「二子玉川は都内で最も住みたいと言われる住宅街だったが、これからは “働く街”としても注目を集める」――。4月24日、東京急行電鉄の野本弘文社長は、田園都市線の二子玉川駅に隣接する大規模複合施設「二子玉川ライズ」の2期棟の開業記念セレモニーでこう語った。
二子玉川ライズは、1985年まで同地に存在した遊園地・二子玉川園の跡地を再開発した複合施設。ショッピングセンター、高層マンション、オフィスビル、公園などが設けられている。2007年から工事が始まり、2010年に一部の商業施設が開業。今回、シネマコンプレックスや多目的ホテルなどの施設が開業し、30年にわたる再開発がようやく完成を迎えた。
■ ライズの予想就労人口は1万人
私鉄各社の中でも、とりわけ東急は沿線開発を得意とする。東横線には田園調布、自由が丘という2大ブランドがあるが、今回のライズ開業で、田園都市線における二子玉川のブランド力がさらに高まるのは間違いない。
オフィス部分には楽天の本社機能が品川から移転する。8月に入居が始まり、ほかの商業施設と合わせ、1万人の就労人口が見込まれる。ライズへの通勤には田園都市線や大井町線が使われるとすれば、東急の運賃収入に貢献する。
どのくらいの収入増につながるかは不確定だが、1万人が鉄道を利用するのであれば、億円単位の収入増となるのは間違いない。二子玉川であれば、朝夕の通勤は都心とは逆方向となるため、東急にとっては列車の有効活用が期待できる。
二子玉川ライズは、1985年まで同地に存在した遊園地・二子玉川園の跡地を再開発した複合施設。ショッピングセンター、高層マンション、オフィスビル、公園などが設けられている。2007年から工事が始まり、2010年に一部の商業施設が開業。今回、シネマコンプレックスや多目的ホテルなどの施設が開業し、30年にわたる再開発がようやく完成を迎えた。
■ ライズの予想就労人口は1万人
私鉄各社の中でも、とりわけ東急は沿線開発を得意とする。東横線には田園調布、自由が丘という2大ブランドがあるが、今回のライズ開業で、田園都市線における二子玉川のブランド力がさらに高まるのは間違いない。
オフィス部分には楽天の本社機能が品川から移転する。8月に入居が始まり、ほかの商業施設と合わせ、1万人の就労人口が見込まれる。ライズへの通勤には田園都市線や大井町線が使われるとすれば、東急の運賃収入に貢献する。
どのくらいの収入増につながるかは不確定だが、1万人が鉄道を利用するのであれば、億円単位の収入増となるのは間違いない。二子玉川であれば、朝夕の通勤は都心とは逆方向となるため、東急にとっては列車の有効活用が期待できる。
二子玉川ライズは渋谷ヒカリエと並んで、東急の2012~2014年度中期経営計画の目玉であった。沿線開発に加えて、東横線―東京メトロ副都心線の相互直通運転開始も2012~2014年度経営計画の中核を成していた。
ただ、3月27日に発表した2015~2017年度の新中計には、東京メトロとの相互直通運転や二子玉川ライズといった前中計のようなビッグイベントの名前はない。完了年度が明記されているものとしては、中央林間駅ビルのリニューアル(2015年度)、渋谷宮下町のオフィスビル(2017年度)などにとどまる。
「今回はじっくりと“次のジャンプ”に向けて仕込んでいく時期」と、中計発表会の席上で野本社長は語った。次のジャンプ、それは2018年以降に次々と到来する大きなイベントを指す。
■ 2018年度以降は大事業が目白押し
最大級のトピックが、2018年を皮切りに竣工する渋谷駅周辺の再開発。2018年度にはかつて東急東横線が走っていた場所に、35階建ての高層ビルが建てられる(渋谷駅南街区計画)。
2020年には渋谷のランドマークとして期待される渋谷駅街区・東棟が開業する。この街区は3棟の建物で構成される。残りの2棟は2027年までに完成する予定だ。
2019年度には相鉄・東急直通線が開業する。相鉄・JR直通線の羽沢駅(仮称)から新横浜を経由し、東急東横線・目黒線日吉駅までの区間に連絡線を整備する。鉄道・運輸機構が建設を行い、相鉄と東急が営業主体となる。
2020年度までには東横線、田園都市線、大井町線の全64駅にホームドアの設置を完了させる。2020年度とはもちろん東京オリンピック、パラリンピックの開催を意識してのことだ。会場計画の見直しの中で、近代五種の会場を「駒沢オリンピック公園総合運動場」に変更することが検討されている。実現すれば、最寄り駅の田園都市線・駒澤大学駅には多くの人が押し寄せるはずだ。
ただ、3月27日に発表した2015~2017年度の新中計には、東京メトロとの相互直通運転や二子玉川ライズといった前中計のようなビッグイベントの名前はない。完了年度が明記されているものとしては、中央林間駅ビルのリニューアル(2015年度)、渋谷宮下町のオフィスビル(2017年度)などにとどまる。
「今回はじっくりと“次のジャンプ”に向けて仕込んでいく時期」と、中計発表会の席上で野本社長は語った。次のジャンプ、それは2018年以降に次々と到来する大きなイベントを指す。
■ 2018年度以降は大事業が目白押し
最大級のトピックが、2018年を皮切りに竣工する渋谷駅周辺の再開発。2018年度にはかつて東急東横線が走っていた場所に、35階建ての高層ビルが建てられる(渋谷駅南街区計画)。
2020年には渋谷のランドマークとして期待される渋谷駅街区・東棟が開業する。この街区は3棟の建物で構成される。残りの2棟は2027年までに完成する予定だ。
2019年度には相鉄・東急直通線が開業する。相鉄・JR直通線の羽沢駅(仮称)から新横浜を経由し、東急東横線・目黒線日吉駅までの区間に連絡線を整備する。鉄道・運輸機構が建設を行い、相鉄と東急が営業主体となる。
2020年度までには東横線、田園都市線、大井町線の全64駅にホームドアの設置を完了させる。2020年度とはもちろん東京オリンピック、パラリンピックの開催を意識してのことだ。会場計画の見直しの中で、近代五種の会場を「駒沢オリンピック公園総合運動場」に変更することが検討されている。実現すれば、最寄り駅の田園都市線・駒澤大学駅には多くの人が押し寄せるはずだ。
さらに東急は、将来構想として「蒲蒲線」を計画している。これは、東急多摩川線・蒲田駅と京急空港線・京急蒲田駅を地下ルートで結ぶものだ。
開通すれば、東横線や東京メトロ副都心線が蒲蒲線を経由して羽田空港に直行できる。新線の総延長は800メートルほどだが、事業費は1080億円と試算されている。また、東急線と京急線とではレールの間隔が異なるため、この対応が必要になる。
3月6日に東京都が発表した「広域交通ネットワーク」の中間まとめにおいて、都が「整備効果が高い」と位置づける5路線に、蒲蒲線は含まれていなかった。が、東急は熱意を捨てていない。「蒲蒲線が完成すれば東急沿線から羽田空港に直接行けるので、沿線のイメージアップにつながる」(野本社長)。さらなる沿線価値の向上に向け、東京オリンピックの時間軸にとらわれず、地道に実現への議論を進めるという。
このように、東急には将来のビッグイベントが目白押しだ。そのため、“ジャンプ”に備えた“ステップ”に当たる2015~2017年度は、経営体力を蓄えていく時期ともいえる。
■ 早急に対応すべき問題も
ただ、一刻も早く対応しなくてはいけない課題もある。たとえば、「安全投資については、大半を2017年度までにやってしまいたい」と野本社長は言う。安全への取り組みに急ぎすぎるということはないからだ。
もう1つは、田園都市線の混雑対策だ。2008~2009年に大井町線を溝の口駅まで延伸し、急行運転を開始することで田園都市線の乗客の一部を大井町線にシフトすることはできたが、池尻大橋―渋谷間の混雑率は今なお183%という都内屈指の混雑ぶりだ。
JR東日本は巨費を投じて上野東京ラインを今春に運行開始したことで、山手線や京浜東北線の混雑が緩和した。一方の東急は新線建設のような大型設備投資は行わず、「時差通勤者にはポイントを付与するなどの仕掛けを考えていく」(野本社長)という。
知恵の力でどこまで混雑を減らせるか。今回の中計では語られていないが、混雑問題への取り組みは大きな課題である。何より、東急が目指す沿線価値向上のためには避けて通れないはずだ。
開通すれば、東横線や東京メトロ副都心線が蒲蒲線を経由して羽田空港に直行できる。新線の総延長は800メートルほどだが、事業費は1080億円と試算されている。また、東急線と京急線とではレールの間隔が異なるため、この対応が必要になる。
3月6日に東京都が発表した「広域交通ネットワーク」の中間まとめにおいて、都が「整備効果が高い」と位置づける5路線に、蒲蒲線は含まれていなかった。が、東急は熱意を捨てていない。「蒲蒲線が完成すれば東急沿線から羽田空港に直接行けるので、沿線のイメージアップにつながる」(野本社長)。さらなる沿線価値の向上に向け、東京オリンピックの時間軸にとらわれず、地道に実現への議論を進めるという。
このように、東急には将来のビッグイベントが目白押しだ。そのため、“ジャンプ”に備えた“ステップ”に当たる2015~2017年度は、経営体力を蓄えていく時期ともいえる。
■ 早急に対応すべき問題も
ただ、一刻も早く対応しなくてはいけない課題もある。たとえば、「安全投資については、大半を2017年度までにやってしまいたい」と野本社長は言う。安全への取り組みに急ぎすぎるということはないからだ。
もう1つは、田園都市線の混雑対策だ。2008~2009年に大井町線を溝の口駅まで延伸し、急行運転を開始することで田園都市線の乗客の一部を大井町線にシフトすることはできたが、池尻大橋―渋谷間の混雑率は今なお183%という都内屈指の混雑ぶりだ。
JR東日本は巨費を投じて上野東京ラインを今春に運行開始したことで、山手線や京浜東北線の混雑が緩和した。一方の東急は新線建設のような大型設備投資は行わず、「時差通勤者にはポイントを付与するなどの仕掛けを考えていく」(野本社長)という。
知恵の力でどこまで混雑を減らせるか。今回の中計では語られていないが、混雑問題への取り組みは大きな課題である。何より、東急が目指す沿線価値向上のためには避けて通れないはずだ。
大坂 直樹
最終更新:5月4日(月)4時50分