なぜ日産から高級幹部の流出が相次ぐのか
東洋経済オンライン 2014/9/3 06:00 丸山 尚文
新車発表会の会場で記者の質問に答えるパーマー氏。日産副社長の座を9月15日付けで下りる
日産自動車からの高級幹部の流出が相次いでいる。
日産は9月2日、アンディー・パーマー副社長(51)が9月15日付けで退任することを発表した。パーマー氏は英国の高級自動車メーカー、アストンマーチンの最高経営責任者(CEO)に転身。その後任には、カルロス・ゴーン社長(60)の側近、フィリップ・クラン氏が仏ルノー副社長から転じる。
パーマー氏は、ゴーン社長に次ぎ、日産のナンバー2格を構成する、4人の副社長のうちの1人。ゴーン社長直轄下で商品企画やマーケティング、EV(電気自動車)事業などを統括していた。もともとエンジニア出身で、1991年に日産欧州法人に入社し、99年に日産が仏ルノー傘下に入った後の2002年、部長級で日産本社に移った。小型商用車事業の責任者として実績を上げ、06年に執行役員、09年に常務、11年に副社長と、トントン拍子に出世の階段を駆け上がっていた。
■ ゴーン後継者とみられていた
昨年11月に業績悪化で当時の志賀俊之・最高執行責任者(COO)が解任された際には、志賀COOから商品企画等の重要任務を引き継ぎ、ナンバー2格に位置づけられた。このことから、同じくCOO職務の一部を引き継いだ西川廣人副社長などとともに、ゴーン社長の後継者の1人と見る向きもあった。
離れたのはパーマー氏ばかりではない。
日産ではこの7月、高級車ブランド「インフィニティ」部門のトップだったヨハン・ダ・ネイシン氏が突然、米ゼネラル・モーターズ(GM)の高級車ブランド「キャデラック」部門のトップに転じたばかり。2カ月で最高幹部クラスの人材が競合トップに移るのは異常事態だ。
ダ・ネイシン氏は2年前、独フォルクスワーゲン(VW)傘下の高級ブランド「アウディ」の米国トップからスカウトした人材で、もともと流出する可能性は小さくなかったともといえる。しかしパーマー副社長は、日産で20年あまりのキャリアを積み上げてきた人材で、しかもナンバー2格だ。それだけにインパクトは一段と大きい。
ルノーのナンバー2もゴーンから離れた
ゴーン社長を巡っては、昨年、トップを兼務するルノーで、方針対立から更迭したナンバー2のカルロス・タバレスCOO(当時)が、仏の自動車大手・プジョーシトロエングループ(PSA)のCEOに転じている。この一件は、真っ正面からぶつかり合う競合トップへの転身とあって、業界に大きな衝撃を与えた。
巨額の報酬でも話題を呼ぶゴーン社長は、かねがね「世界中から優秀な人材を確保するにはグローバルレベルの報酬が必要であり、報酬を制限すると人材獲得に支障が出る」と述べるなど、巨額の報酬が人材確保に不可欠な投資であることを強調している。ルノー、日産の双方で相次いだ高級幹部の離反。ゴーン氏は今、十分な報酬を与えてこなかったことを悔やんでいるのだろうか。それとも自らの指導力に限界を感じ始めているのだろうか。
(撮影:今井康一)
東洋経済オンライン 2014/9/3 06:00 丸山 尚文
新車発表会の会場で記者の質問に答えるパーマー氏。日産副社長の座を9月15日付けで下りる
日産自動車からの高級幹部の流出が相次いでいる。
日産は9月2日、アンディー・パーマー副社長(51)が9月15日付けで退任することを発表した。パーマー氏は英国の高級自動車メーカー、アストンマーチンの最高経営責任者(CEO)に転身。その後任には、カルロス・ゴーン社長(60)の側近、フィリップ・クラン氏が仏ルノー副社長から転じる。
パーマー氏は、ゴーン社長に次ぎ、日産のナンバー2格を構成する、4人の副社長のうちの1人。ゴーン社長直轄下で商品企画やマーケティング、EV(電気自動車)事業などを統括していた。もともとエンジニア出身で、1991年に日産欧州法人に入社し、99年に日産が仏ルノー傘下に入った後の2002年、部長級で日産本社に移った。小型商用車事業の責任者として実績を上げ、06年に執行役員、09年に常務、11年に副社長と、トントン拍子に出世の階段を駆け上がっていた。
■ ゴーン後継者とみられていた
昨年11月に業績悪化で当時の志賀俊之・最高執行責任者(COO)が解任された際には、志賀COOから商品企画等の重要任務を引き継ぎ、ナンバー2格に位置づけられた。このことから、同じくCOO職務の一部を引き継いだ西川廣人副社長などとともに、ゴーン社長の後継者の1人と見る向きもあった。
離れたのはパーマー氏ばかりではない。
日産ではこの7月、高級車ブランド「インフィニティ」部門のトップだったヨハン・ダ・ネイシン氏が突然、米ゼネラル・モーターズ(GM)の高級車ブランド「キャデラック」部門のトップに転じたばかり。2カ月で最高幹部クラスの人材が競合トップに移るのは異常事態だ。
ダ・ネイシン氏は2年前、独フォルクスワーゲン(VW)傘下の高級ブランド「アウディ」の米国トップからスカウトした人材で、もともと流出する可能性は小さくなかったともといえる。しかしパーマー副社長は、日産で20年あまりのキャリアを積み上げてきた人材で、しかもナンバー2格だ。それだけにインパクトは一段と大きい。
ルノーのナンバー2もゴーンから離れた
ゴーン社長を巡っては、昨年、トップを兼務するルノーで、方針対立から更迭したナンバー2のカルロス・タバレスCOO(当時)が、仏の自動車大手・プジョーシトロエングループ(PSA)のCEOに転じている。この一件は、真っ正面からぶつかり合う競合トップへの転身とあって、業界に大きな衝撃を与えた。
巨額の報酬でも話題を呼ぶゴーン社長は、かねがね「世界中から優秀な人材を確保するにはグローバルレベルの報酬が必要であり、報酬を制限すると人材獲得に支障が出る」と述べるなど、巨額の報酬が人材確保に不可欠な投資であることを強調している。ルノー、日産の双方で相次いだ高級幹部の離反。ゴーン氏は今、十分な報酬を与えてこなかったことを悔やんでいるのだろうか。それとも自らの指導力に限界を感じ始めているのだろうか。
(撮影:今井康一)