中国人の空の旅、搭乗客に告ぐ「べからず集」

 中国では春節(旧正月)休暇という、世界で最も多くの人が移動する季節がやってきた。この巨大な集団は次第に数を増やし、空港を強行突破して国外まであふれ出ている。こうした中、中国の観光当局はきちんとマナーを守ってもらうため、航空機に乗る際の「べからず集」をまとめた。

 中国最大のオンライン旅行会社シートリップ・ドット・コムの推計によると、今年の春節休暇中にパッケージツアーで国外に出かける中国本土の旅行者は600万人近くに達し、2013年の400万人から50%ほど増加する見込みだ。

 ここ数年、空港や機内で中国人旅行者が絡む「みっともない事件」が続発したとあり、国家観光局は不作法な旅行者のブラックリストを公表せざるを得なくなった。

 政府系の航空業界団体である中国航空運輸協会は今週、これに独自のブラックリストを加え、マナー違反が見つかった乗客の個人情報が記録され、航空各社に共有されると述べた。国営メディアで放送された発表文(中国語)にはブラックリストに乗る可能性がある10項目の不法行為が列挙されている。

1)チケットカウンター、セキュリティーライン、ゲートをふさぐ、無理に占拠する、攻撃する行為

 中国の航空便が遅れることは非常に多い。航空会社の手際が悪いと感じた場合、最もよく取られる行動は無力な航空会社職員とにらみ合っている他の憤慨した乗客に加担することだ。昨年9月、中国人旅行者の集団がこの手法をタイに持ち込んだ。そこではバンコクから中国南西部の重慶市まで飛ぶ便の出発が9時間遅れたことに抗議し、集団が耳をつんざくような大声で中国の国歌を歌い始めたのだ。地元メディアによると、この集団の中の4人が後に観光局のブラックリストに加えられた。

2)空港や機内での乱闘や口論

 最近の例では昨年12月、上海から米ニュージャージー州ニューアークに行くユナイテッド航空便で中国人の男がファーストクラスに座るのを断られたことに腹を立てて騒ぎ、取り押さえられるという事件が発生した。

3)民間航空スタッフに暴行を働いたり、脅したりする行為

 2014年12月のバンコク発・南京行きのエアアジア便で、客室乗務員が小さな乗客グループとの激高した口論に巻き込まれた。機内サービスに機嫌を悪くした乗客の1人が客室乗務員に意図的に熱湯をかけてやけどさせたのだ。国家観光局のウェブサイトに掲載された文書には、これら乗客が旅行者のイメージを損ない、罰を受けることを約束したと書かれている。その数日後、当局はブラックリスト作成について協議を始めた。

4)客室の安全ルール違反、客室乗務員の指示に従わない行為

 中国人の乗客はシートベルト着用のサインを無視したり、離陸後に頭上の棚から荷物を取り出すため、客室乗務員による着席の指示に従わずに飛びついたりするという評判を、長年かけて築き上げてきた。

5)力ずくで非常ドアを開ける行為

 2014年12月、陝西省西安市を出た中国東方航空の便が南部の島である海南省三亜市に着陸した直後、乗客の1人が「早く降りたい」と言って非常ドアを開けた。その数日後、杭州発・成都行きの厦門航空便でも、乗客の1人が明らかに新鮮な空気を吸いたいという理由で全く同じ行動を取った。航空当局の記録によると、2015年1月から5月にかけて乗客が無断で非常ドアを開けようとしたケースが上記以外に少なくとも12件あった。今年1月には北京首都航空に乗った中国人女性が飛行中に非常ドアを開けようとし、取り押さえられた。

6)無理やり搭乗したり、機体を妨害する行為

怒って混乱した乗客は、搭乗を拒否されても乗り込むことがある。昨年5月には中国聯合航空の江西省南昌市発・北京行きの便で、手荷物の超過料金を支払わなかったためゲート通過を許可されなかった中国人女性が無理やり搭乗しようとしたことがあった。

7)空港や航空機の設備を意図的に破壊する行為

 国営資源会社、雲南鉱業の元役員で、立法助言機関である中国人民政治協商会議のメンバーだった厳林昆氏は2013年2月18日、家族とともに雲南省昆明市から広東省広州市に行こうとしていた。昆明長水国際空港で厳氏と家族はすでに最初の便を逃しており、次の便に乗ろうとしたが、戻ってきた時にはそれも逃したことに気付いた。厳氏はゲートで大暴れし、後に職務停止処分を受けた(そして破壊した空港の機器を元に戻すことも約束した)。

8)偽のテロ情報をでっち上げたり、意図的に広めたりする行為

 2012年8月29日、北京発・米ニューヨーク行きの中国国際航空の便に米当局から脅迫情報が伝えられ、離陸から4時間後に北京に戻った。その翌日には深セン航空が脅迫電話を受け、湖北省襄陽市から広東省深セン市に向かう同社の便が湖北省武漢市に緊急着陸した。調査の結果、どちらの航空機にも危険物は仕掛けられていなかった。その翌年、広東省の警察は5つの便に爆弾を仕掛けたとする偽の情報で脅迫した男を逮捕した。この男は社会に不満があったという。

9)ランプ内や滑走路、機体誘導路への侵入

 2012年には深セン航空が提供した遅延補償に激怒した乗客28人が搭乗を拒否し、上海浦東国際空港のタールマック(滑走路の舗装エプロン)に飛び出したため、地上走行していたエティハド航空は急ブレーキをかけざるを得なかった。その2日後には、広東省にある広州白雲国際空港で同様の出来事が発生した。悪天候のため海南航空の便に遅れが生じたためだ。乗客の一団は滑走路に入り込んだが、最終的には説得されて搭乗ゲートに戻った。

10)航空当局スタッフの業務妨害、他人に業務妨害をそそのかす行為、当局の指令を妨害したり社会に甚大な悪影響を及ぼしたりするあらゆる行為

 これは好ましくないと見なされる全ての行為を実質的に罰することを当局に認める、包括的な項目だ。ここに何が含まれるかを判断するのは困難だが、恐らく、親が子どもに客室内でおしっこさせるという問題に対処する方法が示されているのだろう。
By Josh Chin
最終更新:2月4日(木)16時7分
ウォール・ストリート・ジャーナル