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レザーとアルミだけでなく、カッパーをあしらうことで英国車独特の温かみを表現したベントレーの『スピード6EXP』
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最近、世界各地で行なわれるモーターショーは、多様化する市場の需要を反映して、あらゆるトレンドが並存するのが当たり前になっている。それでもひとつ、最近の自動車業界のトレンドを挙げるとしたら、ドイツ車が牽引してきたスポーティーさ、アグレッシブなデザインや高性能の追求から、一歩引いた動きが顕著になってきたことだ。
特筆すべきは、英国の自動車産業が復活し始めたことだ。コンセプトカーの内装に力強い提案がある。アストンマーティン初のSUVコンセプト『DBX』のアルミとレザーをあしらったワイルドな内装は、アストンに似つかわしいハンティングや乗馬、シューティング・ブレークといったカルチャーを連想させる。レザーとアルミだけでなく、カッパーをあしらうことで英国車独特の温かみを表現したベントレーの『スピード6EXP』も面白い。
ご存じの通り、英国の自動車メーカーは1990年代末から2000年代初頭にかけて、すべて外資企業の傘下に収められた。ミニやロールス・ロイスはBMW傘下だし、ベントレーはVWグループ、ジャガー・ランドローバーはインドのタタがオーナーで、アストンマーティンは2013年以来5%とはいえダイムラーの出資を受けている。
じつは手工芸的な高級車がブランドとして再成功するのに力あったのは、大衆車の成功といえる。BMWが主導した「プレミアム大衆車」ミニはもちろんだが、日産『キャシュカイ』は初代から主に英国サンダーランド工場で生産され、「英国車の生産台数」として初代ミニを超えたクルマでさえある。生産設備のみか、重要な開発プロセスやデザインも英国現地にローカライズし、自動車産業を再定着させた好個の例なのだ。
今回のジュネーブショーでは、プラットフォーム共有の理屈とはいえ、親会社ルノーが『カジャール』という、『キャシュカイ2』によく似たSUVクロスオーバーを披露した。欧州市場での『キャシュカイ2』のシェアに『カジャール』がどう影響するか、少しスリリングな展開といえそうだ。
また、日本車の欧州&ワールド・プレミア発表モデルの中で、意外な注目を集めたモデルは、三菱の『L200ピックアップトラック』だ。だだっ広い農場や牧場、漁業の現場といった欧州の第一次産業の現場で、他にも日産『ナヴァーラ』など、日本車のトラックは圧倒的な支持を誇る。安くて燃費がよくて壊れにくい、4WDのトラックは、足場の悪い現場でも牛馬のようによく働くからだ。
要は、欧州では日本車の得意分野は今も4WDだと思われているので、三菱がコンパクトなプラグイン・ハイブリッドSUVとして進化させたコンセプト『XR-PHEV II』、あるいは『ジムニー』や『ヴィターラ』に連なるマイクロSUVコンセプトとして、スズキの『im.4』も高い評価を得ていた。
逆に日本でヒット中のスバル『レヴォーグ』はDセグにも関わらず、今のところディーゼル・エンジンの用意がないため、現地メディアからほとんど不戦敗のような扱いを受けた。トヨタ・グループがBMWミニからディーゼル・エンジンの供給を受けていることは欧州では知られているので、“エンジン屋スバル”としては妥当な判断なのかもしれない。
かように、クルマの世界でのクールジャパンは「インフラ力」に拠るところが大きいが、高級車のインスパイアの源になった?!と思える例もある。メルセデスが『Vクラス』のPHEVコンセプトでトヨタ『アルファード』よろしく豪華キャプテンシートを奢ってみたり、ロールス・ロイスがこの季節に桜をあしらってみたり・・・・。
春遠からじ!のジュネーブショーは今年も楽しませてくれた。
文/南陽一浩
特筆すべきは、英国の自動車産業が復活し始めたことだ。コンセプトカーの内装に力強い提案がある。アストンマーティン初のSUVコンセプト『DBX』のアルミとレザーをあしらったワイルドな内装は、アストンに似つかわしいハンティングや乗馬、シューティング・ブレークといったカルチャーを連想させる。レザーとアルミだけでなく、カッパーをあしらうことで英国車独特の温かみを表現したベントレーの『スピード6EXP』も面白い。
ご存じの通り、英国の自動車メーカーは1990年代末から2000年代初頭にかけて、すべて外資企業の傘下に収められた。ミニやロールス・ロイスはBMW傘下だし、ベントレーはVWグループ、ジャガー・ランドローバーはインドのタタがオーナーで、アストンマーティンは2013年以来5%とはいえダイムラーの出資を受けている。
じつは手工芸的な高級車がブランドとして再成功するのに力あったのは、大衆車の成功といえる。BMWが主導した「プレミアム大衆車」ミニはもちろんだが、日産『キャシュカイ』は初代から主に英国サンダーランド工場で生産され、「英国車の生産台数」として初代ミニを超えたクルマでさえある。生産設備のみか、重要な開発プロセスやデザインも英国現地にローカライズし、自動車産業を再定着させた好個の例なのだ。
今回のジュネーブショーでは、プラットフォーム共有の理屈とはいえ、親会社ルノーが『カジャール』という、『キャシュカイ2』によく似たSUVクロスオーバーを披露した。欧州市場での『キャシュカイ2』のシェアに『カジャール』がどう影響するか、少しスリリングな展開といえそうだ。
また、日本車の欧州&ワールド・プレミア発表モデルの中で、意外な注目を集めたモデルは、三菱の『L200ピックアップトラック』だ。だだっ広い農場や牧場、漁業の現場といった欧州の第一次産業の現場で、他にも日産『ナヴァーラ』など、日本車のトラックは圧倒的な支持を誇る。安くて燃費がよくて壊れにくい、4WDのトラックは、足場の悪い現場でも牛馬のようによく働くからだ。
要は、欧州では日本車の得意分野は今も4WDだと思われているので、三菱がコンパクトなプラグイン・ハイブリッドSUVとして進化させたコンセプト『XR-PHEV II』、あるいは『ジムニー』や『ヴィターラ』に連なるマイクロSUVコンセプトとして、スズキの『im.4』も高い評価を得ていた。
逆に日本でヒット中のスバル『レヴォーグ』はDセグにも関わらず、今のところディーゼル・エンジンの用意がないため、現地メディアからほとんど不戦敗のような扱いを受けた。トヨタ・グループがBMWミニからディーゼル・エンジンの供給を受けていることは欧州では知られているので、“エンジン屋スバル”としては妥当な判断なのかもしれない。
かように、クルマの世界でのクールジャパンは「インフラ力」に拠るところが大きいが、高級車のインスパイアの源になった?!と思える例もある。メルセデスが『Vクラス』のPHEVコンセプトでトヨタ『アルファード』よろしく豪華キャプテンシートを奢ってみたり、ロールス・ロイスがこの季節に桜をあしらってみたり・・・・。
春遠からじ!のジュネーブショーは今年も楽しませてくれた。
文/南陽一浩