配信を始める。「ポケモンGO」での経験は、独自のスマホゲームをもっと大きな成功に導くヒントを同社に与えている公算が大きい。
JPモルガンのアナリスト、森はるか氏は、ゲームの売り上げのうち、アプリストアを運営するアップルないしグーグルの取り分を除外したゲーム収入をナイアンティックとポケモンが分け合うと想定している。森氏はアプリの月間収入が300億円の場合、通年の任天堂の利益が250億円増える公算が大きいと予測している。付属品として販売されるPokémon Go Plusは5000万個売れれば、ほぼ同程度の利益がかさ上げされるとみているという。
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3月に配信が始まった同社初のモバイルゲーム「Miitomo(ミートモ)」が期待外れだっただけに、ポケモンGOの人気は、それまで業績見通しへの懸念で落ち込んでいた任天堂株に待望の勢いを与えた。同社の従来型ゲーム機事業が苦戦するなか、モバイルゲーム進出にかかる期待は大きい。モバイルゲームは近年のビデオゲーム業界の成長の大半を占める。
ポケモンGOは、任天堂が32%の株式を保有する株式会社ポケモンと、グーグルの親会社アルファベットからスピンアウトしたナイアンティック社との共同プロジェクトだ。ゲームは米国、オーストラリアとニュージーランドで6日に配信がスタートした。ナイアンティックによると、予想以上の人気でサーバーに問題が生じているため、英国やオランダなどの国々での配信開始が遅れているという。
任天堂にとって爆発的に人気が出ることは珍しくない。今回の熱狂が続くようなら、新たな収益の扉が開く可能性がある。このゲームアプリは無料でダウンロードできるが、ゲーム内で使えるアイテムは販売されており、売り上げにつながる。例えば、ポケモンを捕まえるのに役立つボールは1ドル以上で販売されている。
ENLARGE 市場データ提供会社のアップ・アニーによると、配信が始まった国では、このアプリがダウンロード数と売り上げでトップになるのに1日もかからなかった。データ会社のシミラーウェブは11日、デーリーアクティブユーザー数で見ると、米国のアンドロイドユーザーの間ではツイッターを超えそうな勢いだと述べた。
長年のポケモンファンであるニュージャージー州クロスター在住のジョン・セオさん(25)は、ニューヨークのブルックリンで友人とこのゲームをしていたところ、若い女性がポケモンを捕まえているのを見た。2人はすぐに会話を始めた。「結局、彼女をデートに誘った。知らない人に会って、こんなに気持ちが通じ合ったように感じたことは今までにない」と話した。
カドカワの取締役で業界を長年観察してきた浜村弘一氏は「ポケモンGOは唯一無二のゲームだ。誰もが知る有名なキャラクターと、グーグルが支える最先端技術とを融合したものだからだ」と語る。グーグルと任天堂はともに、ポケモンGOを共同開発したナイアンティックに出資している。