住みたい街ランキングを徹底検証!「住みたい街」は「住みやすい街」なのか?
住みたい街ランキング(関東版)を検証
毎年、各不動産業者から「住みたい街」ランキングが発表される。街の人気を知るためには非常に参考になるランキングだが、はたして「住みたい街」イコール「住みやすい街」となるのだろうか?イメージだけで「住みたい街」が選ばれているのではないだろうか?
そんな疑問に答えるべく、「住みたい街」が本当に「住みやすい街」であるのかを検証してみたい。
住みたい街ランキングの概要
今回参考にしたランキングでは、関東(東京・千葉・埼玉・神奈川・茨城)に住む成人男女を対象に、「一人暮らし」「夫婦二人暮らし」「夫婦と子供の世帯」の三つの層と男女比にそれぞれ偏りが出ないように「最も住みたい街は?」とオンライン調査を行う方法を採用している。
この結果を基にした2015年度の総合的な「住みたい街」ランキングの1位は「吉祥寺」で、昨年度と変わらず安定のトップとなっている。2位の「恵比寿」も昨年度と同順位。3位は湘南新宿ラインの開通と増便で交通の便が格段に良くなった「横浜」で、昨年度5位からのランクアップを果たした。
4位は駅前一帯が再開発されさらに利便性を増す「目黒」で、昨年度の11位より飛躍的に順位を上げてきた。5位の「武蔵小杉」も交通の便の良さと東急線沿線最大級の大規模再開発で注目の街であり、昨年度9位からのベスト5入りだ。
この「住みたい街ランキング」は、確かに住みたい街の人気ランキングとしては最も優れた調査手法と言えるが、なぜ住みたいのか、どのようにメリットがあるのかなどの「住みやすさ」にはあまり踏み込んだ内容ではないともいえる。
ベスト5の「住みたい街」を、分析してみよう!
それでは、住みたい街「人気ランキング」上位5つの街が、本当に「住みやすい街」なのかを検証してみよう。
吉祥寺
適度な郊外感と、都心へのアクセスの利便性を併せ持つ街である「吉祥寺」。ゆったりと流れる空気は、住民でなくてもほっと落ち着ける雰囲気を醸し出している。歩いていける距離にある「井の頭公園」も、豊かな緑と憩いの場を住民に提供してくれる。
また吉祥寺にはJR中央線と京王井の頭線が乗り入れており、それぞれを利用して新宿駅や渋谷駅へ乗り換えなしに20分以内でアクセスできる、都心部のベッドタウン的存在だ。緑あふれる土地柄と交通アクセスの良さを考えれば、居を構えるには理想の土地と言える。
近年人気の高まりに比例して、地価やマンションなどの物件の高騰も話題になっている。武蔵野市は東京都内でも地価上昇率が高い地域としても知られ、特に吉祥寺駅周辺は都心部と変わらない地価の高さでも有名だ。駅前には商店街と大型商業施設が立ち並び、活気にあふれている。吉祥寺に住んでいてショッピングで困ることはまずないと言っても良いだろう。
また武蔵野市には有名私学中高もあるが、都心部への抜群の利便性を生かして、幅広い選択肢から教育の場を選ぶこともできる。子育て支援にも行政として非常に力を入れており、まちぐるみで子育てする街を標榜するなど教育環境においても非常に優れた街と言える。
ランキングトップにふさわしく、納得の「住みやすい街」であるようだ。
恵比寿
「恵比寿ガーデンプレイス」の完成後、急速に洗練され人気が出てきたのが「恵比寿」だ。徒歩圏内に代官山や渋谷、広尾といった高感度なエリアがあることも、その人気を高めている。JR山手線のほか東京メトロ日比谷線も利用でき、乗り換えなしで東京駅から横浜駅までアクセスできる抜群の立地である。
同じく徒歩圏内に都内でも有数の有名小学校、幼稚園、中学・高等学校、大学を多数擁し、教育環境は申し分なさそうだ。子どもの成長にあわせた最高の教育を、通学の不便を感じずに受けさせられるのだから、教育に力を入れたい親世代にとっては選択肢からは外せない街といえるのではないか。
ショッピング環境も充実している。高級食材から普段の日用品まで徒歩圏内ですべてこと足りてしまう便利さに慣れてしまうと、他の土地では物足りなく感じるかもしれない。そして、特筆すべきは公園の豊富さだ。駅から徒歩5分の恵比寿公園や景山緑地は、都心にあっても子どもたちにのびのびと遊ばせたいという親の願いをかなえてくれる。
ただ、この抜群な立地相応の地価が、実際に暮らす上でネックになってくるかもしれない。住みやすい街ではあるが、お金のかかる街でもあるといえる。
横浜
一大オフィス街であるみなとみらいに近接し、東京都心部へのアクセスも旅行の「横浜」。その人気には納得の魅力あふれる街である。
中華街や馬車道など、街全体が美しい観光スポットにあふれ、どこをとっても「絵になる街」だ。湘南新宿ラインの開通により、さらにアクセス性と人気を高めている横浜は、有名小・中学校、有名大学も多く教育環境も抜群。住民の教育に対する意識が高いことでも知られている。
最近では横浜駅周辺の神奈川区や中区の人口増が話題になっていることからも、横浜の人気度がうかがえる。そのほかにも、子育て支援の一環として「待機児童0の街」を目指し、2013年にその目標を達成したことは大きなニュースにもなり、本気で子育て支援を行う街「横浜」の底力をアピールすることとなった。
目黒
今まで品川と渋谷に挟まれてイマイチ影が薄かった「目黒」が、堂々のランクインを果たした。これは、目黒駅前の大規模な再開発事業による影響が大きいと考えられる。駅前の利便性の高い土地をバスの車庫などとして利用していた状況を打破し、活気ある街づくりをかつてない規模で実施している。ただ都会的に無機質にしてしまうのではなく、緑化とともに行っていく方法で、街は新しく、美しく変貌を遂げているのだ
目黒駅周辺の再開発以外にも、目黒川周辺の人気の上昇にも注目したい。映画やドラマなどでもたびたび撮影され、若い世代や女性たちの憧れの街としての「目黒」が確立されてきたのだ。
目黒の行政の特徴は、独自の自治会システムにある。目黒区全域を22の「住区」にわけ、こまめに交流を図ることで顔見知りになり、緊急時にはお互い助け合うとともに、不審者などの早期発見などを目指しているのだ。住区システムはすでに結果を挙げており、犯罪率は劇的に低下、火災時の死傷者もかなり減少している。優れた行政システム、都市部にあっても人との交流が暖かい街「目黒」。ここも人気で住みやすい街であることは、納得がいく。
武蔵小杉
東急東横線と湘南新宿ラインの二大人気路線が乗り入れる「武蔵小杉」。このほかにも多くの路線が乗り入れており、武蔵小杉駅は合計13の路線を活用できる交通の要所でもあるのだ。
武蔵小杉も近年、駅を中心とした大規模再開発事業が進行しており、整備された美しい街並みと等々力緑地公園や多摩川を望む開放感あふれる環境、そして近代的なタワーマンションの林立で、新しい街に生まれ変わろうとしている
武蔵小杉がある川崎市は、「子育て支援の街」としても全国的に有名だ。子どもが生まれる前からパパ・ママを対象とした講習会や交流会の機会を行政と民間が協力して準備し、生まれた後は預かり保育や一時預かり新生児サークルなど、子どもを持つ親が孤立しないような対策や支援を多数準備しているのだ。
この子育て支援制度は、子どもが小学生・中学生になっても続く。学校や学童施設で小学生や中学生が放課後活動できる場を提供するなど、働く親の立場に立った制度が非常にこまやかに用意されているのだ。
「住みたい街」ランキングの順位を飛躍的に伸ばしたのは近年であるが、武蔵小杉には「住みやすい街」の要素は以前からあったようだ。
住みたい街ランキングの結果は、、
「住みたい街」ランキングが、イメージ先行のみではなかったということがお分かりいただけただろうか。「住みたい街」は「住みたいだけの理由のある街」つまり「住みやすい街」でもあったのだ。
だが、「住みやすさ」の基準は一人ひとり異なるものでもある。実際に街に足を運んで、そこに漂う空気が自分に合うものなのかを確かめることが、自分にとっての「住みやすい街」を選ぶ一番の基準となるだろう。