


















世界一の「美容整形大国」である韓国のソウル市当局は、地下鉄の駅構内などに氾濫している整形手術の「前」と「後」を比較した大型広告の規制に乗り出す。
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フランス通信(AFP)が27日までに伝えた。宣伝合戦が激化するなか、顔を大きく変える大がかりな手術の失敗で死者が相次ぐなど、社会問題化しているためだ。整形への抵抗感がない国民からも、過剰な整形を煽る広告への非難が高まっているという。
■学校周辺では掲示禁止
「市民から、広告が容姿に関する強迫観念を増長させるとともに、見ていて不快になるといった苦情が増えている」
ソウル市の当局者はAFPの取材にこう語り、広告を規制する方針を明らかにした。
具体的には、地下鉄の駅構内に掲示する広告のうち、美容整形関連のものを20%以下に抑制するよう事業者に求める。広告内容も、術前と術後の写真やキャッチコピーが「過剰に扇情的」と判断した広告は掲示を禁止する。このほか、小・中・高校周辺のバス停では整形関連広告の掲示を禁止するという。
国際美容外科学会の報告によると、2011年に韓国で美容整形手術を受けた人は、人口1000人当たりで13.3人と世界トップ。韓国社会では、美男美女の韓流スターの整形が「公然の秘密」とされ、就職試験のために整形することも一般的になっている。
■手術失敗…社会問題化
宣伝合戦も激しく、ソウルでは地下鉄の駅やバス停はもちろん、電車内やバスの車体後部などに術前と術後の写真を使ったり、有名な外科医が登場したりする広告があふれている。
なかでも高級住宅地で人気のブランド店が立ち並ぶソウルの江南地区には約370もの美容整形外科院が集中し、「ビューティーベルト」と呼ばれ、中心部の地下鉄の狎鴎亭洞(アックジョンドン)駅では広告の半分以上を美容整形関連が占めるという。
しかし、今月初めに34歳の女性が鼻の手術中に窒息死したほか、30代の男性が顎の骨の手術から3日後に死亡するなどの重大な医療事故が相次いで発生。昨年12月には鼻を手術した女子高校生が昏睡状態に陥ったことも明らかになっている。
このため、整形ブームを助長する広告への非難の声が上がっていた。当局側も1月に、危険性が指摘されている「小顔手術」で削り取った骨片1000個以上をガラスケースに入れて展示しホームページでもPRしていた江南地区の医院に、罰金を科し撤去させるなど、宣伝合戦を問題視していた。
■外国人客「5倍に急増」
韓国の美容整形は、技術が高いうえに割安なことから、中国や東南アジア、日本からも多くの人が手術を受けるために訪れている。12年に美容整形目的で韓国を訪れた外国人は、3年前の09年から5倍に急増したとの報道もあるほどだ。
韓国政府は「医療観光」を推進してきたが、外国人が過剰広告でトラブルに巻き込まれる懸念も指摘されていた。
ただ、11年のソウル市の世論調査では、「容姿を良くするため顔にメスを入れることに抵抗がない」と答えた人が32%を占めたという。過剰広告がなくなっても、「外見至上主義」の風潮が続く限り、美しい容姿を手に入れようと整形に走る人々は減りそうにない。