<ロシア>制御不能か、プーチン大統領 ルーブル最安値更新



毎日新聞 12月16日(火)19時59分配信




 【モスクワ田中洋之】ロシアが債務不履行に陥った1998年の金融危機以来という通貨ルーブルの大幅下落を受け、プーチン大統領は経済のかじ取りに苦慮している。ウクライナ情勢に伴う欧米の制裁や原油安、インフレなど懸案が山積しており、苦境が続けば大統領の支持率に陰りが出る可能性もある。

 ルーブル相場は16日、一時1ドル=66ルーブル台をつけ、前日に続いて史上最安値を更新。15日には対ドルで約10%下落。1日の下落率としては金融危機(98年9月1日に18%下落)以来最大だ。年初来の下落率も5割に達し、世界の通貨でワーストとなった。当局は政策金利の引き上げやルーブル買い支えのための介入を繰り返しているが、「制御不能」(地元エコノミスト)の様相を強めている。

 またルーブル安に加え、報復措置として打ち出した欧米からの食料品禁輸の影響でインフレ率は10%近くに上昇した。市民は生活防衛で商品を買いだめするなど社会に影響が広がっている。

 ロシア中央銀行は15日、原油安が続けば2015年と16年は連続でマイナス成長になるとの予測を示した。一方、ロシアがウクライナから編入したクリミアを返還するつもりはなく、制裁解除の見通しは立っていない。

 プーチン大統領は「(制裁の)圧力に屈しない」と国内を引き締め、クリミア編入で跳ね上がった支持率は、直近の世論調査で85%と最高水準を維持している。だが、先行きの不透明感が強まる中、国民の不満が政権批判に転じる可能性は否定できない。