フランスに続きベルギーで象牙を破壊

ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト 4月11日(金)21時9分配信







フランスに続きベルギーで象牙を破壊


ベルギー、テルフューレンの王立中央アフリカ博物館で4月9日、欧州象牙を粉砕する税関職員。 (PHOTOGRAPH BY JULIEN WARNAND EPA)


 4月9日朝、ベルギーは、米国、フランス、ガボン、チャド、中国、ザンビア、フィリピンに続き、象牙在庫を破壊する国に仲間入りした。

 首都ブリュッセル近郊のテルヒューレンにある王立中央アフリカ博物館の敷地で、1.5トンの象牙が粉砕された。

 このイベント開催に協力した国際動物福祉基金(IFAW)の欧州コミュニケーションディレクター、アドリアン・ヒール(Adrian Hiel)氏によると、2013年11月に米国が6トン近くの象牙を粉砕した後、同基金がベルギーにも同様の措置を取るよう提案すると、同国は即座に合意したという。

 ヒール氏によると、象牙の破壊は象徴的なメッセージを発するだけでなく、経済的にもメリットがある。「国家にとって費用の節約になる。絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(CITES)の規定により、押収された象牙の販売は禁じられており、政府には象牙の保管義務が生じるが、それには費用がかかる」。

 さらに、こうしたイベントを開催することで関係者が集まり、具体的な対策について議論する機会も得られる。

 今回のベルギーの象牙粉砕は、4月10日にブリュッセルで開催された「野生生物の取引についての欧州の取り組みに関する会議」(Conference on The EU Approach Against WIldlife Trafficking)と時期を同じくする。欧州の約160に及ぶ政府代表、司法、国際組織、研究機関が一同に会し、野生生物の違法取引に対して欧州が国内および世界レベルでどのように取り組んで行くかが話し合われた。

 今年初頭、欧州議会はゾウの密猟を非難し、すべての象牙販売の停止を求める画期的な決議を採択した。

 野生生物保護学会(Wildlife Conservation Society)の欧州政策および政府間関係ディレクター、ジャニス・ウェザリー・シン(Janice Weatherley Singh)氏は、この決議は法的文書ではないものの、非常に強い政治的メッセージを欧州委員会へ伝えるものだと述べた。

 シン氏によれば、現行のEUの政策にはいくつかの弱点がある。「この問題に対し様々な法的手段があるが、全体的なアプローチが明確ではない。また、法律は整っているが、その有効な実施が伴っていない。われわれは、より強力なアクションプランを求めている」。

 ただし、象牙の粉砕に反対する声もある。香港の英字紙「South China Morning Post」は最近の論説記事「Destroying ivory may make illegal trade more lucrative(象牙破壊は違法取引の利益を高める)」で、「象牙破壊で実際に伝わるメッセージは、違法業者に売買市場の支配権を与えるということだ。象牙の在庫を持つのは密売人だけになるのだから」と述べている。

 しかし、ナショナル ジオグラフィックにたびたび寄稿しているライター、ブライアン・クリスティ(Brian Christy)氏は、過去における象牙の破壊は有意義な政策の転換をもたらしたと指摘する。ケニアは、1989年に象牙在庫を焼却した後、国際象牙取引の全面禁止提案に賛成票を投じた。

 在庫象牙をただちに破壊するよう各国に要請することは、密猟・密輸やその売買を阻止するために、国としてどのような措置を取るのかを問うことだという。

Christina Russo for National Geographic News