【特別企画】4K/HDRからピュアオーディオまで
パナソニックが『VGP』総合金賞・批評家大賞を独占! 審査員・鴻池賢三が語る高評価のポイント
鴻池賢三
AV機器のアワード「VGP2016 SUMMER」において、パナソニックの4K/HDRへの取り組みが総合金賞を受賞。また、同アワードの批評家大賞の映像部門をUHD-BDプレーヤー「DMP-UB900」が、音響部門をテクニクスブランドのアナログターンテーブル「SL-1200G」が受賞し、主要賞でパナソニック製品が大きな存在感を示した。いったいどのようなポイントが評価されたのか? VGPの審査員を務める評論家の鴻池賢三氏が解説する。
■販売店と評論家が優れた製品や取り組みを選出するアワード「VGP」
2001年に発足し15年の歴史を持つオーディオ・ビジュアル界のアワード「VGP」。日本を代表する量販店と批評家の投票によって優れた製品や取り組みを選出する、年に二度のビッグイベントだ。
VGPの特色は、発売前の製品も含め、専門家が新製品をいち早くチェックし、将来性も見据えて評価を行っていること。つまり、トレンドを先取りし、優れた製品をエンドユーザーに伝えらることができるユニーク取り組みだ。事実、過去のVGP受賞製品の多くは、ヒットモデルとしてトレンドリーダーの役割を果たしてきた。
そのVGP最新回が「VGP2016 SUMMER」なのだが、VGP史上初の偉業とも言える快挙が発生した。最高3賞にあたる批評家大賞(映像部門)、批評家大賞(音響部門)、総合金賞の全てを、パナソニックが独占する結果となったのだ。
この記事では審査員の1人である筆者が、こうした結果に至った経緯を、それぞれの賞の審査過程や、評価ポイントを交えて解説する。そこからは、最新のAVトレンドと未来も見えてくるはずだ。
VGP審査員のひとり、評論家の鴻池賢三氏が受賞に至った背景を解説
■VGP主要賞をパナソニックが独占
今回パナソニックは、Ultra HD Blu-rayプレーヤー「DMP-UB900」が批評家大賞(映像部門)を、テクニクスブランドのアナログターンテーブル「SL-1200G」が批評家大賞(音響部門)を、そして、数多くの優秀な製品による4KとHDRへの積極的な取り組みに対し「総合金賞」が授与された。
ビエラやディーガの様々な製品での4K/HDRへの取り組みに対してVGP総合金賞が与えられた
各賞の受賞意義を正確にお伝えするため、まずは、各賞の位置付けを解説したい。
批評家大賞は、VGP審査員を務める批評家8名が最も優れていると考える製品を3モデル推挙し、最終的に1モデルが選出される。評論家各氏にはそれぞれの思想があり、評価ポイントも異なる。
映像部門での批評家大賞を受賞した「DMP-UB900」
音響部門での批評家大賞を受賞したテクニクス「SL-1200G」
例えば絶対的な映像や音のクオリティー、革新性、機能性や使い勝手、コストパフォーマンスなど様々で、個性ある複数の批評家により、バランスが担保される。もちろん投票の多いモデルが大賞に近づくが、各氏が推奨理由を述べた後に討論を行い、最終的に合議で1モデルが選出される。即ち、厳しい審美眼を持つ批評家家が総力で選ぶ1台なのだ。
「総合金賞」については、批評家が討論によって最新トレンドを精査してテーマを設定。そのテーマに沿う製品をピックアップし、メーカー毎に集計した投票総数により結果が自動的に弾き出される。評価は機械的な側面を持つが、言い換えると販売店の得票も含む普遍性という点で、批評家大賞と並ぶ最高賞と言える。
◆批評家大賞(映像部門):「DMP-UB900」
本賞の対象となるのは、テレビ、プロジェクター、プレーヤー、AVアンプなど幅広い。ジャンルを問わず、ハイクオリティーな映像を実現した機器が選出されると考えて良い。
今回の審査では、HDR対応のプロジェクターやテレビといった映像装置も推挙されたが、審査員である批評家全員がDMP-UB900を推し、希に見る満場一致で批評家大賞に選ばれた。
評価ポイントは批評家各氏で違いがあるが、共通点としては、
(1)フラッグシップモデルであるDMR-UBZ1に加え、UHD BDを高品位で再生できる製品を追加ラインナップし、ユーザーの楽しみを広げられる可能性を持つこと
(2)DMR-UBZ1に遜色無く、さらに最新のチューニングを施した高品位な画質を実現していること
(3)音質面での注力など趣味性の高い魅力を備えていること
…などと言えるだろう。もちろん、AVマニアが熱望する再生専用機を日本でも発売に踏み切った同社の積極的な取り組みを評価する声も多かった。
補足として詳細を述べると、筆者も審査に際して実際に視聴したが、色のキレによる情報量の多さと解像度の高さは圧巻。
これは規格上、4K映像を表示する上で必須となる4:2:0(明暗の解像度に対し、色情報は1/4に間引いてデータ量を小さくする圧縮手法の1つ)の復元にDMR-UBZ1と同じ高精度なマルチタップ処理「4Kリアルクロマプロセッサplus」を採用しつつ、最新の知見に基づいて最適化されている事による。
独自の「4Kリアルクロマプロセッサplus」で4K/HDR映像を最適化
物量ではUBZ1に及ばないが、結果としての映像は同等、あるいは一歩リードしていると感じる部分もあった。また音質面でもオーディオグレードの設計とこだわりが詰まっていて、CD再生やネットワーク再生も、専用コンポーネントとして通用する純度に感心した。
◆批評家大賞(音響部門):テクニクス「SL-1200G」
本賞の対象は「音を扱う製品全て」と非常に幅広い。デジタルやアナログ、ピュアオーディオやマルチチャンネル、据え置きやポータブルを問わず、実質制限はない。時にはテレビが推挙されるケースもあるほどで、本賞を勝ち抜くにはクオリティー面での実力に加え、突出した提案性や存在感も必要になる。オーディオの今を象徴し、未来を占うような歴史的モデルが選ばれると考えて相違ないだろう
今回は注目すべきモデルが多数エントリーするなか、大半の審査員が本機を推挙するに至り、異議無く批評家大賞に輝いた。推挙の理由や注目点は、審査員各氏によって多少の差異があるが、まとめると概ね次の通りと言える。
(1)アナログブームが再燃する中、懐古主義に陥らず、テクニクス伝統のダイレクトモーターを更に発展させ、オリジナリティー溢れる製品を投入した
(2)新規開発したコギングを生じないコアレスモーターと、BDで培った高精度な制御技術により、新次元の高音質を実現した
(3)テクニクスを象徴するターンテーブルの復活は、業界やファンにとっても明るいニュースとなった
筆者の聴感としてもS/Nの向上は明らかで、伝統技術と最新技術の融合の妙を見た。将来、レコード再生に新たな局面をもたらした名機として語り継がれるに違いない。
◆総合金賞:パナソニック 4K/HDRワールド
今回のVGPで総合金賞を選考するにあたり、4K/HDRがテーマに据えられた。理由は、4Kは既に定着フェーズに入っているが、HDR対応の映像装置、コンテンツ、そしてUHD BD再生装置がようやく出揃い、実際の視聴を通じて、ダイナミックレンジ拡大による画質向上効果は明白なものと証明されたからだ。そのインパクトはフルHDから4Kへの移行を遙かに上回るもので、4K/HDRの素晴らしさを広く知らしめることは、AVファンをはじめとするユーザーに有益と考えたからに他ならない。
広色域でさらなる映像美を実現できる4K/HDRがVGP総合金賞の選考テーマになった
審査に際しては、テーマに基づいて該当製品ジャンルを決定し、エントリーされた製品への投票数をメーカー毎に集計して自動的に弾き出すと述べたが、その源泉となるのは、トレンドを創出する先見性と企画力、規格化にも貢献する先行開発能力、ハイクオリティーな該当製品を多く送り出すメーカーとしての基礎体力や技術力と言える。まさにメーカーとしての総合力が問われるのだ。
今回総合金賞に輝いたパナソニックは、批評家大賞を獲得したUltra HD Blu-rayプレーヤー「DMP-UB900」のほか、より身近な価格を実現した「DMP-UB90」、さらには昨年11月に発表したレコーダーのプレミアムモデル「DMR-UBZ1」もラインナップし、より幅広いユーザーにUltra HD Blu-rayに接するチャンスをもたらしたという意味でも他社を圧倒した。
http://www.phileweb.com/news/photo/review/21/2109/DMR-UB90_thumb.jpg
普及機「DMP-UB90」も4K/HDRに対応。より手軽に4K/HDR体験を入手できる
普及機「DMP-UB90」も4K/HDRに対応。より手軽に4K/HDR体験を入手できる
ほか、液晶テレビ“VIERA(ビエラ)”は、「DX950」「DX850」「DX770」「DX750」の4シリーズ10モデルと充実したラインナップで4K/HDRに対応し、それぞれが個性的な機能を備えて好評を得た。特に「DX950シリーズ」は高輝度でダイナミックな映像によってHDRの醍醐味を示すなど、部門金賞にも輝いている。
最新のフラグシップ機「DX950シリーズ」を始め、ビエラは幅広いモデルが4K/HDRに対応している
他社に先駆けてUHD BDプレーヤーを製品化し、さらにラインナップも充実。ビエラと併せて4K/HDRワールドを幅広いユーザーに提案する積極的な姿勢は、世界を見渡しても唯一無二の存在と言え、世界に誇るべき総合金賞に相応しいメーカーと言える。今後も同社が業界の牽引役として、ユーザーを楽しましてくれることを願って止まない。
■「パナソニック3冠は長年の取り組みが結実したもの」
今回、パナソニックが最高3賞を独占したのは、単なる偶然ではなく、同社の長年の取り組みが結実したものと考えている。パナソニックの歴史を紐解けば、Panasonicブランドは、“Pan(汎、あまねく)”と“Sonic(音)”という言葉を組み合わせであり、「広くあまねく」という理念が込められている。
事実、先進的な取り組みを行いつつ、ハイエンドユーザーからエントリーユーザーの幅広い期待に応える数少ないメーカーであり、今回のVGPでもUHD BD/4K HDRでの先進性と幅広いラインナップ、テクニクス「SL-1200G」による趣味性の高い分野での活躍を見せつけた。今後も同社が業界の牽引役となり、趣味としてのAVの飛躍を期待したい。






