「新しい取り組み、より良い手法」はすべてテクノロジーだ


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http://forbesjapan.com/articles/detail/12331/3/1/1


我々はスマートフォンを手に、アプリ一つで音楽を聴き、動画を観て、 SNSで誰とでも気軽につながることができる。確かに、世の中は便利になった。しかし、1969年にアポロ11号のニール・アームストロング船長が人類史上初の月面着陸に成功してから早や47年。当時、SF小説で描かれた、空飛ぶ自動車や宇宙旅行はいまだに実現していない。

いま、そんな「停滞」を打ち破ろうとしている人たちがいる。シリコンバレーを中心に成功した富豪起業家たちである。ペイパル共同創業者のイーロン・マスクやピーター・ティール、アマゾンのジェフ・ベゾスらがIT分野での成功で得た富を、宇宙開発や延命技術などの壮大なプロジェクトに注ぎ込んでいるのだ。

4月には、マスクのスペースX社とベゾスのブルーオリジン社が相次いでロケットの垂直着陸を成功させている。ロケットの再利用が可能になれば、打ち上げのコストと時間が削減でき、衛星の打ち上げ、宇宙探索、国際宇宙ステーション(ISS)を使った宇宙空間での実験などに資金と時間を有効に投じることができる。遠からず我々一般人の宇宙旅行も可能になる。また、宇宙関連企業の勃興により、宇宙を舞台にした新たなエコシステムも生まれるはずだ。

変化は地上でも起きている。アメリカの西海岸や欧州では、時速1,200kmで走る超高速鉄道の計画が進んでおり、線路の敷設も始まった。昨今、無人自動車への関心が高まっているが、すでに可変飛行型自動車を開発している会社もある。

「問題は技術にではなく、ビジネスモデルや社会など別のところにある」と、超高速鉄道「ハイパーループ」を開発中のダーク・アルボーンは話す。

社会問題に向き合う姿勢こそがイノベーターの本質であり、技術は手段に過ぎず、その限界を“言い訳”に使うべきではないと考えているのだ。こうした革新者の登場により、テクノロジーの進化は加速し、それが同時にビジネスモデル自体を進化させる。そして、社会の仕組みそのものにさらなる地殻変動を起こすことになるだろう。

とはいえ、多くの企業には既存のビジネスがあり、スタートアップのようにゼロから何かを始めるのは容易ではない。それでいて、マインドセットを変えなければ、21世紀を生き残るのは難しい。


では、「テクノロジーの未来」に企業はどう対応すればよいのだろうか。世界各国の企業のCIOやCTOで構成されるフォーブス・テクノロジー・カウンシルでは、以下のような提言をしている。

1. 未来を見据えて採用せよ

多くの企業は、現在のニーズに従って人を採用しがちだ。むしろ、大切なのはクリエイティブ(創造性豊か)な人材や好奇心旺盛な人々を採ること。「遠い未来」も気づけば、すぐそこに来ていたりする。だからこそ、時代の変化に適応できる組織づくりと人材育成が重要である。

2. 後追いになることを恐れるな

直観に反するかもしれないが、最新のテクノロジーに飛びつくのは禁物だ。未来でも生き残りたいのなら、長期的な戦略が必要となる。技術は日進月歩であり、その多くは失敗に終わる。なので、競合を生贄にすればよい。他社が欠陥を見つけ、別の方策を試せば、不要な開発をせずに済む。その多くが次第に淘汰され、業界リーダー候補が出てくるはず。そのときを狙うのがよい。

3. 組織や体制をオープンに

製品や事業内容、システムを開かれたものにすることで、さまざまな顧客の注文に対応できる。また、そうすることで柔軟なビジネス戦略を取れるはずだ。

4. アイデアは記録し、抽象化せよ

あらゆるものを記録しよう。人の記憶は曖昧なものだ。アイデアのきっかけや取り組みを保存しておけば、それを未来への道標にできる。また、アイデアの抽象化も有効だ。アイデアの真髄を理解し、磨く手掛かりとなる。

5. 業界トップレベルを基準にせよ

どんなプロジェクトを進めるときも、亜流は避け、必ず業界で最高のものを基準にすること。変化が必要になっても、根幹がしっかりしていれば対応できる。

6. 変化を受け入れること

約束された未来などない。技術は進歩し、人々のニーズや嗜好も変わる。どのみち、変化は訪れるのだ。それならば、常に変化に対応できるよう、柔軟なシステムや組織にしたほうがいい。

7. 未来を念頭に開発せよ

プロダクトやサービスを開発しているとき、未来の変化にも対応できるよう試すこと。

8. 従来のビジネス思考は通用しない

かつてはシステムや組織をつくるとき、長期間耐えられるように設計をしたものだ。しかし、もうその時代は終わった。これからは絶え間なく訪れる変化に柔軟に対応できる適応力がカギとなる。



ここで注意したいのは、ITだけがテクノロジーだけではない、という点だ。70年代以降の世界を牽引してきたIT革命の価値はいまさら語るまでもない。

だが、ノンフィクション作家のスティーブン・ジョンソンがいうように、我々は現在も、「昔と変わらない技術革新の時代を生きている」。技術革新はどの時代にも起きているのだ。時と場所により、その形が異なるだけである。

前出のティールも「テクノロジーはコンピュータに限らない。正しくは、ものごとへの新しい取り組み方、より良い手法はすべてテクノロジーだ」と述べている。

この特集にはITやロボット工学、ドローン、人工知能などテクノロジーの最前線に立ち、最新技術を知悉する専門家たちが登場する。だが、彼らが性能などの技術論ではなく、「人間」について多くを語ることに驚くかもしれない。

テクノロジーを使い、社会を進化させるのは他ならない人間なのだ。


文=フォーブス ジャパン編集部