それは、七月も去っていこうとするある夏の日のことであった。
私はただ、
疲れ果て乾いていた。
どこまでも目の前に広がるフロア。
親子連れ、
カップル、
若者のグループ…
みなそれぞれに
自らの目的に向かって、
話しながらはしゃぎながらわたしの前を通り過ぎ、
すれちがい、追い越していく。
ここからは届きそうもない天井から
無機質に蛍光灯の白い光が
過剰なまでに容赦なく降り注ぐ。
それはまるで
神経質で潔癖な
無言のメッセージを発しているかのようにさえ思えた。
"殺菌せよ"、と。
ここは、
一体どこなんだ?
わたしのあの居心地のよい
ひとりきりの孤独感と自由を味わわせてくれる
住み慣れた小さな部屋は、
どこへ消えたのであろうか?
―どこにも行っちゃいないさ。
心の中でつぶやく。
渇きと疲労を
どうしても降ろすことのできないリュックサックのように身につけたまま
私はふらふらとその砂漠をただよい続けた。
ふと、
顔を上げる。
そのシルエットが視界に入った瞬間、
私は心が不思議と安らぎで満たされていくのがわかった。
それ、いや、彼が
手を差しのべ微笑んでいる。
気がつくと私は甘い匂いのするほうへと駆け出していた。
不思議と体が軽い。
そして
そこへたどり着くとこう言った、
「ポンデリングひとつ、
テイクアウトで」
その声は
自分でも意外な程に透き通り、
明るい響きをたたえ
砂漠の空気を潤わせたのだった。
彼は今日も、
乾いた旅人達に微笑みかけるのである。
砂漠の真ん中で、
それはあたかもオアシスのように。
-END-
※この話はフィクションです。
作者は決してミスドの回し者ではございません。
