

5月3日(日)7時50分配信
1足3万2000円(税込3万4560円)の高額スニーカーが発売後、即完売。それどころか、購入希望者が殺到しており、抽選に当たらなければ購入権すら得られない……!?
ニューバランスは1906年、ボストンで創業した
そんな人気のスニーカーが3月28日に発売となった。ニューバランスの「M1300」だ。
「M1300」は1985年に米国で130ドル(当時)、日本で3万9000円という価格で発売されたスニーカーだ。その後、1995年からは5年おきに復刻版が発売され、毎回ファンの間で壮絶な争奪戦が繰り広げられる。
“スニーカーのロールスロイス”とも称される、「M1300」。機能、品質の高さが人気の理由の一つであることに間違いない。そもそもニューバランス自体が「アーチサポートインソールや矯正靴のメーカーとして創業」し、「今も一部の商品は米国内の工場で生産」し、「当初、日本でライセンス販売をした際には、試作品を本国の会長が実際に履いて走って、試してからでないと販売の許可が下りなかった」…などなど、品質へのこだわりエピソードには、事欠かないブランドだ。
■ パパの熱狂が妻と子供にも伝播
しかしながら一部のファンが熱狂するだけでは、マス・マーケットを相手にするグローバルブランドのビジネスは成り立たない。ファンの熱狂は維持しながらも、いかにしてその熱量を周囲に伝えて、顧客を広げ、ビジネスを拡大させるのかが、同社のマーケティングの肝となる部分だ。
そもそもスニーカーマニアは、男性が中心。「M1300」も、これまで熱狂してきたのは男性たちだ。しかし2015年の復刻版から新しい取り組みを始めた。子供と女性の取り込みである。
「今回は、『M1300』のキッズモデルも販売。加えてもともとユニセックスのモデルではありましたが、さらに女性を意識して、小さいサイズのラインナップを拡充させています」(ニューバランスジャパン マーケティング部長の鈴木健氏)。
ニューバランスは1906年、ボストンで創業した
そんな人気のスニーカーが3月28日に発売となった。ニューバランスの「M1300」だ。
「M1300」は1985年に米国で130ドル(当時)、日本で3万9000円という価格で発売されたスニーカーだ。その後、1995年からは5年おきに復刻版が発売され、毎回ファンの間で壮絶な争奪戦が繰り広げられる。
“スニーカーのロールスロイス”とも称される、「M1300」。機能、品質の高さが人気の理由の一つであることに間違いない。そもそもニューバランス自体が「アーチサポートインソールや矯正靴のメーカーとして創業」し、「今も一部の商品は米国内の工場で生産」し、「当初、日本でライセンス販売をした際には、試作品を本国の会長が実際に履いて走って、試してからでないと販売の許可が下りなかった」…などなど、品質へのこだわりエピソードには、事欠かないブランドだ。
■ パパの熱狂が妻と子供にも伝播
しかしながら一部のファンが熱狂するだけでは、マス・マーケットを相手にするグローバルブランドのビジネスは成り立たない。ファンの熱狂は維持しながらも、いかにしてその熱量を周囲に伝えて、顧客を広げ、ビジネスを拡大させるのかが、同社のマーケティングの肝となる部分だ。
そもそもスニーカーマニアは、男性が中心。「M1300」も、これまで熱狂してきたのは男性たちだ。しかし2015年の復刻版から新しい取り組みを始めた。子供と女性の取り込みである。
「今回は、『M1300』のキッズモデルも販売。加えてもともとユニセックスのモデルではありましたが、さらに女性を意識して、小さいサイズのラインナップを拡充させています」(ニューバランスジャパン マーケティング部長の鈴木健氏)。
もともとファンだった男性が家庭を持ち、奥さんや子供にも履かせるようになり、最近ではニューバランスのスニーカーがファッションアイテムの一つとして女性からも人気になってきたことが、その戦略の背景にある。パパが一人で熱狂する、男性の薀蓄(うんちく)文脈で語られるスニーカーから、ファミリーでも楽しめる、ファッションとしても楽しめるスニーカーへ…。今回の「M1300」発売の背後には、そんな戦略があった。
とはいえ、どんなに「ファミリーで履いてもらいたい!」と提案したところで、実際にこの人気モデルを手にすることができるのは、運よく抽選に当たったごく一部の人だけ。そもそも品質にこだわっているので、大量生産ができない。だからこそ、すぐに完売してしまうわけだが、どんなに人気になったところで、数量限定のモデルが完売しただけでは、ビッグビジネスにはなりえないという悩ましさもある。
「買えなかった人、買わなかった人にも、これだけ熱狂されるスニーカーがあることと、熱狂される背後にあるストーリーを伝えることが、マーケティング上の重要戦略と位置づけています」と鈴木氏は話す。
■ 価格競争に巻き込まれるブランド
スニーカーに限らず、いま商品のコモディティ化(同質化)が究極まで進んでいるといわれる。そのブランドの背後にあるストーリーや価値を深く体感、体験できる機会が提供できなければ、そのブランドならではの“付加価値”もマーケターの頭の中にあるだけで、消費者には伝わらず、店頭での価格競争に巻き込まれてしまうだけだ。
一部の人しか味わえない、濃厚な体験価値を、いかに広げていけるかは、多くのマーケターの課題。ここ最近、食品や飲料、化粧品などのマスプロダクツメーカーが期間限定のポップアップストアをオープンし、ブランドの世界を体感してもらう活動に力を入れているが、来場した人には価値を体感してもらえたところで、日本全体を相手にする企業が、数百、数千人の消費者にリーチをしたところで、たかがしれている。一部の人の体験をいかに、広くリーチさせるかが次なるマーケティング課題になっている。
とはいえ、どんなに「ファミリーで履いてもらいたい!」と提案したところで、実際にこの人気モデルを手にすることができるのは、運よく抽選に当たったごく一部の人だけ。そもそも品質にこだわっているので、大量生産ができない。だからこそ、すぐに完売してしまうわけだが、どんなに人気になったところで、数量限定のモデルが完売しただけでは、ビッグビジネスにはなりえないという悩ましさもある。
「買えなかった人、買わなかった人にも、これだけ熱狂されるスニーカーがあることと、熱狂される背後にあるストーリーを伝えることが、マーケティング上の重要戦略と位置づけています」と鈴木氏は話す。
■ 価格競争に巻き込まれるブランド
スニーカーに限らず、いま商品のコモディティ化(同質化)が究極まで進んでいるといわれる。そのブランドの背後にあるストーリーや価値を深く体感、体験できる機会が提供できなければ、そのブランドならではの“付加価値”もマーケターの頭の中にあるだけで、消費者には伝わらず、店頭での価格競争に巻き込まれてしまうだけだ。
一部の人しか味わえない、濃厚な体験価値を、いかに広げていけるかは、多くのマーケターの課題。ここ最近、食品や飲料、化粧品などのマスプロダクツメーカーが期間限定のポップアップストアをオープンし、ブランドの世界を体感してもらう活動に力を入れているが、来場した人には価値を体感してもらえたところで、日本全体を相手にする企業が、数百、数千人の消費者にリーチをしたところで、たかがしれている。一部の人の体験をいかに、広くリーチさせるかが次なるマーケティング課題になっている。
ニューバランスもスポーツブランドとして、マラソン大会などのスポーツイベントには積極的に協賛をし、ブランドの世界観を体感してもらう場を作ってきたが、ここでも一部の人にしか価値を理解できないことが課題だった。
■ 多くの人にブランドの世界観を体感してもらう
そこで2014年11月に開催された第9回湘南国際マラソンでは、ランナーの通過タイムをSNSに自動投稿し、自分だけの大会記録がまとめられた「MY RACE MOVIE」を作成するサービス「SOCIAL_MARATHON in 湘南国際マラソン」を提供している。
「2013年度の大会からランナーのSNSへの自動タイム投稿は行っていたが、さらにランナーの走行タイム、湘南の風景、SNSの友人からの声援等を詰め込んだオリジナルの「MY RACE MOVIE」を提供。
深いブランド体験は、一部の人にしか提供できない。この体験を周囲に広げることを考える上で、テクノロジーをいかに使いこなせるかがマーケティングの成功にとって重要な要素になっていくと思いますね」(鈴木氏)。
「SOCIAL_MARATHON」は大会参加者が携帯するタイム計測用の IC チップの管理データベースを活用し、計測ポイント通過時に、自動的に通過タイムが SNS へ投稿できる仕組み。超アナログな体験価値を、デジタルテクノロジーを使って、いかに周囲にも広げられるか。モノ消費からコト消費と言われる時代、体験価値の拡散のアイデアがマーケターの成功を左右する重要な要件になっている。
本記事は日本のマーケターを支援する組織「JAPAN CMO CLUB」が定期的に開催する、トップマーケターが集まる研究会内容を一部抜粋してまとめました。
■ 多くの人にブランドの世界観を体感してもらう
そこで2014年11月に開催された第9回湘南国際マラソンでは、ランナーの通過タイムをSNSに自動投稿し、自分だけの大会記録がまとめられた「MY RACE MOVIE」を作成するサービス「SOCIAL_MARATHON in 湘南国際マラソン」を提供している。
「2013年度の大会からランナーのSNSへの自動タイム投稿は行っていたが、さらにランナーの走行タイム、湘南の風景、SNSの友人からの声援等を詰め込んだオリジナルの「MY RACE MOVIE」を提供。
深いブランド体験は、一部の人にしか提供できない。この体験を周囲に広げることを考える上で、テクノロジーをいかに使いこなせるかがマーケティングの成功にとって重要な要素になっていくと思いますね」(鈴木氏)。
「SOCIAL_MARATHON」は大会参加者が携帯するタイム計測用の IC チップの管理データベースを活用し、計測ポイント通過時に、自動的に通過タイムが SNS へ投稿できる仕組み。超アナログな体験価値を、デジタルテクノロジーを使って、いかに周囲にも広げられるか。モノ消費からコト消費と言われる時代、体験価値の拡散のアイデアがマーケターの成功を左右する重要な要件になっている。
本記事は日本のマーケターを支援する組織「JAPAN CMO CLUB」が定期的に開催する、トップマーケターが集まる研究会内容を一部抜粋してまとめました。
谷口 優