芸妓さん、自治体が応援 観光の目玉に「お稽古代」支給

朝日新聞デジタル 9月15日(月)17時18分配信







芸妓さん、自治体が応援 観光の目玉に「お稽古代」支給


金沢では、普段は稽古場となる「検番」に客を招き、芸妓たちが三味線や踊りを披露する=金沢市東山1丁目


 伝統的な花街(かがい)文化の火を消さないようにと、金沢市など各地の自治体が積極的な支援に乗り出している。芸妓(げいぎ)の高齢化や人手不足に悩む置屋も多いなか、観光の目玉として守り続け、PRしていく狙いがある。

【写真】金沢市の行事で舞を披露する芸妓=金沢市東山1丁目


■金沢 1人あたり年間9万円

 金沢市の繁華街からほど近い「ひがし茶屋街(がい)」。日が落ちると、お茶屋の明かりがともり、笛の音がかすかに聞こえてくる。中の座敷では芸妓たちが、三味線や和太鼓に合わせて踊りやおはやしを演じる。

 芸妓は市などが主催するイベントにも招かれることもあり、季節に合わせた着物姿で優雅な舞を披露している。

 芸妓たちに、今年度から1人あたり年間9万円の「お稽古代」の支給を始めたのが金沢市だ。ひがし、にし、主計(かずえ)町(まち)3茶屋街の計41人に奨励金として支給する。石川県も昨年度から、1人当たり年間約14万円の支給を始めている。

 芸妓の数は約30年前と比べて半減し、約4割が60歳超というベテランだ。

 金沢・東山にある「ひがし茶屋街」の「福太郎」こと上山(かみやま)昭江さん(43)は22歳でこの世界に入った。稽古はほぼ毎日あり、東京の講師を含め6人の師匠がいるため、稽古代だけで毎月約10万円かかる。

 稽古の成果を披露する集まりの参加費用は月十数万円になることも。着物は稽古用、お座敷用、外出用と使い分ける。師匠へのお中元やお歳暮といった交際費もある。経費は年間100万円ほど。多い年は200万円もかかるという。

 「お座敷での報酬だけではまかないきれないので、補助金はありがたいですが、それでも厳しい」と話す。一方で「行政の支援でお金よりも大切な安心感を得られた」とも。「芸妓をめざす若い人にとっては親の理解を得るのも難しい。行政のお墨付きは親を説得する材料になるのでは」と期待する。

 金沢市観光交流課の担当者は「来春の北陸新幹線金沢開業を控え、今後は関連イベントなどに参加してもらう機会も多くなる」と話し、活躍の場を提供する形でも支援していく方針だ。
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朝日新聞社