自宅の空き部屋などを有料で旅行者に貸し出す「民泊」について、厚労省と観光庁の検討会は、旅館業法上の営業許可を得た物件のみを認める「許可制」とする方針を明らかにした。すでに「違法」といえる民泊サービスが全国に広がる中、効果はあるのだろうか。
原則として「違法」である民泊
「民泊」は、インターネット上で旅行者と部屋の提供者をつなげる米国発祥の民泊仲介サービス「Airbnb(エアビーアンドビー)」が日本に上陸したことで、民間で拡大してきた。政府は近年の外国人観光客の増加や2020年の東京五輪開催時のホテル不足を見据え、この「民泊」を外国人観光客の宿泊需要の受け皿として利用する方法を検討してきた。
一方で、日本では現行の旅館業法上、宿泊業を営む場合に都道府県の許可が必要で、許可を取らないものは「違法」となる。昨年12月には京都市のマンションで許可なく「民泊」業を営んだとして、旅館業法違反容疑で業者が書類送検される事件も起きた。宿泊業界は、ホテルや旅館などには設備や衛生面で厳しい要件が課されているにもかかわらず、「民泊」だけがあらゆる規制の対象外になるのは危険だとして、政府の民泊推進の姿勢に反発してきた。
一方で、日本では現行の旅館業法上、宿泊業を営む場合に都道府県の許可が必要で、許可を取らないものは「違法」となる。昨年12月には京都市のマンションで許可なく「民泊」業を営んだとして、旅館業法違反容疑で業者が書類送検される事件も起きた。宿泊業界は、ホテルや旅館などには設備や衛生面で厳しい要件が課されているにもかかわらず、「民泊」だけがあらゆる規制の対象外になるのは危険だとして、政府の民泊推進の姿勢に反発してきた。
旅館業法の対象に?
そこで、先月12日に厚生労働省と観光庁が開催する検討会で示されたのが、「民泊」を現行の旅館業法上の「簡易宿所」として位置付けるという案だった。現在「簡易宿所」に分類されているのは、カプセルホテルやユースホステルなど。「民泊」が旅館業法に組み込まれれば、都道府県の営業許可が必要となり、国や自治体の定める設備や衛生基準を満たす必要が生まれる。
現行法では「簡易宿所」として認められるためには33平方メートル以上の客室面積が必要だが、検討会は「民泊」の物件がこの広さを満たすのは厳しいとして、面積要件を緩和する方針を示している。一方で、旅館業法上で簡易宿所が営業できる場所は限られており、原則として住居専用地域では営業できない。そのため、自治体による特例措置でもない限り「民泊」が開業できる地域は限定されることになる。
厚生労働省の担当者は「(33平方メートル以上という)今までの面積要件が緩和されれば、簡易宿泊所として『民泊』の開業許可を取ることへの障害はほぼなくなる。当面は、現行法上の枠組みで『民泊』という新たな宿泊ニーズに対応できる形になる」と話す
現行法では「簡易宿所」として認められるためには33平方メートル以上の客室面積が必要だが、検討会は「民泊」の物件がこの広さを満たすのは厳しいとして、面積要件を緩和する方針を示している。一方で、旅館業法上で簡易宿所が営業できる場所は限られており、原則として住居専用地域では営業できない。そのため、自治体による特例措置でもない限り「民泊」が開業できる地域は限定されることになる。
厚生労働省の担当者は「(33平方メートル以上という)今までの面積要件が緩和されれば、簡易宿泊所として『民泊』の開業許可を取ることへの障害はほぼなくなる。当面は、現行法上の枠組みで『民泊』という新たな宿泊ニーズに対応できる形になる」と話す
違法な「民泊」は取り締まれるか?
現行法上は原則違法にもかかわらず、国内で広く行われてきた「民泊」。通常の旅館業法に則り「許可制」となれば、「違法」な民泊はより取り締まることができるようになるのか。
厚労省は「現状で民泊を開業している人の中には、許可が必要だと知らない人も多い。現状では『民泊』の実態把握が困難だが、許可を取る人が増えれば、それだけ実態把握は容易になる」としている。
しかし厚労省によると、「許可制」にした後も、違法な民泊への対処法は今と大きく変わらない予定という。無許可営業への指導は各自治体の保健所が行っているが、保健所の人手の問題もあり、現状では無許可営業の把握は基本的に苦情や通報のあった施設への訪問にとどまっている。今後、許可を得ない民泊業は「違法」であることが明確化する一方で、「民泊」への実態調査や取り締まりの強化がなされないなら、違法状態が放置されるという状況も生まれかねない。
国の「国家戦略特区」である東京都大田区では、旅館業法の適用を例外的に外して先月29日から「民泊」の申請受け付けを始めているが、大田区生活衛生課は「申請や問い合わせの対応に手一杯で、実態調査まで手が回らない状態」と話す。
厚労省は「現状で民泊を開業している人の中には、許可が必要だと知らない人も多い。現状では『民泊』の実態把握が困難だが、許可を取る人が増えれば、それだけ実態把握は容易になる」としている。
しかし厚労省によると、「許可制」にした後も、違法な民泊への対処法は今と大きく変わらない予定という。無許可営業への指導は各自治体の保健所が行っているが、保健所の人手の問題もあり、現状では無許可営業の把握は基本的に苦情や通報のあった施設への訪問にとどまっている。今後、許可を得ない民泊業は「違法」であることが明確化する一方で、「民泊」への実態調査や取り締まりの強化がなされないなら、違法状態が放置されるという状況も生まれかねない。
国の「国家戦略特区」である東京都大田区では、旅館業法の適用を例外的に外して先月29日から「民泊」の申請受け付けを始めているが、大田区生活衛生課は「申請や問い合わせの対応に手一杯で、実態調査まで手が回らない状態」と話す。
あえて「合法な民泊」をうたう民泊業者も
そんな中、あえて「合法」であることを強調した民泊仲介業者も出てきた。東京都千代田区の「とまれる株式会社」は、「日本初の合法民泊サイト」と銘打った民泊仲介サイト「STAY JAPAN」を開設。国家戦略特区での「民泊」のルールに準拠し、先月29日に大田区で物件の営業許可を申請した。同社は大田区だけですでに約100件の申請可能な物件を用意しているという。
同社事業開発部は「既存の宿泊業界からも理解を得られる形で合法に『民泊』を行うことこそが宿泊業の幅を広げ、日本全体の観光業を活性化すると考えている。きちんと法律を守る人が損をするのはおかしなことで、国には違法な『民泊』をきちんと取り締まるよう、強く訴えていく」と話す。
厚労省と観光庁の検討会は今年秋までに「民泊」に関する最終報告書をまとめる予定で、許可を受けない「違法な民泊」をどのように解消していくつもりなのか、その方針が注目される。
同社事業開発部は「既存の宿泊業界からも理解を得られる形で合法に『民泊』を行うことこそが宿泊業の幅を広げ、日本全体の観光業を活性化すると考えている。きちんと法律を守る人が損をするのはおかしなことで、国には違法な『民泊』をきちんと取り締まるよう、強く訴えていく」と話す。
厚労省と観光庁の検討会は今年秋までに「民泊」に関する最終報告書をまとめる予定で、許可を受けない「違法な民泊」をどのように解消していくつもりなのか、その方針が注目される。
(安藤歩美/THE EAST TIMES)