先日、ある中国の劇映画を見た。南京大虐殺を扱った2009年製作の大作「南京! 南京!」(陸川監督)だ。題材がデリケートな問題を扱っているので、これまで有志による特別上映会を除いて日本国内では未公開だった本作だが、実に簡単な方法で鑑賞することができた。動画投稿サイト「You Tube」に全編ノーカット、高画質の日本語字幕付きでアップされているからだ。
この動画は、「南京大虐殺で犠牲になった30万人の同胞を祈念する」との字幕から始まる。上映時間2時間15分の白黒作品で、1937年12月に陥落した南京城に旧日本軍が入城し、城内に残った国民党軍の兵士との戦闘や、市民を機関銃の掃射や生き埋めなどで大量虐殺する場面が描かれる。道端に遺体や生首がぶら下がっていたり、女児を階上の窓からほうり投げるシーンには衝撃を受けた。
城内には非武装中立地帯の「安全区」が設けられていて、ドイツ人のジョン・ラーベが現地民を保護しているのだが、性獣と化した日本人兵士が多くの中国人女性をレイプしたり、安全区を破壊すると脅迫して自主的に慰安婦100人を志願させる。慰安所では暴力で犯されたり、精神に異常を来して射殺されてしまう女性もいる。こうした非道な行為を平気でする日本人に好意を抱く鑑賞者がいるとは到底思えない。
本作を「抗日映画」と決めつけるのは誤りだとする指摘がある。その根拠は物語が中国側ではなく、旧日本軍の兵士、角川(中泉英雄)の視点で描かれているからだ。日本人娼婦とのロマンスも描かれるため中国国内では「媚日映画だ」との批判もある。だがよく映画を見ると、角川は旧日本軍の蛮行を非難する立場での狂言回しということに気づく。陸川監督は「戦争を反省している日本人がいるのかと聞かれれば『いる』と答えます。この点を認めても中国人が損をするわけではない。反対に世界からより尊敬を受けることになる」と語っている(「人民網」日本語版より)。
陸監督は、本作を撮るために北京市の抗日戦争記念館に保管されている写真や手紙などに目を通した。中国国内に多く建つ抗日記念館では旧日本軍の残虐性を強調する展示が行われ、その資料には“眉唾”なものもある。いわば反日宣伝の拠点であり、そこの資料を基にした映画に果たして信憑(しんぴょう)性はあるのだろうか。
ちなみに監督は1989~93年まで南京の大学に通い、4年間に3回、南京大虐殺記念館も訪れている。監督は「どうして南京大虐殺があったのか? それは私たちの抵抗がすさまじかったからだ。この映画は屈辱ではなく、中国人のかつての栄光を語るものだ。抵抗の火種は一度も打ち消されることはなかった」「私たちは埋没した事実を特に表現したかった。70年がたった。30万人の犠牲者のうち3人の名前を挙げてみてください。3人といわず、1人も挙げることはできないでしょう」と語っている(「人民網」日本語版より)。
何より目に焼き付いたシーンがある。慰安婦に志願し命を落とした女性たちの全裸死体を運ぶ場面だ。リヤカーを押す男たちの背中にはナチス・ドイツのハーケンクロイツ(かぎ十字)が書かれている。これはラーベがナチス南京支部の副支部長だったからだが、まるでユダヤ人の大虐殺(ホロコースト)を想起させるこれみよがしの演出には、旧日本軍とナチスを同一視させようという魂胆が見え隠れする。中国が安倍晋三首相をヒトラーに例えたり、南京事件をホロコーストと同一視させる宣伝工作と全く一緒だ。
この作品がYou Tubeに投稿されてから、再生回数は17万回を超えている。投稿者は中国人らしく「中日のネットユーザーに公平かつ客観的な場を提供することを趣旨としています」とコメントしている。投稿された経緯の詳細は分からないが、中国のプロパガンダだとしたら“反日効果”は抜群だ。(WEB編集チーム 伊藤徳裕)
この動画は、「南京大虐殺で犠牲になった30万人の同胞を祈念する」との字幕から始まる。上映時間2時間15分の白黒作品で、1937年12月に陥落した南京城に旧日本軍が入城し、城内に残った国民党軍の兵士との戦闘や、市民を機関銃の掃射や生き埋めなどで大量虐殺する場面が描かれる。道端に遺体や生首がぶら下がっていたり、女児を階上の窓からほうり投げるシーンには衝撃を受けた。
城内には非武装中立地帯の「安全区」が設けられていて、ドイツ人のジョン・ラーベが現地民を保護しているのだが、性獣と化した日本人兵士が多くの中国人女性をレイプしたり、安全区を破壊すると脅迫して自主的に慰安婦100人を志願させる。慰安所では暴力で犯されたり、精神に異常を来して射殺されてしまう女性もいる。こうした非道な行為を平気でする日本人に好意を抱く鑑賞者がいるとは到底思えない。
本作を「抗日映画」と決めつけるのは誤りだとする指摘がある。その根拠は物語が中国側ではなく、旧日本軍の兵士、角川(中泉英雄)の視点で描かれているからだ。日本人娼婦とのロマンスも描かれるため中国国内では「媚日映画だ」との批判もある。だがよく映画を見ると、角川は旧日本軍の蛮行を非難する立場での狂言回しということに気づく。陸川監督は「戦争を反省している日本人がいるのかと聞かれれば『いる』と答えます。この点を認めても中国人が損をするわけではない。反対に世界からより尊敬を受けることになる」と語っている(「人民網」日本語版より)。
陸監督は、本作を撮るために北京市の抗日戦争記念館に保管されている写真や手紙などに目を通した。中国国内に多く建つ抗日記念館では旧日本軍の残虐性を強調する展示が行われ、その資料には“眉唾”なものもある。いわば反日宣伝の拠点であり、そこの資料を基にした映画に果たして信憑(しんぴょう)性はあるのだろうか。
ちなみに監督は1989~93年まで南京の大学に通い、4年間に3回、南京大虐殺記念館も訪れている。監督は「どうして南京大虐殺があったのか? それは私たちの抵抗がすさまじかったからだ。この映画は屈辱ではなく、中国人のかつての栄光を語るものだ。抵抗の火種は一度も打ち消されることはなかった」「私たちは埋没した事実を特に表現したかった。70年がたった。30万人の犠牲者のうち3人の名前を挙げてみてください。3人といわず、1人も挙げることはできないでしょう」と語っている(「人民網」日本語版より)。
何より目に焼き付いたシーンがある。慰安婦に志願し命を落とした女性たちの全裸死体を運ぶ場面だ。リヤカーを押す男たちの背中にはナチス・ドイツのハーケンクロイツ(かぎ十字)が書かれている。これはラーベがナチス南京支部の副支部長だったからだが、まるでユダヤ人の大虐殺(ホロコースト)を想起させるこれみよがしの演出には、旧日本軍とナチスを同一視させようという魂胆が見え隠れする。中国が安倍晋三首相をヒトラーに例えたり、南京事件をホロコーストと同一視させる宣伝工作と全く一緒だ。
この作品がYou Tubeに投稿されてから、再生回数は17万回を超えている。投稿者は中国人らしく「中日のネットユーザーに公平かつ客観的な場を提供することを趣旨としています」とコメントしている。投稿された経緯の詳細は分からないが、中国のプロパガンダだとしたら“反日効果”は抜群だ。(WEB編集チーム 伊藤徳裕)
最終更新:4月26日(日)12時25分