竹ノ塚駅越す最初の高架完成




 2005年3月に4人が死傷した東武伊勢崎線(スカイツリーライン)竹ノ塚駅付近の「開かずの踏切」を解消する連続立体交差事業のうち、下り急行線の高架橋が完成し、5月29日の始発から列車が走った。


2012年11月に着工した事業全体のなかで、高架橋への線路移設は初めて。事業の進捗は3割ほどだ。今後、仮設地下通路の掘削工事などを実施したうえで残りの線路の切り替えを繰り返しながら、2020年度に全ての高架化完了を目指す。


5線を横断する踏切、撤去へまず一歩

 竹ノ塚駅付近は、上りと下りの急行線と緩行線に加え、東京メトロの車両基地に向かう車庫線の計5線が通る。複々線の区間だが地上に線路があり、朝晩のピーク時には1時間当たり延べ57分間も遮断される「開かずの踏切」だ。



事故は05年3月に起こった。当時は手動式の踏切で、踏切保安係が操作を誤って遮断機を上げ、2人が列車にはねられて死亡、近くにいた2人がけがを負った。踏切保安係は業務上過失致死傷罪の実刑判決を受けた。

 この事故後、東武鉄道と東京都、足立区は協議のうえ、遮断機を自動化し歩道を拡幅するなど再発防止に努めた。しかし、問題の根本的な解決には、立体交差化して踏切を撤去するしかない。



区自ら事業主体に、初のケース

 実は、足立区は事故発生前から高架化を模索していた。地元住民や議員連盟と連携しながら事業の早期開始に向けた検討を加速。東京都の特別区が事業主体となって連続立体交差事業を実施する初めてのケースとなった。
(関連記事:4人死傷の「開かずの踏切」解消へ東武伊勢崎線を高架化

 従来は都道府県と政令市に限られていた事業主体が05年度から特別区などにも拡大されたことから、区が自ら事業を実施することが可能になったのだ。

 事業の対象は東武伊勢崎線西新井駅―谷塚駅間のうち、竹ノ塚駅を含む約1.7kmの区間で、事業費は約544億円。このうち足立区が約456億円(うち国費約250億円・都費約102億円)、東武鉄道が約88億円を負担する。



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駅北側の「小踏切」。2020年度まで事業は続く(写真:日経コンストラクション)




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竹ノ塚駅付近の完成イメージ(資料:足立区、東武鉄道)
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今回の下り急行線の高架化によって、踏切の遮断時間はその分だけ短くなる。4人が死傷した駅南側の「大踏切」と、北側の「小踏切」の計2カ所が撤去されるのは20年度の予定だ。



京王線など全国で立体交差化が加速

 竹ノ塚駅付近で起こった踏切事故は、全国の開かずの踏切を解消する立体交差事業を加速するきっかけとなった。

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さらに、16年4月に改正された踏切道改良促進法に基づいて、全国17都道府県の計58カ所の踏切を「改良すべき踏切」に国土交通大臣が初めて指定した。
(関連記事:京王線など「改良すべき踏切」58カ所を大臣初指定

 期限となる2020年度までまでに1000カ所以上の踏切を指定して改良を促す。20年度に踏切事故を14年度比で1割、踏切の遮断による損失時間を同5%それぞれ削減するのが狙いだ。

 東京都内で指定された踏切の中には現在、事業中の京王電鉄京王線の仙川―笹塚間の連続立体交差事業で除去する25カ所が含まれる。
(関連記事:京王線仙川―笹塚間の立体交差化事業で施工者決定

 このほか、京成高砂駅を高架化する40年越しの計画が具体化しつつある。踏切の撤去は通行者の安全性向上や列車の遅延解消に加え、踏切で分断される街の融合といったまちづくりの視点からも盛り上がっている。