<露元中佐暗殺>英、公聴会の設置決定 露不信で方針転換

毎日新聞 7月22日(火)15時1分配信



 【ロンドン小倉孝保】元ロシア連邦保安庁(FSB)中佐、アレクサンドル・リトビネンコ氏(当時43歳)がロンドンで2006年11月、放射性物質によって暗殺された事件で英内務省が公聴会の設置を決めたことが21日、わかった。真相究明のため同氏の妻、マリーナさん(52)が求めていた。英政府はこれまで、ロシアへの配慮から公聴会設置を拒否してきたが、ウクライナ情勢を巡り欧米にロシアへの不信が深まったことが、英政府の方針転換につながったようだ。

 英内務省が21日、一部関係者に伝えた。22日に正式に発表する。英国の公聴会は政府から独立し、関係者を聴取したり秘密文書の公開を求める権限が与えられている。公聴会設置時期は不明。

 ロンドン警視庁によると、リトビネンコ氏は06年11月1日午後、ロンドン市内のホテルでお茶を飲んだ後、体調を崩して入院し同月23日、死亡した。尿から猛毒の放射性物質ポロニウムが検出された。

 警視庁は07年、ポロニウムの追跡結果や監視カメラの映像から、リトビネンコ氏とホテルで会い、事件後ロシアに帰国した元ソ連国家保安委員会(KGB)職員ら2人を暗殺犯と断定しロシアに身柄の引き渡しを求めた。ロシアはこれを拒否した。

 事件を巡ってはマリーナさんが昨年9月、司法審査という手続きを使い王立裁判所(日本の高裁に相当)で公聴会設置を内務省に要求した。しかし、内務省は、▽公聴会が設置された場合、英露関係に決定的な悪影響を与える可能性がある▽公聴会には多額の費用がかかる--ことなどを理由に設置を拒否した。

 これに対し英王立裁判所が2月、公聴会を設置しない内務省の理由は十分ではないと判断したため、内務省はさらなる理由を説明するか、公聴会を設置するかを迫られていた。
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最終更新:7月22日(火)15時1分