<世界柔道>仏のリネール、7連覇目指す 日本で武者修行

毎日新聞 7月15日(水)11時13分配信

 2012年ロンドン五輪の柔道男子100キロ超級覇者、テディ・リネール(フランス)が8月24日開幕の世界選手権(カザフスタン・アスタナ)で、男女通じて史上初の大会7連覇を目指す。身長204センチと大柄な26歳は、圧倒的な力を誇示。「フランスには練習相手がいない」と来日して、各大学の道場を回って鍛えたほどだ。【藤野智成】

 東京都内の国士舘大で6月に公開された練習では、4月の全日本選手権を初制覇した伸び盛りの23歳、原沢久喜(日本中央競馬会)らを相手に組み手争いで圧力をかけ、支え釣り込み足などで何度もあおむけに倒した。いったん相手と向き合えば、練習といえども全く容赦がない。

 「今日の練習でも、僕は一回も投げられていないよね。おなかが(畳に)ついただけでも腹が立つからね」。乱取りの合間は笑みも浮かべ、コーチとジョークも飛ばし合うが、ライバルには一切の隙(すき)は見せない。

 パリ近郊に生まれ、5歳で畳に上り、14歳から取り組みを本格化。パワーを武器に男子史上最年少の18歳5カ月で07年世界選手権を制覇した。ただ「技術のないままチャンピオンになった。もっと技を磨きたかった」と鍛錬。以来、100キロ超級か無差別級のいずれかを制して、大会連覇を続けている。

 ここ数年は対戦相手のビデオ研究もやめ、自分が生で見た印象や感覚を大事にする。「それが私の哲学」と達観したふうでもある。そんな逸材に、米国の総合格闘技団体「UFC」からは、毎年のように1000万ドル(約12億円)の高額オファーが舞い込むが、「僕は柔道しか知らないからね」と素っ気ない。

 雑念もなく、アスタナの地へ。6連覇は、1993~03年の女子48キロ級の谷(当時田村)亮子氏がいるが、7連覇は前人未到の領域。「私の頭の中は子供と同じ。負けず嫌いで、常にチャレンジしたくて、常に勝ちたい」。その常勝の思いは、来夏のリオデジャネイロでの五輪2連覇、さらに20年東京五輪にも続いているという。
最終更新:7月15日(水)11時13分
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