年金12万円の夫婦が「リッチな老人ホーム生活」をできた意外な理由

7/28(日) 9:01配信

現代ビジネス

年金12万円の夫婦が「リッチな老人ホーム生活」をできた意外な理由

写真:現代ビジネス

老後は「毎月5.4万円不足」がリアルな現実

 95歳まで生きるには、年金だけでは足りなくなり、夫婦で2000万円の蓄えが必要だと金融庁の審議会が試算した「老後2000万円問題」が大騒動になりました。

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 自分たちが働いたお金で年金を払い続けたうえ、100歳まで自分の年金で不安なく生活できると説明されてきたわけですから、いまさら足りないと言われても話が違うと言いたくなるのは当然でしょう。

 けれども、審議会のレポートの内容をよく読んでみると「今の65歳の高齢者世帯の生活費の平均は26万円程度で、年金では月の赤字が約5.4万円」とのこと。

 その後、30年生きるとすれば、5.4万円×12か月×30年=1944万円となります。よって2000万円足りなくなるという計算です。つまり、2000万円が「まとまって必要」ということではないのです。

 しかも、65歳から夫婦ともに95歳まで生き、同じ生活レベルだったとすればということが前提となっています。長寿社会になるとはいえ、60代の生活レベルで30年を計算することが現実的でないかもしれません。

退職後に働いて稼ぐ、は簡単か?

 それでは、毎月の不足5.4万円を補填することを考えると、どういう方法があるでしょうか? 
 「収入を増やすこと」が、第一に思い浮かぶところでしょう。仕事をしている現役時代は足りない状況はないでしょうから、仕事の収入がなくなるリタイヤ後をどう乗り切るかということがポイントになります。ならば、65歳をすぎてもできるだけ長く現役を続けるというのが理想的だということになります。

 夫婦で月額5.4万円程度の収入を得るのはできそうに思えるかもしれませんが、しかし、健康がともなってこそで、働く気があっても働く場がみつからないということもあるでしょう。なので、やはり、早めにめどをつけてしまいたいところです。

 そこで考えたいのは、自宅の活用です。

年金12万円の夫婦が「リッチな老人ホーム生活」をできた意外な理由

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老後は「自宅を売る」が正解…?

 かつて子供たちと生活するための自宅は、それなりに広さや間取りが必要だったことでしょう。

 一方で、子どもたちが成長して独立した今でも同じ家に住み続けている人が大半。

 戸建て住宅に夫婦二人で、二階はほとんど使っていない、子供が残した荷物置き場となっている状況をよくお聞きします。

 そろそろ庭の手入れが大変になってきたり、80代になると車庫も不要になったりします。

 そのままの状態でいずれひとり暮らしになり、やがて、二人とも亡くなった場合は、空家となることが多いのですが、それでも子供たちに相続させたい、家を残してもらいたいと思う方が多いのが現状です。

 もちろん、子供に財産をそのまま残そうとする心情もよく理解できますが、そもそも自分たちの家族で住んでいた頃とは状況が違うので、そのまま相続させたい、残してもらいたいというのが難しいことでもあります。もっと現実的な財産の活かし方を考えた場合、使わない部屋や庭や車庫を持ち続けるよりは、家族に合わせてサイズダウンすることが必要でしょう。

 長年住んだ家は役割を果たしたと考えて、必要な人に譲り、自分たちは駅に近いコンパクトなマンションやケア付きの高齢者住宅に住みかえていくのが必要な時代だといえます

 

 

90代「国民年金」夫婦が成功したケース

 90代のAさん夫婦は、3人の子供とは同居せず、80歳まで店舗付き住宅で衣料品の販売をしていました。

 お店を閉めた後もそのまま2階で暮らしていましたが、90歳になると階段を使う生活が負担となり、骨折したことで思い切って夫婦で介護付きの老人ホームに転居しました。父親から後を託されたと60代の子供3人が当社に相談に来られましたので、子供たちも住まない老朽化した自宅を売却することをご提案したのです。

 Aさん夫婦は自営業でしたので、国民年金で、夫婦で月額12万円ほどの支給で、いままでは困ることはなかったようですが、老人ホームに入ると1人20万円はかかり、やはり年金だけでは足りません。

 預金はふたりで1000万円で、このままでは数年でそこをついてしまうため、不安です。こうした不安をなくすためにも家をそのままにせずに、売却して使えるようにする必要があります。

節税もできる

 Aさんも納得されて、9000万円で売却できました。そのまま空家にしていても、価値は実感できませんが、売却することが使える財産となり、価値が実感できるといえます。

 さらに相続税の節税、分割のしやすさなどを考慮して、3つの区分マンションに分けて購入することを提案しました。お金のまま保有すると節税効果がないため、相続で相続税を課税されて減ってしまうのです。

 しかし、もう一度賃貸不動産にすれば、評価も下がり、貸付用の特例も使えるようになります。子供たちもAさんも理解されて、対策が進みました。

 資産組み替えができた翌年に、Aさんが亡くなりましたが、相続税の申告は必要だったものの、貸付用の特例を生かすなどして、相続税の納税は不要となりました。母親には基礎控除の範囲内としてあるため、二次相続の対策もできています。3人の子供たちはAさんや母親が理解を示してくれて、協力できたからこそではありますが、早めに家を売って対策しておけてよかったと言っておられました。

 仮にそのまま空家として保有して相続になった場合、老朽化した建物の修繕費など維持費がかかり続けるため、生前でも負担になります。相続になっても、子供で小規模宅地等の特例を使える子がいません。万一、母親が先に亡くなった場合、特例は使えないため、相続税を払うために売却が必要となり、後手後手となれば財産の目減りは想定できるところです

 

 

「持っているだけ」では増えない時代

 「土地さえ持っていれば財産」、「土地は値上がりする財産」という時代が長く続いていましたので、高齢の方は、買った土地や持っている土地を守ることが使命だと苦労を抱え込んでおられるように見受けられます。

 しかし、土地もお金も持っているだけでは増えない時代になりました。

 財産は持つことに価値があるというよりは、活用して使えるようにしたり、収益を上げて、生活の潤いにしていく時代になっているのです。

 こうした時代に対応するには、持ち続けている土地をずっと守っていくことから解放されるという決断も必要だと言えるのです。

 自宅として住んできた家も、役割を終えたのであれば、持ち続けることはやめて、住み替えが必要な時代です。遺言書で「土地を守るように」とすることは酷な場合もありますので、発想を変えることで、不安も解消できることを考えてみましょう。

 自分の財産を賢く活用すれば、生活費が足りないという事態にならず、不安なく快適な生活ができるのです。100歳までの長寿社会ですので、ノープラン、現状維持のままで不安があり、生活費が足りないと言う事態にもなりかねません。プランは個々の事情や気持ちに合わせてオーダーメードになりますので、いくつもの可能性があるはずです。これからの生活や相続のためのプラン作りを家族や専門家と一緒に考えてみてはいかがでしょうか。

 

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190728-00066078-gendaibiz-bus_all&p=3

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曽根 恵子