<強制連行>中国河北省149人提訴 中韓弁護士が連携

毎日新聞 4月2日(水)22時4分配信



 【石家荘(中国河北省)工藤哲、北京・井出晋平】日中戦争時に強制連行され日本で過酷な労働を強いられたとして、中国河北省に住む中国人被害者や遺族ら149人が2日、三菱マテリアルを相手取り謝罪や賠償を求める訴訟を河北省高級人民法院(高裁)に起こした。提訴には同様の裁判を韓国で手がけた韓国人弁護士ら3人も同行。原告側は提訴後石家荘市内で集会を開き、訴訟を巡り中韓の関係者が連携し、関連の日系企業に対する圧力を強める方針を確認した。

 訴えでは、同社に対しメディアでの謝罪広告掲載や1人当たり150万~200万元(約2500万~約3350万円)、総額2億2700万元(約38億円)の賠償金支払いなどを求めた。当初は約100人の予定で、賠償額も100万~150万元(約1700万~約2500万円)だったが、その後賛同者が増え、より高位の裁判所での受理を目的に賠償額が引き上げられた。三菱マテリアル広報・IR部は「事実を確認中でコメントできない」と話している。

 原告側は提訴後、石家荘市内で集会を開催。原告を支援する張士謙弁護士は「韓国の経験や技術が参考になった」と話し、韓国人の張完翼(チャン・ワンイク)弁護士は「中国の被害者のために尽力したい」と語った。

 また、集会では、日本で「軍艦島」(長崎県・端島)の世界文化遺産登録を目指す動きがあることについて、出席者が「第二次世界大戦時に多くの強制労働があった場所だ」と強くけん制した。

 中国に進出する日系企業の間では、強制連行訴訟の対象になる可能性がある企業が限られているため、現時点で大きな動揺は見られない。だが北京の法院が3月、これまでの方針を転換して訴訟を受理したことを受け「日系企業に対する他の政策にも及ぶ可能性がある」(日系精密機器メーカー)として、警戒を強める企業も出ている