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ハイエンドモデルに負けない贅沢仕様
iBasso Audio「DX80」レビュー。4万円台で高音質・多機能を両立したハイコスパDAP
折原一也
老舗が送り出す4万円台で高音質・多機能のハイコスパDAP、iBasso Audio「DX80」
ヒビノインターサウンド(株)が取り扱う“iBasso Audio”は、ポータブルオーディオプレーヤー、そしてポタアンの老舗として名を馳せるオーディオブランドだ。今回、同社から最新モデル「DX80」が実勢価格49,800円前後で発売された(関連ニュース)。高音質設計と多機能さ、見どころ豊富なニューモデルのレビューをお届けしよう。
DX80はDSDネイティブ再生に対応した最新のオーディオプレーヤーで、最大192kHz/24bitまでのWAV/FLAC音源に加えて、DSDは最大5.6MHzまで対応する。高音質へのアプローチとしての注目のポイントは、独立マスターオーディオクロックとしてSiTime社の水晶を使用しないシリコンベースMEMS発信機を2基搭載している点だ。
ハイエンドのデジタルオーディオの世界では、正確なマスタークロックの供給が高音質を実現する根幹として不可欠であることは、オーディオ好きなら周知の通りだろう。ポータブルオーディオでも採用例はあるが、それが10万円超のハイエンドクラスの製品ばかりであることを考えると、なかなか贅沢な作りと言える。
贅沢な高音質設計は、搭載したDACにも及んでいる。Cirrus Logic社の192kHz/24bit対応の「CS4398」を2基、モノラルモードで搭載。ヘッドホン出力のL/Rに各1基を割り当て独立駆動させることで、再生時のS/Nとダイナミックレンジを向上させ、ホームページで公開する114dB±1dB(32Ω負荷)のレンジを確保している。
正統派のオーディオのアプローチと言える、独立2系統クロックで左右モノラルDACの設計を、実売価格5万円以下で実現しているというのは正直驚きだ。
なお、DX80はDAPとしては珍しく内蔵メモリーは非搭載で、2基のmicro SDHC/SDXCスロットを搭載している。高音質に奢ったコストダウンの施策かもしれないが、今や秋葉原やネット通販では128GBのSDXCが数千円で売られているので特に困ることもないだろう。
■3.2型IPSタッチパネルのタッチUIと独立再生ボタンの手になじむ操作性
実際にDX80の実機を手にすると、63W×17H×120Dmmの手にフィットするサイズ感、178gの質量、メタルフレームの作り込みに、老舗であるiBasso Audioのプレーヤー/ポタアン開発の蓄積を感じる。なお、製品パッケージにはラバー製のカバーと画面保護フィルターも付属する。
アルバムジャケットの画面表示と選曲操作には480×900ピクセルの3.2型IPSタッチパネルを搭載。DX80のユニークなところは、多様する再生/一時停止、曲送り、曲戻しの3ボタンがタッチディスプレイの下に独立して搭載されている点だ。省エネのために再生中は自動的にバックライトがオフになるが(標準設定では5分)、画面が消えたままでも直感的に扱える。
http://www.phileweb.com/news/photo/review/20/2095/dx80_btm_thumb.jpg
タッチディスプレイの下に独立した再生/一時停止、曲送り、曲戻しの3ボタンを装備
タッチディスプレイの下に独立した再生/一時停止、曲送り、曲戻しの3ボタンを装備
UIの基本操作は、左右のスワイプ操作で対象を切り替えるスタイル。再生中のフォルダやアルバムを操作するホーム画面、「フォルダ」「アーティスト」「ジャンル」「アルバム」「プレイリスト」を選ぶ右スワイプ、各種設定を変更する左スワイプ、そして画面上部から引き出し設定を変更できる事を覚えておけば、まず迷わずに使えるだろう。
ボリュームボタンも独立して右側面に搭載しており、シンプルながら手に馴染み、使いやすい操作性を実現している。
http://www.phileweb.com/news/photo/review/20/2095/dx80_l_thumb.jpg
反対側の本体左側面には電源ボタン
緻密さとモニタ系の正確さを備えたクラスを超えた高音質
それでは音質レビューを始めよう。まずはSHUREのモニターヘッドホン「SRH440」で宇多田ヒカルの『花束を君に』を聴いてみると、その音情報の豊富さと緻密さを確かに引き出すサウンドがよく聴き取れる。特に歌声の気持ち良くシャープな声の立ち上がりと共に、ピアノの音の緻密さ、オーケストラの演奏という空間スケールを解像感志向のサウンドで引き出す。
藍井エイルの『IGNITE』を聴いても、突き上げる女性ボーカルの声を余裕の解像力で自然に鳴らし切り、音数豊富な曲への対応力も抜群に良い。エネルギー感を出しつつ制動の効いたチューニングで、モニターヘッドホンとの相性も抜群だ。
『スター・ウォーズ/フォースの覚醒 オリジナル・サウンドトラック』の『Main Title and The Attack on the Jakku Village』を聴くと、トランペットの躍動感あるサウンドもニュアンス豊かで、弦楽器の奏者の位置感まで把握できるほどである。特に曲後半、ジャクーの戦いパートに入るまでの音の起伏を鳴らし切るレンジ感と、音の刻みの鋭さも秀逸だ。
DSD音源ではDSD5.6MHz版の『Jazz at the Pawnshop』より『High Life』を聴くと、サックスの音が鳴る空間、その音の粒立ちの良さ、奏者の姿が目の前に迫るような音の刻みの鋭さに圧倒される。
なお、DX80には音質関連のカスタマイズとして「high/low」2段階のゲイン(初期値はhighだが試聴の際にはlowに変更している)を備えるほか、Digital Filterの設定として「Slow Roll-off/Sharp Roll-off」(初期値は後者で、今回は後者で試聴)を切り替えられる。より緻密で音場志向を目指すなら「Slow Roll-off」だが、音情報の生々しさと情報量を求めるなら「Sharp Roll-off」を推奨する。
■イヤホンはもちろんハイエンドヘッドホンも駆動
プレーヤーとしてのサウンドキャラクターが精緻なモニター系は、特に高域までレンジの広い曲が得意で、音数豊富な音も余裕で緻密なサウンドとして引き出すため、イヤホンを変えても音源とイヤホンの相性を良く引き出してくれる。
イヤホンをオーディオテクニカの「ATH-CKR10」に変えると、ハイレゾの高域再生をテーマにした鋭く突き刺さるサウンドキャラクターを、持ち前の緻密な情報量と高域まで丁寧な音再現で鳴らし切る。特にプレーヤーによっては雑な音になりがちな『IGNITE』のボーカルとバンド演奏を、音情報を引き出し正しくならし切った再現力には感心した。
最大出力も260mW+260mW(32Ω)と大きく、OPPOのヘッドホン「PM-3」もゲインを「Low」のままで駆動でき、どこまでも緻密な情報と音場感たっぷりに鳴らす。特に『スター・ウォーズ/フォースの覚醒 オリジナル・サウンドトラック』では音の繋がりとオーケストラの空気感の再現が抜群に良く、映画音楽らしいダイナミズムと共に、オーディオ的な情緒感も豊かなサウンドとなった。
■PCとUSB接続、光/同軸対応の「SPDIF」とインターフェースも豊富
もう一つ、DX80のデジタルオーディオプレーヤーとして面白いところは、周辺機器としての接続の豊富さだ。
DX80の本体をぐるりと見ると、本体下面の通常のヘッドフォン出力の隣には3.5mmステレオミニによる「LINE OUT」、本体上面には3.5mm光/同軸コンボの「SPDIF」、そしてmicro USBによるPC接続ではUSB DACとしての機能までも備えている。
今回実際に試したのはmicro USBによるPC接続で、PC接続時には「READER」「DAC」「CHAGE ONLY」を切り替えて使用できる。Windows環境ではiBasso本社のサイトからドライバーをダウンロードすると、PCからUSBオーディオデバイスとして認識し、「foobar2000」などの再生ソフトからハイレゾ音源の出力に使用することもできた。
サウンドはポータブルプレーヤーとして試聴したものと同じ曲を一通り聴いてみたが、再生元のPCの影響を受けることもあり、DX80単体の再生で聴いたサウンドとはひと味違うが、高域までエネルギッシュでレンジ感のあるサウンドを継承している。ふだんはDX80をPCと接続してUSB DAC/ヘッドホンアンプとして使いつつ、外出時にはDAPとして使い倒すスタイルも可能だろう。
DX80を一通り使ってみて気付くのは、この音質、このスペックで実売価格49,800円というコスパの素晴らしさである。特に音質面では、独立クロック内蔵による音情報を緻密さと情報量たっぷりに引き出すモニター系の素性の良さ、そして左右モノラルDACによる優れたセパレーションと音場表現から引き出されるピュアな音性能をみても、明らかに上のクラスに比肩する水準にある。それでいてPCとのUSB-DAC接続、光/同軸デジタル端子でポタアンともつなげられる接続性の良さも持ち合わせている。
5万円クラスで音質と共に接続性を兼ね備えたポータブルオーディオプレーヤーを探す人なら、一度は音質と使用感を体験してみてほしいモデルだ
http://www.phileweb.com/review/article/201606/15/2095_2.html
反対側の本体左側面には電源ボタン
緻密さとモニタ系の正確さを備えたクラスを超えた高音質
それでは音質レビューを始めよう。まずはSHUREのモニターヘッドホン「SRH440」で宇多田ヒカルの『花束を君に』を聴いてみると、その音情報の豊富さと緻密さを確かに引き出すサウンドがよく聴き取れる。特に歌声の気持ち良くシャープな声の立ち上がりと共に、ピアノの音の緻密さ、オーケストラの演奏という空間スケールを解像感志向のサウンドで引き出す。
藍井エイルの『IGNITE』を聴いても、突き上げる女性ボーカルの声を余裕の解像力で自然に鳴らし切り、音数豊富な曲への対応力も抜群に良い。エネルギー感を出しつつ制動の効いたチューニングで、モニターヘッドホンとの相性も抜群だ。
『スター・ウォーズ/フォースの覚醒 オリジナル・サウンドトラック』の『Main Title and The Attack on the Jakku Village』を聴くと、トランペットの躍動感あるサウンドもニュアンス豊かで、弦楽器の奏者の位置感まで把握できるほどである。特に曲後半、ジャクーの戦いパートに入るまでの音の起伏を鳴らし切るレンジ感と、音の刻みの鋭さも秀逸だ。
DSD音源ではDSD5.6MHz版の『Jazz at the Pawnshop』より『High Life』を聴くと、サックスの音が鳴る空間、その音の粒立ちの良さ、奏者の姿が目の前に迫るような音の刻みの鋭さに圧倒される。
なお、DX80には音質関連のカスタマイズとして「high/low」2段階のゲイン(初期値はhighだが試聴の際にはlowに変更している)を備えるほか、Digital Filterの設定として「Slow Roll-off/Sharp Roll-off」(初期値は後者で、今回は後者で試聴)を切り替えられる。より緻密で音場志向を目指すなら「Slow Roll-off」だが、音情報の生々しさと情報量を求めるなら「Sharp Roll-off」を推奨する。
■イヤホンはもちろんハイエンドヘッドホンも駆動
プレーヤーとしてのサウンドキャラクターが精緻なモニター系は、特に高域までレンジの広い曲が得意で、音数豊富な音も余裕で緻密なサウンドとして引き出すため、イヤホンを変えても音源とイヤホンの相性を良く引き出してくれる。
イヤホンをオーディオテクニカの「ATH-CKR10」に変えると、ハイレゾの高域再生をテーマにした鋭く突き刺さるサウンドキャラクターを、持ち前の緻密な情報量と高域まで丁寧な音再現で鳴らし切る。特にプレーヤーによっては雑な音になりがちな『IGNITE』のボーカルとバンド演奏を、音情報を引き出し正しくならし切った再現力には感心した。
最大出力も260mW+260mW(32Ω)と大きく、OPPOのヘッドホン「PM-3」もゲインを「Low」のままで駆動でき、どこまでも緻密な情報と音場感たっぷりに鳴らす。特に『スター・ウォーズ/フォースの覚醒 オリジナル・サウンドトラック』では音の繋がりとオーケストラの空気感の再現が抜群に良く、映画音楽らしいダイナミズムと共に、オーディオ的な情緒感も豊かなサウンドとなった。
■PCとUSB接続、光/同軸対応の「SPDIF」とインターフェースも豊富
もう一つ、DX80のデジタルオーディオプレーヤーとして面白いところは、周辺機器としての接続の豊富さだ。
DX80の本体をぐるりと見ると、本体下面の通常のヘッドフォン出力の隣には3.5mmステレオミニによる「LINE OUT」、本体上面には3.5mm光/同軸コンボの「SPDIF」、そしてmicro USBによるPC接続ではUSB DACとしての機能までも備えている。
今回実際に試したのはmicro USBによるPC接続で、PC接続時には「READER」「DAC」「CHAGE ONLY」を切り替えて使用できる。Windows環境ではiBasso本社のサイトからドライバーをダウンロードすると、PCからUSBオーディオデバイスとして認識し、「foobar2000」などの再生ソフトからハイレゾ音源の出力に使用することもできた。
サウンドはポータブルプレーヤーとして試聴したものと同じ曲を一通り聴いてみたが、再生元のPCの影響を受けることもあり、DX80単体の再生で聴いたサウンドとはひと味違うが、高域までエネルギッシュでレンジ感のあるサウンドを継承している。ふだんはDX80をPCと接続してUSB DAC/ヘッドホンアンプとして使いつつ、外出時にはDAPとして使い倒すスタイルも可能だろう。
DX80を一通り使ってみて気付くのは、この音質、このスペックで実売価格49,800円というコスパの素晴らしさである。特に音質面では、独立クロック内蔵による音情報を緻密さと情報量たっぷりに引き出すモニター系の素性の良さ、そして左右モノラルDACによる優れたセパレーションと音場表現から引き出されるピュアな音性能をみても、明らかに上のクラスに比肩する水準にある。それでいてPCとのUSB-DAC接続、光/同軸デジタル端子でポタアンともつなげられる接続性の良さも持ち合わせている。
5万円クラスで音質と共に接続性を兼ね備えたポータブルオーディオプレーヤーを探す人なら、一度は音質と使用感を体験してみてほしいモデルだ
http://www.phileweb.com/review/article/201606/15/2095_2.html