テニス界の男女同権問題、ジョコビッチ発言で過熱





AFP】(更新)男子テニス、世界ランク1位のノバク・ジョコビッチ(Novak Djokovic、セルビア)が、観客を多く動員する男子は、女子よりも高額の賞金を得るべきだと示唆し、テニス界の男女同権問題に新たな物議を醸している。
 BNPパリバ・オープン(BNP Paribas Open 2016)の男子シングルスで、前人未到となる5度目の優勝を飾ったジョコビッチは、大会ディレクターのレイモンド・ムーア (Raymond Moore)氏が、女子テニス協会(WTA)は男子の人気に便乗していると発言したことについて、間違った表現だと批判し、女子選手は「自分たちの力で、あの地位を手に入れた」との見解を示した。
 その一方でジョコビッチは、「男子テニス界、つまり男子プロテニス協会(ATP)は、より多くを求めるべきだと思う。なぜなら、男子の試合の集客力の方が高いということが、データで分かっているからだ」と述べた。
「それもあって、僕らはもっと報われるべきだと思う」
 BNPパリバ・オープンの大会ディレクターを務める元テニス選手のムーア氏は、20日朝に行われた記者会見で、「もし私が女子選手だったら、毎晩ひざまずいて神に感謝するだろう。テニス界をけん引する、ロジャー・フェデラー(Roger Federer、スイス)やラファエル・ナダル(Rafael Nadal、スペイン)が生まれてきたことをね」と発言し、現女王セレーナ・ウィリアムス(Serena Williams、米国)らから批判を浴びていた。
 女子テニス界の伝説マルチナ・ナブラチロワ(Martina Navratilova)氏は、ツイッター(Twitter)に、「ひどい騒動。ムーア氏がめちゃめちゃにして、ノバクまで…本気なの?」と投稿。
 ATPのクリス・カーモード(Chris Kermode)会長は、男女の賞金を同額とする原則を支持する姿勢を見せたものの、最終的な決定権は大会側にあるとした。
 一方、全米テニス協会(USTA)のカトリーナ・アダムズ(Katrina Adams)会長は、全米オープン(The US Open Tennis Championships)の主催者が、男女同権の原則を守るつもりだと述べている。
「USTAと全米オープンは、基本原則として選手を平等に扱います。賞金額を平等に設定する最初の四大大会(グランドスラム)として、スポーツにおける男女同権の道を切り開いてきました」
「時代遅れで性差別的、また思慮の足らない先般の主張やコメントは到底受け入れられず、テニス界の大半を占める考え方を反映したものではありません」
(c)AFP

ジョコビッチ、男女の賞金に関する発言を謝罪

AFP=時事 3月23日(水)9時46分配信
【AFP=時事】(更新)男子テニス、世界ランク1位のノバク・ジョコビッチ(Novak Djokovic、セルビア)は22日、男子は女子よりも高額の賞金を得るべきだとする発言について、ソーシャルメディア上で謝罪した。

テニス界の男女同権問題、ジョコビッチ発言で過熱

 四大大会(グランドスラム)通算11勝の王者ジョコビッチは、20日、BNPパリバ・オープン(BNP Paribas Open 2016)の男子シングルスで優勝を飾ったものの、自身のコメントが物議を醸していた。

 BNPパリバ・オープンの大会ディレクターを務めていたレイモンド・ムーア (Raymond Moore)氏が、女子テニス協会(WTA)は男子の人気に便乗しているという性差別的な発言をしたことについて、見解を求められたジョコビッチは、女子が「ホルモンや他のこと」によるハンディを背負いながら懸命に戦っているとし、ムーア氏の発言を批判したものの、男子プロテニス協会(ATP)はより多くの観客を動員しているため、WTAツアーより多額の賞金をもらうべきではないかと述べて、各方面から批判を受けていた。

 騒動の結果、ムーア氏はBNPパリバ・オープンの大会ディレクターを辞任し、ジョコビッチの発言は、マイアミ・オープン(Miami Open 2016)の開幕に影を落としていた。

 多くの選手が男女同権を支持する考えを表明する中、ジョコビッチはツイッター(Twitter)とフェイスブック(Facebook)に謝罪文を掲載し、誤解を招く発言について弁明した。

 ジョコビッチは、コメントを求められた際に「決勝戦を終えたばかりで、幸福感とアドレナリンがあふれていた」「自分の考えを不適切な形で表現してしまった。これについて真意を伝えたい」と述べている。

「お分かりとは思いますが、僕はテニス界の将来と、全ての選手について真剣に考えています。僕の人生はテニスに助けられてきましたし、今の自分の立場を考え、財が境界線を越えて平等に、より良い形で分配されるべきだと、お話しする必要があると思いました。これは男子と女子の両方にとってです」

「僕らは自分たちの力で、欲しいものを勝ち取る必要があります。この戦いは、性別や収入の違いについて行われるべきではなく、自分のプレーや努力がどのような形で報われるべきか、ということを意味しています」

「テニスは僕が愛するスポーツで、夢の実現を目指す人々を応援するチャンスをくれました。この考えは常に変わらず、誤解を与えた皆さまにはおわび申し上げます」


■セレーナやマレーが不快感

 ジョコビッチの謝罪に先立ち、セレーナは賞金額に差をつけるべきとの考え方に「失望していると言わざるを得ない」とコメントし、今年で2歳になる息子の父親であるジョコビッチに娘ができた場合、どのように話をするのか疑問を呈していた。

「彼には発言の自由がある。彼には息子がいるけど、もし娘が生まれたら、『兄さんはお前より多くのお金がもらえて当然なんだよ』と言うべき」

「私は性別を比較の対象にしたくなんかない。男子にも女子にも、スポーツの素晴しさを教えてくれる多くの素晴らしい選手がいる。全てのアスリートが極限まで努力している。もし私に息子と娘がいたら、性別を理由にどちらかがより多くに値するなんて絶対に言わない」

 アンディ・マレー(Andy Murray、英国)は、「全てを一緒くたにはできない。その日の試合によって状況は異なる。ここ数年は男子において偉大なライバル対決があった。そういったことでテニス界全体が盛り上がる。男子の試合だけではない」と話している。

 マレーはまた、ムーア氏が騒動のきっかけとなった発言をした直後、BNPパリバ・オープンの女子シングルス決勝で、ビクトリア・アザレンカ(Victoria Azarenka、ベラルーシ)が世界1位のセレーナを相手に番狂わせを起こしたタイミングの良さに驚きを示している。

「発言のタイミングが奇妙だった。1万6000人が駆けつけた素晴しい決勝戦の前だったんだ。あのような決勝戦の直前だったので、全てのことがとても奇妙で残念だ。全く理解できない」


■錦織も「女子テニスは人気」

 錦織圭(Kei Nishikori)は、女子の試合は男子と同様に観客を会場に引きつけているとし、「女子でも素晴しい試合が見ることができる。たくさんの人が女子テニスを見たいと考えている。セレーナの試合は特に人気だ」と語っている。

 ウィンブルドン選手権(The Championships Wimbledon)で2度の優勝を誇るペトラ・クヴィトバ(Petra Kvitova、チェコ)は、ジョコビッチの発言は「褒められたものではない。非常にがっかりしている」とコメント。

「私たちは男子と同じように100%の力でトレーニングを行っている。ホルモンや他のハンディを抱えながら、女子が頑張っている?彼はそういうことを言うべきではない」

 グランドスラム2勝のスタン・ワウリンカ(Stan Wawrinka、スイス)は、「彼(ジョコビッチ)の発言は的外れだ。ATPは賞金集めに奔走しているが、それは、僕らテニス界が前に進む唯一の手段だから。平等で良い」と話した。

 アニエスカ・ラドワンスカ(Agnieszka Radwanska、ポーランド)は、問題発言によるムーア氏の辞任を好意的に捉えており、ジョコビッチの発言については、「私たちは懸命に努力し、練習に多くの時間を割いている。あらゆる点で男子に劣っているとは思わない。少ない賞金で当然とは思わない」と語っている。【翻訳編集】 AFPBB News
最終更新:3月23日(水)14時40分
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