<鴻海>立志伝中の郭会長 社員「即断即決で緻密」

毎日新聞 4月3日(日)9時31分配信
 シャープ買収の契約を2日に結んだ台湾の世界最大の電子機器受託製造企業、鴻海(ホンハイ)精密工業を一代で築き上げた郭台銘会長(65)は、台湾や中国では立志伝中の人物として知られる。内戦で中国大陸から台湾に渡った両親のもと、台湾で生まれ育った。

 3月下旬、郭氏が小学校から高校までを過ごした台湾・新北市の慈恵宮という寺を訪れた。寺のスタッフ、張正明さん(60)は「父親は警官だったが、寮に入れず、寺の一室で両親や兄弟とつましく暮らしていた」と話す。立身出世への思いはここで育まれた。

 正門のきらびやかな屋根を支える巨大な柱には「郭台銘」の銘が刻まれていた。柱は1本1000万円するが、寺の建て替えの際、郭氏が行った寄付で造られた。郭氏は「幼少期の恩返しに」と毎年旧正月にこの寺を訪れ、祈りをささげるという。

 鴻海の2015年12月期の連結売上高は約15兆6000億円に上り、郭氏は米フォーブス誌の世界長者番付の常連となった。郭氏は猛烈な仕事ぶりで知られ、1日16時間働き、極度のトップダウン経営を貫く。「できるかどうかは問題ではない。行動あるのみ」など困難をいとわず、幹部らへの要求が厳しいことでも知られる。

 鴻海が買収した通信系会社の40歳代の社員は「鴻海のおかげで会社が立ち直った。郭会長の下ではスピード感が要求される」と経営手腕を評価。別の子会社の社員(42)は「郭会長は即断即決で緻密。何よりとても厳しい」と語った。

 シャープの経営陣が郭氏の厳しい要求やスピード経営についていけるのか、その行方が注目される。【宮崎泰宏】
最終更新:4月3日(日)9時31分
毎日新聞