【カイロ秋山信一、ワシントン和田浩明】内戦が続くシリアで9月末、ロシアやフランスが相次いで空爆に踏み切った結果、事態がより複雑化して、シリア国内では早期の内戦終結への期待がしぼんでいる。2012年に内戦が本格化して以来、政権側と反体制派の双方に外国人戦闘員が多数参加してきたほか、米軍主導の有志国連合が昨秋から空爆を続けている。各国が自国の利益のために介入を強めており、和平の機運が遠のいているのが実情だ。
「ロシアの介入は紛争を激化させるだけだ」。ロシア軍に空爆された中部ホムス県では、反体制活動家のホデル・ハシバさん(29)が1日、毎日新聞の電話取材にそう語った。
ロシア国防省は、3日もシリア北西部などで過激派組織「イスラム国」(IS)の拠点を空爆したと発表した。露軍の空爆は4日連続となる。インタファクス通信によると、ロシア国防筋は2日、地中海のシリア沖に展開中のロシア海軍が実戦演習を始めたことを明らかにした。空爆に参加する自軍の保護が目的と説明しており、シリアへの軍事関与を一段と強めている。
一方でオバマ米大統領は2日の記者会見で、「シリアを米露の代理戦争の場にしない」と述べながら、ロシア軍の行動を「泥沼にはまることになり、成果は出てこない」と批判。プーチン露大統領に対しても、シリアで政治的な解決を進めるためアサド大統領に退陣を促すよう求めた。
米国は同日、英仏独、サウジアラビア、カタール、トルコの6カ国と連名で声明も発表した。ロシア軍の空爆が民間人の死傷者を出している上に、ISを標的にしていない点を取り上げ、「深い懸念」を表明。穏健な反体制派や民間人への攻撃を即時中止するよう要求している。
ロシアによるシリア領空爆に先立ち、米主導の有志国連合側でも、フランスが9月27日にシリア国内のIS支配地域への空爆に加わった。ペルシャ湾岸諸国やオーストラリアなどが参加する有志国連合は昨年9月に始めた空爆作戦を継続する構えだが、シリア国内では成果を疑問視する見方が少なくない。反体制活動家のハシバさんは「1年間でシリアの危機を1%でも解決できたとは思わない。空爆で紛争を決着させるなど不可能だ」と指摘する。
有志国連合とロシアによる空爆は、双方が支援する勢力への「側面支援」の意味合いが強く、民間人の巻き添えも相次ぐ。シリア内戦の戦況を調査している在英民間組織の「シリア人権観測所」によると、過去1年間の有志国連合による空爆で、民間人200人以上が死亡した。また9月30日の露軍の空爆でも、民間人30人以上が死亡したと伝えられている。
内戦初期の段階では、米露がそれぞれの支援勢力に譲歩を促したことから、シリア国内では和平の促進が期待された。しかし、そうした期待は完全に裏切られ、今では和平協議の開催すら難しくなっている。
国連によると、人口約2200万人のシリアから周辺国に逃れた難民は400万人を超え、国内避難民も760万人以上に上る。ホムス県在住のジャーナリストの男性(27)は「国際社会はシリアに介入してくるが、紛争解決について沈黙したままだ」と憤りをにじませた。
「ロシアの介入は紛争を激化させるだけだ」。ロシア軍に空爆された中部ホムス県では、反体制活動家のホデル・ハシバさん(29)が1日、毎日新聞の電話取材にそう語った。
ロシア国防省は、3日もシリア北西部などで過激派組織「イスラム国」(IS)の拠点を空爆したと発表した。露軍の空爆は4日連続となる。インタファクス通信によると、ロシア国防筋は2日、地中海のシリア沖に展開中のロシア海軍が実戦演習を始めたことを明らかにした。空爆に参加する自軍の保護が目的と説明しており、シリアへの軍事関与を一段と強めている。
一方でオバマ米大統領は2日の記者会見で、「シリアを米露の代理戦争の場にしない」と述べながら、ロシア軍の行動を「泥沼にはまることになり、成果は出てこない」と批判。プーチン露大統領に対しても、シリアで政治的な解決を進めるためアサド大統領に退陣を促すよう求めた。
米国は同日、英仏独、サウジアラビア、カタール、トルコの6カ国と連名で声明も発表した。ロシア軍の空爆が民間人の死傷者を出している上に、ISを標的にしていない点を取り上げ、「深い懸念」を表明。穏健な反体制派や民間人への攻撃を即時中止するよう要求している。
ロシアによるシリア領空爆に先立ち、米主導の有志国連合側でも、フランスが9月27日にシリア国内のIS支配地域への空爆に加わった。ペルシャ湾岸諸国やオーストラリアなどが参加する有志国連合は昨年9月に始めた空爆作戦を継続する構えだが、シリア国内では成果を疑問視する見方が少なくない。反体制活動家のハシバさんは「1年間でシリアの危機を1%でも解決できたとは思わない。空爆で紛争を決着させるなど不可能だ」と指摘する。
有志国連合とロシアによる空爆は、双方が支援する勢力への「側面支援」の意味合いが強く、民間人の巻き添えも相次ぐ。シリア内戦の戦況を調査している在英民間組織の「シリア人権観測所」によると、過去1年間の有志国連合による空爆で、民間人200人以上が死亡した。また9月30日の露軍の空爆でも、民間人30人以上が死亡したと伝えられている。
内戦初期の段階では、米露がそれぞれの支援勢力に譲歩を促したことから、シリア国内では和平の促進が期待された。しかし、そうした期待は完全に裏切られ、今では和平協議の開催すら難しくなっている。
国連によると、人口約2200万人のシリアから周辺国に逃れた難民は400万人を超え、国内避難民も760万人以上に上る。ホムス県在住のジャーナリストの男性(27)は「国際社会はシリアに介入してくるが、紛争解決について沈黙したままだ」と憤りをにじませた。