女性の働き方を変える? 配偶者控除の見直しで変わるもの




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配偶者控除とは、収入の少ない配偶者がいる納税者に対して、所得金額のうちの一定額について所得税と住民税の課税を行わないことです。これまで主に想定されていた対象者は、パートタイムで働く妻を持つ正規雇用の夫。たとえば、妻の年収が103万円以下であれば、夫の所得から所得税38万円、住民税33万円が控除されます。このため、これまでパートタイムなどで働く女性が、配偶者控除を受けるために年収を103万円以下に働き方を「調整」するといった実態がありました。

 もともと、戦後の日本に多かった正社員の夫と専業主婦の妻という家庭に対して、税金の負担を軽くするための措置でしたが、現代の状況と合わなくなってきたのではないか、というのが見直し検討の理由です。まず、「配偶者控除見直し」賛成派の理由から見てみましょう。

■見直しに前向きな意見

 賛成派の意見は主に、配偶者控除は女性の働き方を制限するものであり、見直しは女性がより積極的に働くことにつながるというものです。

 病児保育などを行うNPO法人「フローレンス」代表の駒崎弘樹氏は、自身の記事(「女性は働くと罰ゲーム」税制の改正に、諸手を挙げて賛成する )や、インタビュー記事の中で賛成であることを明らかにしています。産経新聞のインタビューに答えた記事 の中では、「女性が働くことを阻害する要因は一刻も早く撤廃し、男女ともに働き、子育てができる社会をつくっていかねばならない」と語っています。

 また、西日本新聞のインタビュー に答えた、九州大大学院准教授の山下亜紀子氏は、配偶者控除という制度自体が、女性は家にいるものという家族のあり方を方向付けてきたと指摘。配偶者控除を見直しすれば、「(制度だけなくして)育児や介護を社会全体で支える仕組みをつくらなければ、困る家庭がたくさん出てくる」としながらも、「それでも早く廃止した方がいいと思うのは、制度がわれわれの価値観に大きく影響するから」と話しています。


見直しに否定的な見方

 反対派の理由として主なものは、専業主婦のいる家庭にとって実質の「増税」となり、負担が大きくなることです。配偶者控除は、働き手が限られている世帯のセーフティネットとなっている面があるというものです。さらに、配偶者控除は賛成派が言うような「女性の働き方の制限」につながらないはずだという主張もあります。

 経済ジャーナリストの荻原博子氏は、朝日新聞の取材に答えた記事 の中で、配偶者控除は女性の働き方につながらないと述べ、「なぜなら、配偶者控除の103万円を超えても、141万円までは配偶者特別控除が段階的にあるので、年間所得が1000万円以下の家庭なら稼げば稼ぐだけ家計にはプラスになります」と話しています。

 賛成派、反対派の意見に共通するのは、配偶者控除の見直しが今後の女性の働き方、家庭のあり方に強く影響する、という点です。また、配偶者控除の見直しが女性の社会進出を見据えたものなのであれば、現状ではまだサポートが足りないという意見は、賛成派と反対派の両方から聞こえてきます。サポートとは、子どもの預け先を増やすことや、介護の分担についてなどです。議論の行方を慎重に見守り、自分たちの生活がどう変わるのかを確認する必要があるでしょう。