







産経新聞 11月9日(日)21時30分配信
男女が全裸でサバイバル 「ザ・ネイキッド」単なるイロモノではない“問題作”
ディスカバリーチャンネル「THE NAKED」(c) 2014 Discovery Communications, LLC.(写真:産経新聞)
「さっき会ったばっかりの女と、アフリカのど真ん中を素っ裸で歩いています」
サバンナやジャングル、無人島といった過酷な環境化で、全裸の男女がペアを組み、21日間のサバイバルに挑戦する-。そんな異色の番組「THE NAKED(ザ・ネイキッド)」(木曜午後10時)が、CSやケーブルテレビなどで視聴できる「ディスカバリーチャンネル」で放送されている。同チャンネルは米国発のドキュメンタリーチャンネルとして日本でもファンを増やしつつあるが、「MAN vs. WILD」など数々のサバイバル番組の中でも、この番組はとびきりの“問題作”といえそうだ。
番組に挑戦するのは、男女ともに軍隊や特殊部隊などでサバイバル訓練を積んだ経験者。だが、第1回の放送では、挑戦者から「とても正気じゃない」「シュール」といった言葉も飛び出した。裸の一部にはぼかし処理が施されているものの、実際、裸の男女が大自然の中を進む光景は異様としかいいようがない。
ただ、番組を視聴していくと、次第に裸が気にならなくなってくるから不思議だ。挑戦者2人には、水や食料を除くサバイバル道具(例えばナイフ)を1つだけ持つことが認められている。スタッフが介入するのは治療を要する場合など緊急時のみ。水や火、食料を確保しなければならないが、素足のために移動にも危険がつきまとう。
飢えや外敵、生傷や病といったさまざまな脅威に見舞われ、対立や和解を通じて絆を強めていく挑戦者たちは「アダムとイブ」と重なり、人間の根源的なもろさや生命力も伝わってくる。単なる“イロモノ”では終わらない娯楽番組に仕上がっているのは間違いない。
チャンネル日本法人のディスカバリー・ジャパンによると、番組プロデューサーは「出演者がもう少し身体を隠すと思っていたが、初日からサバイバルで羞恥心どころでなくなるため、どの出演者も裸であることを気にかけなくなるまでの時間が早く、結局、番組の最初から最後までモザイクをかけることになり、予想以上に編集作業が大変だった」と話しているという。
漫画家、さいとう・たかをさんの「サバイバル」をはじめ、過酷な環境でのサバイバル生活は、以前から数多くの作品の題材となってきた。日本でも、地上波を含めサバイバル番組はたまに放送されているが、もちろん、ここまで“さらけ出している”番組はない。
米テレビネットワーク、NBCの報道などによると、米国ではこの番組が火付け役となり、裸で買い物をするといったネイキッド(裸の)番組がディスカバリーチャンネル以外でも増えつつあるという。理由は不明ながら、複雑化、高度化した社会に生きる現代人が、生や身体感覚といった人間の“生身”を見つめ直したり、日常の空気を一変させたりするためには、ヌードという“劇薬”を用いるのが手っ取り早いということなのかもしれない。(三品貴志)
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ディスカバリーチャンネル「THE NAKED」は木曜午後10時に放送中。60分番組。全16話。同チャンネルは衛星放送の「スカパー!」や、「JCOM」をはじめとするケーブルテレビを通じて有料視聴できる。同チャンネルでは来年、「ザ・無人島生活」(全4話)、「ザ・秘境生活」(全9話)といったサバイバル番組の新シリーズも放送する。