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プロ登山家も納得、機能美を極めた 登山用腕時計「プロトレック」

産経新聞 8月17日(日)12時30分配信







プロ登山家も納得、機能美を極めた 登山用腕時計「プロトレック」


プロの登山家の要望に応えて実用性を形にした「PRW-6000Y」(写真:産経新聞)


 富士山の世界文化遺産登録などで盛り上がる登山ブーム。来年1月に発売20周年を迎えるカシオ計算機の腕時計「PRO TREK(プロトレック)」シリーズは、高度な計測性能を実現するセンサー技術と使いやすさで登山用腕時計の市場を切り開いた。開発陣は、プロ登山家の要望に技術力で一つ一つ答えを出し、“機能美”を極めていった。

 今年3月に発売された最新機種「PRW-6000Y」。デジタルだけだったプロトレックブランドに初めてアナログを併用した前機種「PRW-5100」の進化版だ。

 カシオ計算機は、主力ブランド「G-SHOCK」など高機能なデジタル時計で人気がある。「アナログで知り、デジタルで読む」というコンセプトのPRW-5100は、残り時間を針の角度で感覚的に把握したいというアナログファンの心をつかんだ。ただ、高度や気圧、方位などを表示する液晶デジタル部分に時針や分針が重なると「見えにくい」という利用者の声もあった。

 PRW-6000Yは、時・分・秒を含めた計4本の針がそれぞれ別のモーターで独自に動く。針が液晶デジタル部分に重なった場合、操作一つで針が瞬時に動く「針退避機能」を採用し、表示された数値を見やすくした。腕時計本体の厚さはPRW-5100より約10%も薄い。ガラス周囲のリング(ベゼル)は、アウトドア用腕時計特有の積層感を生かしながら、アルミニウムを使用してより薄く改良。デザインセンター第6デザイン室の小島健二氏は「針からガラスの裏面までの高さを低くするなど、コンマ数ミリの積み重ねで薄くできた」と振り返る。

 プロトレックの誕生した年に入社した、モジュール開発部モジュール企画室の牛山和人氏にとって、「薄い」登山用腕時計の開発には特別な思いがある。アドバイザー契約をしているプロ登山家の竹内洋岳氏から「厚すぎる」といわれ、プロトレックを腕に巻いてもらえなかったからだ。プロからの厳しい批評に応えようと試行錯誤の末に完成したPRW-6000Y。「今回は竹内さんから合格をいただいた」(牛山氏)と喜びをかみしめる。

 さらに、牛山氏らモジュール開発部が挑戦し、完成させたのが、ソーラーパネルと各種測定機能を向上させた最新技術「トリプルセンサーVer.3」だ。

 プロトレックが発売された平成7年の初代トリプルセンサーは内蔵電池のみだったが、14年にソーラーパネルを採用した2代目が誕生。しかし、電力消費を抑えるために、高度は5メートルごとでしか測れず、計測してから液晶に表示されるまで約5秒かかっていた。

 3代目の今回は、小型化と低電力化で性能を大幅に向上させた。高度計のセンサーは、1メートルごとに測れるように改良し、液晶に表示されるまでの時間も1秒を切った。

 プロトレックの発売当時、アウトドアスポーツや登山は今ほど注目されていなかった。だが、現在は米国やイタリアなど計115カ国・地域で販売されている。マーケティングを担当するSP戦略部時計SP室の軽込朋義氏は「これからは日本を代表するライフスタイルブランドとして、世界に広げていきたい」と意気込む。(鈴木正行)

 プロトレック カシオ計算機が平成7年1月に発売した登山用腕時計ブランド。最新製品「PRW-6000Y」は、わずかな光でも発電する高効率ソーラーパネルと内蔵の2次電池との組み合わせによる電力供給システムを採用。定期的に電池を入れ替える必要はなく、方位、気圧、温度、高度を高精度に計測し、液晶表示などで表現できる。10気圧防水仕様で悪天候などでも高い防水性を発揮する。価格は6万4000~9万5000円(税別