前・モデルを聞いたことがありますが、
本当に、すばらしいスピーカーです。
日本の誇りです。
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TAD、“進化より深化”を目指した新フラグシップ「TAD-R1TX」。天童木工とエンクロージャーを共同開発
https://www.phileweb.com/news/audio/201906/28/20973.html
編集部:押野 由宇
テクニカル オーディオ デバイセズ ラボラトリーズ(TAD)は、“Referenceシリーズ”のフロア型スピーカー「TAD-R1TX」を、7月下旬より発売する。価格は5,000,000円/1本(税抜)。
Referenceシリーズのフラグシップモデルとして評価されてきた「TAD-R1」、「TAD-R1MK2」の系譜を引き継ぐモデル。「HIGH END MUNICH 2019」でも参考出展されたモデルが、正式に発表された格好だ。
次世代を担う新たなフラグシップとして同社の技術を結集するとともに、高級家具メーカー「天童木工」と共同でエンクロージャーを制作。音質向上だけでなく、モノとしての価値を高めたとする。なお、従来モデル「TAD-R1MK2」の価格は3,675,000円/1本であり、価格は大幅に上がった。
ドライバーには広帯域で、駆動ユニットの位相と指向性をコントロールする同軸スピーカーのCSTドライバーを採用する。トゥイーターとミッドレンジの音響中心を同一とすることで、クロスオーバーにおける位相特性と指向特性を一致させ、250Hz〜100kHzという超広帯域再生能力と全帯域にわたって均一に減衰する指向放射パターンを両立。明確で安定した定位と自然な音場空間表現を実現したとしている。
トゥイータードームとミッドレンジコーンにはベリリウム振動板を採用。これは独自の蒸着法で加工されており、優れた材料強度や均一性、高域共振の減衰特性を実現した。ミッドレンジには直接放射型の蒸着ベリリウム振動板として最大級の口径16cmコーンを採用し、トゥイーターの形状設計にはコンピューター解析による独自の最適化手法「HSDOM(Harmonized Synthetic Diaphragm Optimum Method)」を採用。分割共振を的確にコントロールし、100kHzまでの超広帯域再生、そして広帯域にわたり透明感のある音を実現したとのこと。
25cmのコーン型ウーファーには「TLCC 振動板」を採用。これは航空機などで使用されている軽量高剛性な発泡アクリルイミドをアラミドファイバーで挟み込む構成を採ったもので、反応が速くカラーレーションのない素直で豊かな再生を実現するという。また発泡アクリルイミドとアラミドファイバーを個別に成型し、織布のもつ異方性の特徴を生かすラミネート方法で加工することで、軸対称モードの共振も低減させ、CSTドライバーの音色を活かすチューニングを施した。
またウーファーの磁気回路には独自のショートボイスコイルタイプOFGMS回路を採用し、33mm長のロングギャップ間の磁束密度を均一化した。また、サスペンション系でも、独自のコルゲーションエッジを採用。これにより幅広い振幅時の動作を安定させ、高い駆動リニアリティを実現するとともに、高いリニアリティをも確保している。
ポートシステムにはホーンの流体設計を応用した、フレア形状のポートシステムを採用しており、風切り音の低減に成功。大入力・大振幅時にもユニットがストレスなく駆動し、S/N の良い澄んだ低音を再生するという。
エンクロージャーは、1940年に山形県天童市で創業した日本を代表する高級家具メーカーである天童木工と共同制作。日本古来より伝わる匠の技術を活かした成形・加工方法により、高い制振効果と強度を持つTADの “SILENT エンクロージャー” をより強固に仕上げた。
具体的には、異素材を組み合わせたラミネート構造材をエンクロージャーに使用し、横隔壁を骨格にするとともに周囲を強固なパネルにするなどフレーム構造とモノコック構造のメリットを活かすことで、静的・動的強度と制振効果を最大限に高めた。
またエンクロージャーは厚さ21mmのバーチプライウッド(樺合板)で強固な枠組みを構成し、高周波加熱プレス成型した厚さ 50mm の側板を張り合わせて形成。ティアドロップ形状を継承しつつも、スピーカーヘッド部分を丸みのある形状にすることで強度を高め、音の回折をさらに低減し、不要共振と内部定在波の排除も図っている。
外装色は、ダイアフラムに使用しているベリリウムの原料である希少鉱石「ベリル」に由来する、深みのある緑の宝石をイメージした「エメラルドブラック(TAD-R1TX-EB)」とベリリウムから成る赤い宝石をイメージした「ベリルレッド(TAD-R1TX-BR )」の2色をラインアップする。
再生周波数帯域は21Hz〜100kHzで、クロスオーバー周波数は250Hz/2kHz、出力音圧レベルは90dB(2.83V・1m)。公称インピーダンスは4Ω。外形寸法は554W×1293H×698Dmm、質量は150kgとなる。
同社は本日、メディア向けに製品発表会を実施。その模様を以下にお伝えしたい。
不可能だと考えていたことを実現、フラグシップにふさわしい仕上げに
発表会では冒頭、同社 代表取締役社長の永畑 純氏が挨拶に立ち、ブランドの歴史について紹介。「1937年にパイオニアが日本初のダイナミックスピーカーを開発し、ここから歴史が始まった。それをTADも受け継いでいる」と述べた。
TADは1975年にプロジェクトが発足し、民生用のTADLは2007年に設立し「TAD Reference One」をリリース。2012年にはその第二世代となる「TAD-R1MK2」が発表されたが、今回の「TAD-R1TX」は、そのフラグシップを7年ぶりにモデルチェンジした同シリーズ最新機だ。永畑氏からはブランドのシリーズ展開について「Evolutionは昨年『TAD-E1TX』などを発表したが、今年はReferenceの強化を図っていく」と語られた。
TAD-E1TXの特徴として、天童木工との初コラボレーションで共同制作されたエンクロージャーが挙げられた。「皇族や各官庁への家具の納品でも知られる」など技術力の高さに触れ、その匠の技術を取り入れることで、SILENTエンクロージャーはさらに強固なものに進化したという。
開発を担当した長谷 徹氏によれば、エンクロージャーは「形状の見直しから行った」としており、その方向性としては「進化より深化を目指した」という。MK2での音場の広がりに加え、TXでは3次元的な音場表現を高めることを目標とし、ブランドのサウンドコンセプトでもある「音像と音場の高次元での両立をさらに推し進めた。
天面部に大きなアールを設けることで二次音源の発生を抑制する、ヘッド部の形状変更によって体積を減らすようにモディファイするなど、「実はRreference1の開発当初にやりたかったこと。これが天童木工の高い技術によって実現した。天童木工とは10年前から開発について話をしてきたが、それがようやく実った」としており、今回の共同制作が大きな成果につながったことを明かした。
エンクロージャーの内部構造として、骨組みはバーチで強固に作りつつ、若干やわらかいMDFで周りをダンプすることで鳴かないような構造を採られているが、そこでも極めて高い工作精度により制振効果を向上。また天然木ポメラサペリの突き板を用いた仕上げには、全30の塗装工程が時間をかけて行われているなど、天童木工が「不可能だと考えていたことをその技術で可能にしてくれた」という。
ポメラサペリの美しいカラーバリエーションも高い技術力により実現している
ユニットでは、継続してCSTドライバーを搭載。広帯域幅にわたり駆動ユニットの位相と指向性をコントロールした同軸ユニットとなるが、そのメリットとして音源位置を合わせられることで位相・指向特性にみだれがないことが挙げられた。
一方、ウーファーは低域の微小レベルの応答性向上と、低域特性のさらなる最適化が図られた。Reference Oneで開発されたものがベースとなるが、そもそもが20Hzで90dBを再生できるよう設計されたものとなっており、実際の使用においてはそこまで振れていることがほぼないということから、今回その振幅を削ってでも実使用におけるリニアリティを高めることを目指し手を入れたという。
これまでのサスペンションに対し、ダンパーを変更。また磁気回路も変更し、駆動力を4%向上させた。さらに、ボイスコイルの接着において、接着層を介さず、ボイスコイルがコーンをダイレクトに駆動するように接着しており、ショートボイスコイルでありながら強度を保つことにも成功している。
ボイスコイルの補強材料などにも手を入れ、1グラムの軽量化に成功するなど、細部まで徹底的にこだわった
そしてネットワークフィルターについて、MK2が意識的に位相をずらしてエネルギーを増す方向で作られていたのに対し、今回は位相を近づけて、音場表現を高める方向を目指したといい、クロスオーバー以下のミッドレンジの振幅を抑え、150Hz〜500Hzで-6dBほど歪みを改善したとのことだ。
発表会ではTAD-R1TXのサウンドも確認できたので、簡単にその印象に触れておきたい。なお、その再生システムとして、「TAD-M600」の後継にあたるアンプが用いられた。TAD-M600はモノラルアンプだったが、後継モデルはステレオとモノラルの2モデルをラインナップ予定であるという。
男性ボーカル、女性ボーカルともに、誇張されていない生々しく深みのある声が響き、子音まではっきりと聴き取ることができる。電気的な介入を感じさせないようなナチュラルなサウンド。眼の前の生演奏を聴くのに対しては、録音されたメディアである以上、制作過程で失われた成分があるはずだ。しかし、収録されたすべてを引き出すことができれば、その欠落を意識することはなくなるのだと、その圧倒的な情報量が教えてくれるように感じた。
多数の弦楽器が空気を震わせるエネルギーも、余裕を持って再現。一方で、弓が弦から離れる際のわずかな音も埋もれることなく再生してくれる。これは試聴したのが優秀な録音盤ということも関係しているだろう。言い換えれば、音源の良し悪しも暴き出してしまうほどに高次元な再現性能を有している