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セクハラの被害を受けた時にまず、すべきこと






セクシャル・ハラスメントの被害を受けた時、どうすればいいか? その判断は実に難しい。唯一の正解はないかもしれない。今回は、その難しい決断をする前段階で、何をどうするべきかを考えたい。ここ10年ほど取材を通して感じてきたことをもとに、5つの対応策を考えてみた。もちろん、ここに記したことが正しいか、あるいは最善策かはわからないが、多少でも参考になればと思う。

1.まずは情報を集める

 まず、自分が受けた・受けている行為が「セクハラ」と呼べるものなのか、そうでないのか、と悩んだら、まずは情報を集めよう。インターネットや労働問題の本などで調べるとよい。ただ、私が確認している限りでは、書籍が情報の精度という点で他のメディアを上回っている。流れとしては、このような本を参照しながら、自らの置かれている状況のアウトラインを把握し、その後、インターネットなどで、例えば、弁護士、法律事務所、あるいは公的な機関のサイトで調べてみよう。弁護士であれば、日本労働弁護団所属の弁護士がおすすめだ。公的な機関だと、各都道府県の労政事務所(東京は東京労働相談情報センター)がよいだろう。

2.相談をするなら労働局雇用均等室へ

 現状を知り、明らかに「セクハラ」であると確信をもつことができて、相談に行こうと思ったら、各都道県にある「労働局雇用均等室」に電話をしてみよう。相手は厚生労働省の職員であり、守秘義務を守るといった教育訓練は受けている。情報が会社などに漏れることはない。おそらくその職員は女性である可能性が高い。男性なら、女性に代わってもらうのもいいだろう。女性の場合、女性に話すほうが精神的な負担が少なくなるケースが多い。

「労働局雇用均等室」は、労働基準監督署や労政事務所などよりも、セクハラへの対応がきちんとできる体制になっている。電話をしてみて、「この職員と会い、話を聞いてもらおう」と思ったら、日時を双方で決めて会うのもいいだろう。その際、名刺や身分証明書、セクハラの現状を紙に書き出してまとめたものを持参すると、信用されやすくなるはずだ。



3.即答せず、冷静に対応

 相談に行くと、職員から「会社に異議申し立てをしますか」と尋ねられるはずだ。つまり、雇用均等室の職員から会社に電話連絡などをして、話し合ったほうがいいのかと聞かれる。ただし、これは状況いかんで、即答はしないほうがいい。「YES」といえば、雇用均等室から正式に会社に話がいく。その先は、総務や人事部になる可能性が高い。そこから、雇用均等室で会社の総務部などと、職員、さらに本人(セクハラの被害を受けた人)との話し合いが始まる。

 私が取材をしてきた経験上、ここまで話が大きくなると、その後、被害を受けた人が何年も会社に残り、仕事をすることは難しくなる。相当に強い意思をもっていないと、職場で孤立をし、精神的に滅入ってしまうケースが多い。セクハラの被害を受けたほうなのに、なぜ、理不尽な扱いを受けるのか、怒りすら覚えるだろう。残念ながら、これは事実であり、納得がいかないという女性も多い。

 ここまでの流れを踏まえると、職員から「会社に異議申し立てをしますか?」と尋ねられた時には「少し考える時間をください」と言い、いったん保留して、数日間、考えてみよう。この段階では、職員に話を聞いてもらっただけで、冷静に考えることができているはずだ。

4.決断する前に、今後のことなどを考える

 考える際、雇用均等室に仲介に入ってもらった後のことを冷静に考えよう。会社に残るのか、それとも辞めるのか、辞めた後の収入はどうするか、などだ。取材をしていると、セクハラを受けた被害者は相手や会社に復讐をしようとするあまり、冷静にその後のことをあまり考えていない人が多いようにみえる。

 仮に、会社に非を認めさせたところで、セクハラの加害者は最終的に会社に残る可能性が高い。さすがに、同じ部署で2人が仕事をする可能性は低いだろうが、結局、体制などは大きくは変わらない。このあたりのことまで含めて、冷静に考えよう。会社の上層部が、「社内の話を第三者(雇用均等室)に持ち出した」として、人事評価などで意図的に低く扱われる可能すらあるということを覚えておきたい。

5.同僚女性に相談してみる

 それでも迷ったら、特に同性である女性の社員と昼を食べる時などに、事情を説明し、話を聞いてもらおう。女性社員は巻き添えになりたくないと思い、踏み込んだことは口にしたがらないかもしれない。だが、早いうちにその話を他の女性社員などに話し、ウワサが広まっていくはずだ。それは、好ましい展開といえる。セクハラをする相手も会社員である以上、噂になることを警戒する。被害を受けている側からすると、その噂がどんどん大きくなるほうがいい。その状況を見つつ、今後のことを考えたい。

 セクハラは放置しておくと、一段とエスカレートすることがある。早いうちに対処し、1〜5までの対応を考えて、一刻も早く対処するように心がけたい。

文/吉田典史